理想の家族について考えたら「我が家の3つのPrinciples」が生まれた話
Potage代表取締役 コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。いよいよ来月には最初の子供が生まれ、父親になる予定です。
そんな折、日経COMEMOから「理想の家族」というお題が出て、コミュニティの歴史と絡めて先日記事を書きました。おかげさまでたくさんの方に読んでいただきありがとうございます。
「それぞれの価値観を認める」ということは「それぞれの理想を尊重する」ということと同義です。いささか逆説的ですが「絶対的な理想の姿は存在しない」という前提に立つことが、それぞれが「理想の家族」「理想の自他の関係性」を築いていく唯一の方法と言えるのではないでしょうか。
……というようなことを書いたのですが、そういえば、昨年12月に結婚して誕生した「我が家」は夫婦それぞれの価値観をしっかり確認しているだろうか?という気づきがありました。
ふむ、それなら「理想の家族」に近づくために、私たちが理想とする価値観を言語化してしまおう。というわけで、今回は河原家のPrinciple(原理原則・行動指針)をつくりました、というお話です。
というわけでPrinciplesが出来ました
話をスピーディに進めるために結論から申し上げますと、このような「3つのPrinciples」が完成しました。
Principlesはベンチャー企業や外資系企業が、企業カルチャーの言語化のために策定することが多いです。私は企業の組織づくり、コミュニティづくりのサポートをするために、ビジョンや行動指針の言語化と浸透施策のお手伝いをすることがあるのですが、そのアウトプットに近いものになります。
奥さんと話をしていると、スタートアップでPM(プロジェクトマネジメント)をしている彼女も、プロジェクトの立ち上げの際にチームビルディングの一環で「プロジェクトが大事にすること」を言語化していたということで、やりだしたらスムーズに「Principles」が出来上がりました。
こういう企業コンサルのようなプロセスを一緒になってプライベートで楽しめること自体が価値観のあう夫婦だなと自画自賛なのですが(笑)まずはどんな価値観なのかを紹介し、つくる過程や注意した点をお伝えしていきます。みなさんの家庭の参考になれば幸いです。
まずはPrinciplesの解説です。平易な日本語でつくったので細かく解説しなくても……という気もしますが、空気感を知っていただくためにごらんいただけると幸いです。
※ちなみにソニーは「感動」というビジョンをクローズアップしたことで復活したと書いた記事があります。平たく言うと、ソニーにおける「感動」のようなメンバーが共感できるキーワードを、家庭でも探してみましょうというお話です。
Principle① ごきげん・仲良し
私たち家族は、いつもご機嫌に生きること、そして仲良くいることを大事にしていきます。とはいえ、表面上ご機嫌でいるために内側に不機嫌をため込むのは逆効果。お互いがお互いにご機嫌な状態でいるために、時に話し合いや不満の開示も大事にします。その積み重ねが持続的な「仲良し」状態につながっていくのです。
Principle② むりなく健康
むりなく健康的な生活を目指します。基本となるのは、食、睡眠、運動。食は健康的な食事を3食美味しく食べます。ジム通いや散歩を通じて運動時間を確保し、睡眠時間をしっかり確保します。仕事が忙しいときに、たまの夜更かしはOKですが、連日の徹夜などはご法度です。疲れがたまったら、整体で調整も欠かさないようにします。
健康的な生活のために、育児や仕事で無理をしすぎないことも大事です。完璧を目指すのではなく「むりがなく持続的な状態」を目指します。予定を入れるときは「無理がないか?」と常に問いかけるのも大事ですね。
Principle③ ちがいをたのしむ
みんなもともと特別なオンリーワン、育ってきた環境が違うから価値観のちがいは否めません。私たちは家族含む周りの人たちとの「ちがい」を個性ととらえ、それを楽しんで暮らしていきます。それらの人たちと一緒に価値をつくることにも取り組み、周りの人たちもよりちがいが楽しめるように、心がけていきます。
そもそもなんでPrincipleをつくったのか
なぜPrinciplesをつくることになったのか? 話は半月前の5月中旬にさかのぼります。我が家はまもなく臨月に入る奥さんが4月から産休に入り、家事や出産準備にあてる時間がどんどん増えてきました。一方、私は部分的に家事を手伝ってはいるものの、相変わらず仕事に邁進しており、そんな状況に奥さんの中で格差意識が芽生えてきたのです。
「もやもやしている」という打ち明けから、夫婦の話し合いがスタートしました。(我が家では、夫婦のどちらかが「もやもやしている」と宣言すると、頭を冷やした後に解決のための話し合いが始まります)
