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“人的資源”と捉えるか“人的資本”と捉えるかは大きく異なる(人材版伊藤レポート②:変革の方向性)

こんにちは。弁護士の堀田陽平です。

台風が過ぎ、穏やかな天気ですね。
台風が来ると改めてテレワークのメリットを感じます。

さて、以下の記事にもあるように、最近では人材を「人的資本」と表現されることが多く見られます。

今回は、この点に関連して、人材版伊藤レポートの解説第2弾として、「変革の方向性」について書いていきます。

(前回記事はこちら)

変革の方向性

人材版伊藤レポートでは、我が国企業を取り巻く環境の変化に対応すべく、「変革の方向性」として、①人材マネジメントの目的、②アクション、③イニシアチブ、④ベクトル・方向性、⑤個と組織の関係性、⑥雇用コミュニティに関する方向性を示しています。

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今回は、①人材マネジメントの目的、③イニシアチブ、⑤個と組織の関係性について取り上げます。

「人的資源」から「人的資本」へ

さて、まず人材マネジメントの目的ですが、ここは全体に通底する重要なポイントです。
これまで、企業のなかで「人材」は、「人的資源(Human Resource)」と捉えられ、これに対する金銭的拠出はコストとして捉えられてきました。

他方で、人材版伊藤レポートでは、「人材」を「人的資本(Human Capital)」として捉えるべきであるとしています。

これは、一文字だけの違いですが、大きな違いと捉えています。
すなわち、「資源」というものは、「既に持っているもので消費されていくもの」ということが含意されています。他方で、「資本」は、「価値を生み出すもの」ということが含意されることになります。
したがって、人材に投じる金銭的拠出もコストではなく「投資」という意味が出てくることとなり、価値創造に資するものとなります。

経営陣・取締役会がイニシアチブを

次に、人材戦略の策定・実行は、経営陣・取締役会がイニシアチブを持つべきであるとしています。
この点は、「経営課題と人材課題が一体となってきている」という人材版伊藤レポートの問題意識から導かれます。
具体的には、CEO、CSO、CHRO、CFO、CDOといった経営陣が密接に連携する必要があり、特に単なる「人事部長」ではなく、経営の視点を持つCHROが重要な役割を果たすことが期待されます。
ただ、現状、日本においては、CHROを設置している企業は少ないとされており、経営の目線から人材について検討できる人材が必要となってきます。

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また、こうした経営陣を選任・モニタリングする取締役会も重要な役割を果たすことが期待されます。
具体的に期待される役割については、別途書く予定です。

過度な依存関係でなく自律的な関係を

そして、個人と組織との関係性は、過度な依存関係ではなく、自律的な関係性を目指すべきであるとしています。
この点は、社会的には最も重要かつ困難な変革であるのではないかと私は思っています。
以前別の記事でも書きましたが、アジア諸国の中で、日本は「現在の勤務先で継続して働きたいと考える者」の割合が少なく、じゃあ転職や起業をするかというと、転職、企業意向ももっとも低い状況です。

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つまり、「この会社にいたいわけではないけれども他に行きたいわけでもないからいる」といる状況です。
ギャラップ社の調査によれば、日本は「従業員エンゲージメント」が最も低い結果が出ています。この調査でより衝撃的であるのは、「Actively disengaged」の割合も最も高いということでしょう。

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人的資本への投資で企業価値の向上を

人材版伊藤レポートが示す変革の方向性は概要上記のとおりです。
今回の最後に、日本企業の人材投資について見てみます。

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欧米諸国と比べると、日本の人材投資は相当低い状況にあります。これは日本がOJT中心であることも一因ではあるとは思われますが、もともと低いところがさらに低下しているということは事実であり問題でしょう。

今後は人材を「人的資本」と捉え、積極的な投資を行うことで、企業価値の向上を図っていくことが望まれます。

今後もまた人材版伊藤レポートの解説を書いていきます。


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