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イギリスの減税策、効果と副作用はいかに

7月8日に、英政府は41億ポンド(約5500億円)にのぼる減税策を発表した。飲食・宿泊・娯楽業界を対象に、7月15日から来年1月12日までの時限措置として、付加価値税率を現行20%から5%に引き下げる。また、同時に発表された「Eat Out to Help Out」プログラムは、8月に外食した際の代金の50%割引という措置である。

ロックダウンから徐々に経済再開モードに入るも、第二波懸念や景況感の悪化がセクターごとに顕著であることは避けられず、効果が判然としないながらも、ネガティブな影響が大きかったセクターに対して直接働きかける試みは、わが国にも参考になるかもしれず注目している。

さらに、気になるのは、CPIに与える影響はどうかという点である。

「Eat Out to Help Out」プログラムの表面上の数字は、8月に外食した際の代金の50%割引であるが、このプログラムの対象となるのは(外食する人が最も少ない)月曜日、火曜日、水曜日だけである。アルコール飲料も除外されるため、全体的な影響は50%よりも小さくなるはずだ。また、割引額は1人当たり最大10ポンドであることから、20ポンドを超える食事は実質的に50%よりも低い割引率となる。レストランがこの機会を利用して値上げする可能性もある。

英国国家統計局(ONS)の試算によると、このプログラムはCPIバスケットの約3.1%に影響を及ぼす。我々は、8月のCPIに対する全体的な影響は▲0.5%ポイント程度となると見ている。一方、宿泊や娯楽を対象とするVATの15%ポイント引き下げは、CPIバスケットの約12%に影響を及ぼすと推定される。一部の項目ではVATが免除されていることや、価格への転嫁が100%にならないとみられることを考慮すると、このVAT引き下げによって8月のインフレ率は1%ポイントほど下押しされると予想される。

デフレや財政負担増を押してでも、特定のセクターの破綻リスクを軽減し、経済再開の活路を見出すやり方は果たして効果があるのか。やるだけ無駄になるのか。国民に届きやすい面白い試みだけに、効果と副作用がどうなのか、見極めることが必要であろう。

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