ただ、ファシリテーションとPMのお互いのプロ目線でみたときに、個別具体の対策をいきなり考えるのは感情論の応酬になりがちなので得策ではありません。まずは「5年後どうありたいかの理想を共有しよう」というところから話し合いをすることにしました。
というわけでPrincipleをつくってみよう
まずは8つの理想を書き出すワークを実施。2人が共有したのはこんな理想の5年後のありかたでした。
あずの理想の5年後
・夫婦が今より仲良しになっている
・自宅以外の居場所(拠点)を持っている
・子供にいろんな人たちやいろんな世界をみせている
・やりたい仕事にフォーカスできている
・お金について不安がない状態
・奥さんが自分のキャリアの軸を突き進んでいる
・地域との関係づくりができている
・今よりも公私の境目がなくなっている
奥さんの理想の5年後
・海外移住を選択できる状態でいる
・多拠点生活でも別居はしていない
・お互いにごきげんでいる
・友達を大切にする 頼り頼られる関係づくり
・稼ぎと労働時間のバランスがとれている
・多様性があり、かつ自然にも触れられる
・よく寝てよく食べてよく運動してみんな健康
・荷物少なく
このお互いの描いた8つの理想を1枚の紙にマッピングしていきます。こちらが原本です。
その中で「これが抜けたら私たち夫婦ではない」というコア・バリュー要素に線を引きました。悩んだ結果、ハイライトされたのが「ごきげん 仲良し」「健康」そして「多様性」の3つでした。
これを明文化したら、自分たちの価値観が言語化できそうだ。ということで、オレンジのペンで右に書いたのが「3つのPrinciple」の原型です。最初は外資系企業やスタートアップっぽく英語にしてみましたが「なんとなくカッコつける感じが僕ららしくない」となり、一家の行動原理なのだから、これから生まれてくる子どもにも理解できるようにと、平易な日本語に書き換えました。
「ごきげん・仲良し」はほぼそのまま決定。「健康第一」は「第一」を削り「むりなく」をくっつけました。健康のためにいろんなものを犠牲にする生活はしたくないからです。(特にうちは食に対する思い入れが強いので、食事制限は避けたいことの1つ。「むりなく」と足せば、「健康のために美味しいものを食べるのを制限する」という行動をなくせます)
「多様性を大事に」の言語化には少し悩みました。まずは「みんなちがってみんないい」とあてはめてみたのですが「ちがいを"認める"というのとはちょっと違うよね」という話に。
奥さんは子供の頃に韓国や香港に住み、転勤族だったこともあり、さまざまな地域により個性が違うことをよく知っています。多様性を求めて静岡から東京に30歳を超えてから移住してきた背景もありました。
私は私で、2013年から3年間、世界で最も多様性あふれる街のひとつ・サンフランシスコに住んでいた経験が大きな原体験として存在しています。2人でさまざまな議論をする中で「多様性」というキーワードがハイライトされることはとても多く、むしろ、多様性がある状態を喜ぶ気持ちがその根底にあるのではないか、と2人の中で言語化されていきました。
結果生まれたのが「ちがいをたのしむ」という言葉でした。いろんな人と出会い、ちがう価値観に触れ、一緒にやりとりするのが「楽しみ」だというのが、2人の共通する感覚なのです。「楽しむ」というワードが見つかったときの「これだ!」という腹落ち感は10年後も忘れない気がしています。
Principleをつくった結果、夫婦の話し合いがスムーズに
一度言語化すると、その後の話合いがスムーズでした。「この3つの行動指針に照らして、今の意見はどうなのか」という尺度が生まれ、感情論に行きすぎず、現実的な最適解を2人で前向きに探れるからです。
その結果、我が家では緊急事態宣言が発令されました。なんだそれは?と思う方もいるかもしれませんが、2人の合意の上で「いったん期間限定の緊急対応として」今の仕事にひと段落がつくまで、私は家事を奥さんに任せ仕事に専念し、奥さんは家事と出産準備に専念するという結論を導き出したのです。
たいていの「もやもや」の原因は「すれ違い」です。私自身は、6月中旬の出産に備えて、今たまっている仕事を一区切りさせたくて、仕事にかける度合いが増していました。6月以降の夏の仕事は出産に備えて減らしていて、年間契約案件を除いては秋までは「半育休期間」としてあてられるので、できるだけやり残しがない状態をつくりたかったのです。もちろん、家計をしっかりさせないとならないという責任感も根底にはあります。その上で、1日1~2食ご飯を準備していて時間がとられていて、仕事と家事のバランスに悩み、ストレスがたまる状態でした。(けど奥さんのご機嫌うかがいもあり、なかなか言い出せないわけです)
