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COP28に向けて気候変動対策が話題になる今、解決策をポジティブに語る情報にも注目。

第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)が11/30からアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで12月12日まで開かれます。「気候変動」ということばを日々のニュース報道の中で目にする機会が増える2週間が始まります。

歴史上最も暑いと言われている2023年の夏を経て、気候変動に関しては深刻で甚大な被害をもたらしつつあるという報道を目にする機会が最も多いと思われます。一方で最近強く感じるのは、具体的な解決策、成果、成功事例等の情報、そして具体的に一人ひとりが日常の中で実践するために参考になるような情報が相対的にもっと増えてもいいのでは、という点です。

深刻さをます「地球沸騰化」の今

もちろん、被害の深刻さに関する情報も、解決策に関する情報もどちらも重要なことは間違いはありません。今週はNHKのクローズアップ現代でも2夜連続でケニアからの生中継という力の入れようで、「地球沸騰化」の深刻な被害状況が伝わってきました前編は12/4、後編は12/5まで見逃し視聴が可能です。

ただ、気候変動により水不足になったり「気候難民」として住んでいた家からの移動を余儀なくされる等の話は、最近の戦争関連の報道も相まって、終末論的な感情を駆り立て、「ニュース忌避」という状況をもたらしていることも気になります。

深刻さがもたらすニュース忌避

先日公表されたロイタージャーナリズム研究所による調査結果によると、気候変動関連のニュースを避けると回答したのは、対象とした8カ国では平均して22%となってます(日本が10%と低いのは朗報ですね)。

ロイタージャーナリズム研究所

実はある気候変動に関しての朗報

一方で、以下のウォール・ストリート・ジャーナルの記事では太陽光、風力発電、EVの浸透状況と予測が20年前にくらべて飛躍的に改善している点をグラフで示していて、とても希望が感じられます。

11/27 ウォール・ストリート・ジャーナル

気候に関する朗報〜自然エネルギーのコストは急落し、成長は予想を上回っている[11/27 ウォール・ストリート・ジャーナル]

COP28を楽観的に見守る理由

気候変動に関する識者として最近注目している人物として、データサイエンティストでオックスフォード大学上級研究員のハンナ・リッチー氏という方がいます。以下のWiredの記事では同じく、COP28に対して希望を持って見つめるべき、と論じています。

2015年当時、太陽光発電や風力発電は、エネルギー技術のなかでも特に費用のかかる手段だった。また電気自動車(EV)は、高額なうえに航続距離が短く、車種の選択の幅も限られていたため、市場への関心も薄かった。

(今では)低炭素技術は最も安価なエネルギー技術となり、太陽発電と風力発電のコストは15年以降、それぞれ90%と70%も下がっている。耐用年数全体で見ると、EVにかかる経費はいまやガソリン車やディーゼル車より低く、近いうちに購入価格も顕著に値下がりするはずだ

状況は依然として厳しいが、10年前に比べれば人類は明るい方の道を歩いている。別の見方をすると、すべては前に進んでおり、あとはスピードを上げるだけでいいのだ。

Wired日本版

リッチー氏は来年の1月には『Not the End of the World: How We Can Be the First Generation to Build a Sustainable Planet(世界の終わりではない:持続可能な地球を築く最初の世代になる方法)』という書籍を出版されるとのことです。ぜひ読んでみたい1冊です。

国内でも広がりつつある解決策としての気候テックへの注目

海外においては過去3〜4年程Climate Tech(クライメートテック)という言葉とともに、年間何兆円ものベンチャーキャピタルからの投資が気候変動対策を目指すテック系スタートアップに投じられ、活況を呈しています。国内でも少しずつ目にする機会が増えつつありますが、昨日開催されたGX実行会議において議論された資料の中にはCOP28に向けて日本からも10社のClimate Tech企業が出展することが記載されてます。テクノロジーを活用したイノベーションをもたらす存在としての「気候テック」の存在が高まっていることが感じられます。

GX実行会議資料より

「わたしたちができること」の視点

先程ご紹介したNHKのクローズアップ現代の気候変動関連の番組に関連し、以下の「わたしたちができる5つのこと」という記事も公開されてます。東京大学未来ビジョン研究センター教授で、国立環境研究所の上級主席研究員である江守正多さんからのアドバイスとして以下の5点が挙げられてます。

  1. 正しい情報を集める 

  2. 声をあげると世界が変わる

  3. 生活を見直す

  4. 見せかけの「環境配慮」に注意

  5. 地域の気候変動対策に参加する

悲観から楽観へ

気候変動に対するの考え方について、2020年に実施し、2023年8月末にリリースされた国際比較調査の結果が紹介されてます。気になったのは、『私だけが環境のために何かをしても、他の人も同じことをしなければ無意味だと思う』という問いに対し、日本は61%と各国の中で4番目に高く、さらに20代以下に限ってみると、日本では73%と1番多くなっていることです

悲観からはなかなか創造的なことを生み出すのは難しいのでは、と常々思います。楽観的な部分にも目を向けることの重要性を改めて感じます。

まもなくCOP28がスタート!日本人は気候変動についてどう思ってる? ~ISSP国際比較調査「環境」から~【研究員の視点】 [11/22 NHK放送文化研究所]

NHK放送文化研究所

以上、ここ数日のCOP報道を目にする中で思ったことを綴ってきました。過去1年半ほど気候変動関連のニュースキュレーションをしてきた中で、感覚的にはやはり気候変動の被害や実態を伝える報道はボリュームとしては大きく、解決策に関する情報は相対的に低い、と感じます。今後は意識的にポジティブで実践的な解決志向の情報により注目してみたい、と思いを新たにしました。


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▶2021年夏以降気候変動・脱炭素・クライメートテックについてCOMEMO記事として公開した記事のリスト


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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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