「106万円の壁」改正をめぐる混乱 シンガポールの扶養はシンプル
国民民主党が手取りを増やす税金の「103万円の壁」の引き上げを提案している中、社会保険の「106万円の壁」の見直しが報じられています。
見直しで要件が緩和されることになれば、週20時間以上働いていると原則として社会保険料を支払う必要が出てきて、パートの手取りが減る懸念があります。
そんな中、パートの社会保険料を企業が肩代わりする案が出ており、識者の間やXでは賛否両論となっています。
社会保険料の支払いは労使折半ですが、本来は従業員の報酬と捉えることができます。また、その原資は企業の儲けからで全従業員で等しく配分されるほうが公平です。自己負担分の一部をパートの分だけ企業側が肩代わりすることになれば、小さな金額とはいえ不公平感が出るのではないでしょうか。
専業主婦世帯と共働き世帯の割合の変化を見ると、共働き世帯は2000年ごろに50%を超えたのち、最新の調査結果である2021年時点では、共働き世帯は68.8%を占めるに至っています。
より高収入の雇用を創出する取り組みや女性活躍の更なる推進を促した方がよいとも感じます。
小さな子供を抱える世帯を配慮するのであれば、2010年度の税制改正により、廃止となった年少扶養控除を復活させるなど別の形で子育て世代を支援する方法もありそうです。
さて、私が住んでいるシンガポールでは税金の控除がシンプルです。配偶者控除は配偶者が S$4000(約44万円)以下などの要件を満たしたら、S $2000控除を受けられます。子供の扶養控除)は子供が16歳以下(又はフルタイムの大学等で勉強している)で年間所得がS$4,000以下などの要件を満たせばS$4,000控除できます。社会保険料は日本と同じく労使折半ですが、自分で働いて支払わなければなりません。また、年齢により率が異なるものの、特定のカテゴリーを優遇するというのは原則ないです。壁が約44万円と圧倒的に低いのでそれを意識して働いている方を聞いたことがありません。超富裕層の配偶者などは主婦業プラスアルファの方もいますが、社会貢献をしていたり、不動産所得があるなどなんらかの収入がある方が多いように感じます。まさに国民全員が働く社会となっています。
シンガポールでは近年ひどいインフレでしたが税金の控除額は変わっていません。インフレになれば多くの国では政府は得をすることになりますが、大規模な制度変更などはせずに他で配慮をするという仕組みを採用しているのだと感じます。
日本では選挙があるので票を取りたいという思惑からも減税が議論されているのかもしれませんが、税制と社会保障と両方で大幅な改正ができるのか見守りたいと思います。とはいえ、3号年金を変える議論ができるようになったのは大きな変化だと感じます。