一方、私が仕事に集中している分、産休に入り、日々出産・育児情報の収集に励む奥さんとの間の差がどんどん開きだし、「主体的に臨んでいないのでは?」という奥さんの不満につながっていることが確認できました。結局、お互いに良かれと思ってやっていることが、すれ違いの原因だったりするわけです。(しかもお互い相手に気を使ってなかなか言い出せないんですよね……)
結果として、仕事のひと段落がつくまでは、私は仕事に専念し、奥さんは家事と出産準備に専念するという結論を夫婦で出しました。家事にも育児にも夫婦で参画するのが理想だと考えている2人ですが、今は緊急事態です。その準備をお互いのストレスなく創り出すためにも、今はイレギュラーな体制として、明確な役割分担をし、余力があるときや、奥さんが手伝ってもらいたい際には個別に依頼してもらい対応することとしました。
この話し合いが成立したのも、おたがいが「むりなく」「ごきげんに」「仲良く」価値観の「ちがう」2人が暮らしていくために、どんな判断がベストなのかを、極力感情論にならないように議論できたからです。まさしく「理想の姿」を言語化できたからこそ、生まれた決断でした。
今後も、数えきれないたくさんの話合いの機会が、奥さんや子供との間に生まれるでしょう。また、家族とかかわる人たちも増えて、その人たちと話し合いをすることも増えるでしょう。このPrincipleは、その際の指針になります。私たち家族は、この指針にそった行動をしているだろうか。そうそれぞれに問いかけながら、それぞれの理想の家族とのかかわり方づくりができるのではないかと考えています。
「価値観の言語化」がコミュニティには重要だ
拙著「コミュニティづくりの教科書」にも書いた通り、コミュニティにおいては「文化づくり」が大事です。その入り口となるのが「価値観やビジョンを言語化すること」です。
これは外のコミュニティのみならず、家族においても有効だと考えています。家族は最小単位のコミュニティであり「血がつながったり、つながっていなかったりする他人が時間・空間を共にする場」です。しっかりと文化形成していくことで、夫婦の関係構築や、子供の育児、教育、周りの人たちとの付き合いにも、プラスの影響があるのではと考えています。
子どもにも日々「ごきげんだった?」「友達と仲良くできてる?」「友達とのちがいをたのしめてる?」「むりしていない?」という問いかけをしながら、Principleの浸透をはかっていくとともに、子どもが大きくなってきたら、一緒に話し合いながら、改訂していこうとも考えています。それこそ「子どもとのちがいをたのしむ」ありようですよね。
また、私たちの家族にかかわってくださるみなさんにも共有し「こういう価値観を私たちは大事にしているんです」と伝えることで、それに共感する人たちとのお付き合いを深めることが可能になります。先ほど共有した記事にも書いた通り、家族が世帯で閉じる時代は終わったと考えています。一緒に疑似家族を形成する仲間も、家族と同じく大事です。そんな人たちとの価値観を交換が、お互いに支え合う関係性構築の手掛かりになることを期待しています。
みなさまの家でも「自分たちの理想の価値観ってなんだろう?」と話す機会をつくって言語化してみると、いい影響があるかもしれません。暗黙で共有されていたとしても、その議論の過程でさまざまな気づきが生まれますし、「これが自分たちだ!」という言葉が見つかると、本当に気持ちいいですよ。
家族づくりの経験をビジネスにも生かしたい
さて、本文でもちょこっと書きましたが、6月中旬に第一子が生まれたら、月額契約している案件を除いては、7月いっぱいまで新規案件の受付を停止し、お休みに入ろうと考えています。「半育休」期間です。
2021年1月に起業した走り出しの経営者が仕事を休むなど、やっていいのだろうか?という葛藤も正直あったのですが、ここで家族と向き合うことが、未来のビジネスにもプラスの影響がある「自己投資」の期間だと考え、このような決断に至りました。
私の仕事はコミュニティづくりですし、繰り返しですが、家族はコミュニティの最小単位です。「理想の家族づくり」の試行錯誤の経験はそのまま、ビジネスにも直結するはず。育児でうまくいったことも、失敗談もCOMEMOなどを通じて発信しながら、自身の知見を深めていこうと考えています。
この記事も「理想の家族」づくりに関するものでしたが、「理想のチームづくり」「理想のコミュニティづくり」にも応用できます。みなさんのPrinciple、試しに言語化してみてはいかがでしょうか。
※秋以降のお仕事のご相談はいつでも受付中です!
※今回の記事は日経COMEMOのお題「理想の家族」をテーマに執筆されました。なんと、こちらのお題2つ目の記事です。素敵な機会ありがとうございます。
#日経COMEMO #理想の家族