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評価される喜びより、カタチになる喜びを。

2019年6月3日、会社のラウンジスペースで少し実験的なワークショップイベント”βutterfly Foresight Creative Session”を開催した。

初回のマガジンでも書いたが、これまでの「いわゆるビジコン」に対するモヤモヤから生まれた形式のイベントだ。

イベントの中身は「新しいサービスを企画しよう」なので、ビジコンやハッカソンと同じだが、

・ 著名な審査員はいない
・ というか審査自体をしない
・ もちろん豪華な賞品もない
・ むしろ(社会人は)参加費がかかる


という内容だった。

こんなイベントが本当に成立するのか?

そんな不安の中スタートしたが、結果的にはこの満足度。

その要因には「2つの実験」の存在があった。
今日はそんな話。

■実験①「学生と社会人を混ぜる」

ワークショップの参加者は40名。社会人が大学生が約半数ずつ。
評価する側の社会人、評価される側の学生という構造ではなく、それぞれ4名ずつの約8名で1つのチームとした。

そんな学生・社会人混合チームで臨むテーマは「夫婦の愛」。
「次に来る夫婦の愛の形」を予測して、そこから商品・サービスを企画する。フォーマットはこんな感じ。

この未来予測パートで混合チームの強みが発揮される。未来予測には「未来の流れを読む」こと大切だ。それぞれの時代の価値観を持ち寄ることで、流れが見えやすくなる。
昔のことを知っているから偉いわけじゃない、今のことを知っているから偉いわけじゃない、それぞれが並列関係で未来を考えるこのパートは参加者からも好評だった。

逆に言えば普段、いかに異なる世代とフラットな議論ができていないかを物語っているようにも見えた。

■実験②「アイデアをその場で広告にする」

通常、ビジコンでは審査発表がクライマックスだ。著名審査員が参加者のアイデアを評価・講評することで参加者の満足度が向上する。

一方で「評価されることがゴール」になると「評価されるためのアイデア」しか出ないという弊害も生まれている。本来、アイデアとは評価されるために出すものだろうか。

そこで、このイベントではアイデアの評価はしないことにした。

そして審査員は呼ばない代わりに、広告デザイナーを呼んだ。目的は、アイデアをその場で広告にするためだ。
今回のイベントではグループは最終的に考えたアイデアが実現した時のことを想像して、手書きの「広告のラフ案」を提出する。するとプレゼン前の休憩時間中にデザイナーが1案につき約10分でデザインラフにしてくれる。

実際に完成したラフの1枚がこちら。

デザイナーにとっては相当酷な作業だったが、これが当たった。それぞれのアイデアが広告ラフになった瞬間には歓声が巻き起こったほどだ。

デザイン協力していただいたライデンさん、木伏 美加さん、素材提供のアマナさん、本当にありがとうございました

学生と社会人を混ぜること、アイデアをその場で広告にすること。
これら2つの実験が今回の満足度につながった。

■「評価されるより、カタチになる方が嬉しいですね」

この言葉は、参加者の学生から寄せられたものだ。

実際、そのアイデアの広告を出せるようになるまでには多くのステップがある。しかし、その時の様子が想像できただけでも「カタチにしたい」と思えた、それは今までのビジコンでは感じられなかった感覚だと言う。

この発言から今回、私たちのがこれまでのビジコンの何にモヤモヤしていたのかがわかった気がする。

キーワードは「ゴールイメージの責任と危険性」だ。

通常のビジコンは、審査員から評価される一部の参加者の姿をゴールイメージとして描く。これだと見栄えはいいが、実施フェーズの手前で満足してしまうし、多くの受賞者は優劣がついたことによる「悔しい」というネガティブな感情をモチベーションとして持ち帰ることになる。

一方、今回のイベントではすべてのアイデアが実際に広告になった姿をゴールイメージとして象徴的に描いた。ある意味での「見栄え」は保ったまま、実施フェーズまでを見据えたゴールイメージを描き、参加者同士に優劣をつけることなく全員に「実現してみたい」というポジティブな感情をモチベーションとして持ち帰ってもらうことができた。
(もちろん実際に実現するのはものすごく大変だが、、、)

パワポにしてみるとこんなイメージだ。

イベントの主催者としてゴールをどこに設定するか、喜びをどこに設定するかは、参加者の視座をコントロールすることにもつながる。それには責任と危険性が伴う。

これが今回、β版のイベントをつくってみたわかったことだ。
やはりβ版でも「まず、やってみる」経験から学べることは大きい。

次回は実際に出たアイデアについてご紹介しようと思う。

βutterflyとは電通若者研究部がプロデュースする学生団体の総称。蝶の羽ばたきのような力学的にはわずかな変化でも、その変化が無かった場合とは、その後の状態が大きく異なってくる「バタフライエフェクト」をモチーフにしている。

※ちなみにTOPの写真は「10分で広告をつくる」という偉業を成し遂げたライデンのデザイナー加藤さんです。

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