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3つのキーワードを意識してアイディアを磨く

お知らせ

この度、日経COMEMOに寄稿させていただけることになりました。気になった日経の記事をきっかけにさせてもらい、僕が日本とアメリカで体験してきた中での気づきを、これまで同様、記事にしていきたいと思います。これからもよろしくお願いします。

3つのキーワードを意識してアイディアを磨く

最近、自分のプロジェクトでアイディアを磨く時、3つのこのご時世のキーワードを意識するようになった。

AI

AIがどんどん仕事に侵入してきている。

僕の脳みそには、自分の専門分野であっても正確に十分な知識・経験を記憶保存できる収納能力はない。だが、専門分野であれば、その都度、知恵を絞り必要な情報をピンポイントで探し、そこから自分のアイディアを作り、磨くことはできる。だから、専門分野以外の人より、早く的確なアイディアを提供できる。それが専門分野の聖域だ。それで専門領域の専門家(Subject Matter Expert, SME)が成り立った。ところが、AIが仕事にも浸透し、状況が変わった。上手く的確に質問していけば、AIは膨大な情報から必要な情報をピンポイントで見つけて似非(エセ)専門家のような回答やアイディアを提供できてしまう。聖域が侵されるようになった。

これは諸刃の剣だ。AIを駆使すれば、別の専門分野の聖域が侵せる。これまでは、自分の専門分野以外で疑問やアイディアが浮かんでも、その道の専門家に立ち向かうことは困難だった。「~の可能性を探ることで、この問題解決できると思うのですが、どうでしょうか?」と専門家に相談する。専門家から「それはこの分野の常識では難しい。無理だ」と蹴散らされれば、「そうですか」と引き下がるしかなかった。ところが、十分な背景知識のない専門外の領域でもAIが重要な情報を効率よく集めてくれる。簡単には引き下がらなくてよくなった。自分の専門以外でもある程度情報を固めて専門家にチャレンジできるようになった。

裏を返せば、これは自分にも降りかかる。自分の専門領域で、AIでも出せるような浅はかな情報やアイディアしか出せなかったら、たちまち化けの皮を剝がされる。AIを自分でも駆使しながら、専門分野以外の人がAIだけでは辿り着けない一ひねりも二ひねりも加えたアイディア磨きが必要だ。そうした行動はAIをさらに賢くする。いたちごっこで、アイディア磨きが加速する。これをキツイと捉えるか、ワクワクする相乗効果だと捉えるかは、自分次第。それによってAIとの仕事は楽しいものにも、苦痛でシンドイものにもなる。

多様性

ひとりで出すアイディアには限界がある。自分とはかけ離れたぶっ飛んだ奴の考えを加えるとアイディアが次元上昇することがある。

プロジェクトに貢献する仕事力をとても乱暴に3つに分けると、創造力、分析力、行動力となる。

  • 創造力:真に斬新なアイデアを出す力

  • 分析力(批判力):アイディアが良いか悪いか分析する力。よいアイディアを現実味のあるものに磨き上げる力。悪いアイディアを実動前に粉砕する力

  • 行動力:実際の行動に起こす力

これまでの経験・実績から、自分にはどの力が最も強く備わっているかを考える。創造力に長けた人間、斬新なアイディアが泉のように湧き出る天才(あるいは変体)には憧れる。けれども、残念ながら自分はそれとは程遠い。行動力にあふれた活力のある人間にも憧れる。こちらも内向的で小心者の自分からは程遠い。どうやらひねくれ者で批判的な自分は、分析力が自分の一番の強みのようだ。次に周りを見渡す。自分とは違う強みを持つ奴の強い力を有効利用しようと意識する。

日本人は僕のように分析力(批判力)が強い人がめっぽう多い。そんな分析力の強い人だけで群れるとろくなことがない。互いに相手の足りないところ、手を抜いたところだけが気になる。それらが許せず、完璧性を追求する。本来の生産性のある仕事より、互いの仕事・役割を監視するようなガチガチなルール・プロセスばかりが仕事の大部分を占めるようになる。肝心の創造力や行動力がそっちのけになる。

