バイアスの排除には、物差しの見直しが欠かせない
日経によると、日経225銘柄のうち女性管理職の比率が高い企業はリクルートの50%。その取り組みで特に目立つのは、22年より管理職候補者の選考基準を「管理職要件」として明文化したことだ。従来は「過去の管理職と同じ働き方ができるかが選考基準になりがちだった」と人事統括部長は述べている。
この転換は、とても重要だと思う。女性管理職が少ないことの一因として、よく指摘されるのは「候補となりそうな女性が乗り気ではない」という女性の消極性だ。その背後には、「女性固有の自信の無さ」があり、したがって彼女たちの「背中を押す」ことが大切だと続く。これをまったく否定するものではないが、そもそも「管理職」そのものが女性にとって魅力的でないことが、より深く顧みられるべき事情ではないか?根幹を直さなければ、たとえ背中を押しても嫌がるだけだろう。
「管理職」に魅力が感じられない理由は何か?責任が増える一方、滅私奉公のような長時間労働が期待されることが大きな要因ではないか?今までの管理職はそのような働き方ができる(主に)男性に限られていた。したがって、管理職の働き方を抜本的に変えない限り、管理職になるイコール長時間労働、そこまでしたくない・・・と続いてしまう。
しかし、そもそも管理職の要件は長時間労働なのだろうか?その「暗黙知」を、リクルートは疑っている。部署ごとに「計画策定・推進」などと管理職に求められる能力を明確化した結果、女性の管理職候補が一気に増えたということだ。求められるのは今まで通りの働き方ではなく、結果を出すための能力だというメッセージが伝わり、女性管理職比率が50%まで高まったものと考えられる。
組織にとって、これは大きな転換点だ。新しい基準により、能力勝負で昇進する管理職が増える結果、時間管理の悪い働き方は是正されるだろう。男性にとっても新しい管理職像が示され、全体としてよりチームが働きやすい環境が期待できる。
長い間組織で培った暗黙知には、優れたものもあれば、そうでないものもある。ただし、例えば、相撲の土俵に女性は登れないというように、伝統に裏打ちされているがため、真っ向から疑うことはなかなか難しい。「管理職」の在り方そのものを問い直すことは、そのような直球だ。しかし、この挑戦なしに、バイアスを排除することはできない。今までの思い込みを一度壊し、新しい価値観を作り直すことが必要とされている。