台湾のアーティストたちをフォローしていると、彼らがファッション業界でも大いに活躍していることがすぐにわかる。ブランドのPRイベントやエディトリアルのフォトシュートにアーティストが登場するのは日本でもよくあることだが、いわゆるアイドル的なポップスターでけではなく、インディー色の強いR&Bアーティストたちが大々的に起用されているのが特徴的だ。

また、VOGUE Taiwanの表紙は毎回英語圏のファッション界隈Twitterで話題になるほど、オリジナリティとクオリティが高いことで最近注目されている。楽曲のMVやアーティスト写真にも共通する、ノスタルジックな色味や質感が「台湾らしさ」を醸し出している。

特にSNSで話題になったのは、今年の1月号のVogue Taiwanのこのフォトシュートだ。

「VOGUE TAIWANは、その価値に見合った評価を得ているとは言えない。毎月のように、この雑誌はほとんど注目されることはなく、本当に注目するようになってから6年が経った。2020年のリニューアル以来、Leslie Sunは雑誌を新たな高みへと押し上げ、2022年の最初の作品はサステナビリティの重要性を強調し、目を見張るようなものばかりだった。Peng ChangはZhong Linによって2つの表紙を撮影され、表紙1（下）では台湾全土の汚染された水でできたアイスキャンディーを手にしている。カバー2では、濁った水のプールの中でポーズをとっている」

日本のアーティストとのコラボもしていることで知られる人気アーティストのJulia Wuは、特に頻繁にファッションブランドとのコラボレーションを行っている。

9m88とのコラボレーション楽曲"Strange Weather"で一躍注目されたシンガーのYellowはその特徴的なルックスをクールに捉えたファッション企画に数多く参加している。こちらはH&M TaiwanとGQ Taiwanのフォトシュート。台湾の街並みやカジュアルなセッティングでもファッショナブルに映し出すカラーリングやポージングがかっこいい。

スターの座を得つつある若干25歳のOZIは、アメリカ本場のトラップソウル的R&Bを得意としているアーティスト。9m88とのコラボ曲「B.O.」の大ヒットを経て、一貫してクオリティの高い楽曲・アルバムをリリースしている。この9m88とのELLE Taiwanのフォトシュートをはじめに、ハイファッションのイベントにも多く招待されている。

世界的な知名度を誇っている台湾のシンガーといえば9m88だ。ジャジーな歌声・サウンドとレトロなビジュアルをうまく捉えた被写体作品も多く、台湾のファッションメディアに多くモデルとして起用されている。

OZI所属レーベルForbidden Paradiseが輩出する２人目のアーティストとして注目されている新人R&Bシンガー、The Craneは王道のネオソウルが得意。彼もVOGUE Taiwanなどに起用されているが、その高身長と知的なルックスはファッションシュートでも映える。

今月に来日公演が決まっている持修(Chih Siou）は、台湾が今最も世界に送り出したい若手シンガーの一人。アンドロジナスなルックスと声がポイントで、アーティスティックなVOGUEの作品にも起用されている。

台湾のエンタメ業界の興味深いところは、やはり様々な分野の人たち（裏方も含め）が強い「仲間意識」があることだ。「裏方」と思われがちなプロデューサーも、音楽の担い手として注目されるような環境が作られていることが、最近の台湾の若手の間での変化だとも思える。横のつながりを大切にし、個性に合わせてスポットライトの当て方を変えたり、作品全体に肩の力抜いていることもよく伝わる。