意識して別の力を持つ奴に近づく。もともとプロジェクト内にそんなぶっ飛んだ奴がいればラッキーだ。いなかったら、どこかから引っ張ってきてもいいかもしれない。ラッキーなことにアメリカで働いていると自分とは別の力に長けたぶっ飛んだ奴はいっぱいいる。そしてそんな奴らから見ると、平凡で目立たない存在だと思う自分自身がぶっ飛んだ存在と扱われる。自分がぶっ飛んだ存在に扱われると、躊躇なくアイディアを出したり、行動を起こせるようになる。自分は弱いと思っていた創造力や行動力も高まる。あるいは、高まったように錯覚するから面白い。

ギバー

プロジェクトで問題が発生した時には、積極的にギバーになる。周りから見ると敢えて「いけにえ」になったように見える。ところが、これを体験してしまうと、あまりにもリスクのない、美味しいとこだらけの「いけにえ」だと気づく。

例えば5つの部門が関わるべき問題が発生したとする。リーダーはまだ決まっていない。自分は5つの部門の1つに過ぎない。それでも、5部門が関わる問題解決策のアイディアを先陣を切って作り、シェアする。抱え込まなくていい仕事まで抱え込む愚かな「いけにえ」に映る。しっかり他部門と調整する前だから、出すアイディアも不完全極まりない。アイディアは3つとか、4つのオプションとして複数出す。一応、その中のひとつのオプションが自分の押すアイディアだと無責任に示す。自分の押さないオプションの中には劇薬も入れておく。例えば「問題解決は諦め、プロジェクトを中止する」のような、極端で過激な選択オプションだ。あえて波風を立て、他の部門のメンバーを刺激し、本気にさせ、自分では思いつかないぶっ飛んだアイディアをいただくためだ。やり方によっては、回りのメンバーから集中砲火を受け、本当に「いけにえ」のように映るかもしれない。でも、ここは猛獣のいるサバンナではない。自分の意見だけを全て通し、対立意見はすべて論破しなければならない。とするか? 周りのアイディアを頂戴しながら、チーム全体で最上のアイディアを作り上げていく。自分が最初に押したオプションが選ばれるかどうかなんてどうでもいい。チームで最上のアイディアに行きつければそれでよし!とするか? どう捉えるかで、「いけにえ」のストレスレベルは大きく変わる。

このギバー役に最も適しているは、創造力に富んだ天才でも、行動力にあふれた血気盛んな奴でもない。分析力に強みがある奴だからうまくできる。やっかいなのは、分析力に強みがある人間は、僕のように内向的で小心者が多い。先陣を切って「いけにえ」になるのを躊躇しがちだ。前もって、理解しておくことが大事だ。ここは原始時代の猛獣がいるサバンナではない! 「いけにえ」役になってもライオンに食べられる可能性はゼロだ。それどころか「いけにえ」になることで、回りからアイディアが自然と集まる極上の報酬があるのみだ。

凸凹な自分を取り戻せ

下のリンクの日経記事の「凸凹な自分を取り戻せ」が目に留まった。結局のところ上記に挙げた僕のアイディア磨きもそうだ。自分の凸を活かして、あえて波風を立てる。回りの同士を刺激し、自分の凹を埋めてもらう。それを繰り返していると自分の凹の部分にも新しい凸が芽生えてくる。

日本人は均一で個性に乏しいように自分自身で考えがちだ。が、全然そんなことはない。みんな本当は凸凹だ。同調圧力が強くて社会や職場が凸凹を抑え込んでいるだけだ。そんな日本でも、多様性が重視され、凸凹が歓迎され始めた。人生の後半戦にそんな激動の時代を経験できるのは、本当にラッキーだ。



#COMEMO #アイディアの磨き方

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