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「同格婚」時代の女性有業率と男性意識の変化


「M字カーブ」、形式上は、解消傾向

総務省「就業構造基本調査」2022(R4)版が発表され、「女性有業率が25〜39歳で初めて8割を超えた」「有業率が20代後半から30代にかけて落ち込む「M字カーブ」が改善」といった点が話題になっている。

この日経記事中のこのグラフが象徴的だ。日本女性が出産育児期にも仕事を離れないようになったということだ。

女性有業率、25〜39歳で初の8割超え 2022年 総務省の就業構造基本調査(日経7/21)

この「M字カーブ」は、欧米主要国では見られず、日本と韓国に特有な現象だった。今回、その変化が明白に進んでいることわかる。

男女共同参画白書 平成29年版(2017年6月)

「実質のM字カーブ」は依然大きいはず

この状況をただしく理解するためには、「非正規雇用の割合」も把握する必要がある。このデータは「男女共同参画白書」(内閣府男女共同参画局)が出している。

男女共同参画白書 2023

上の図の左が女性、右が男性。下側のピンクが正規雇用労働者、上のムラサキが非正規だ。労働力人口比率は男女で大きな差はないが、女性は25−29歳をピークに、年齢とともに正規雇用比率が低下してゆく。

これは、「一度正社員の座を離すとずっと非正規になりがち」という状況を表している。日本の雇用制度は正社員ポジションに対して極めて手厚く、その制度を維持するために、非正規が利用されてきた。この状況は、生涯年収で1−2億円の差になることは、『2億円と専業主婦』(橘 玲 2019)でも説明さrている。トータル収入から実質的に算出すれば、いまだに日本のM字カーブは大きいはずだ。

僕の日経ビジネス電子版連載「大人のトライアスロン」では、特殊事情で正社員を退職し、復帰しようとしたら超大変で、がんばって成長起動に乗せた40代女性:

結婚して辞めるつもりが、続けることになり、苦労しながら30代でP&G社マックスファクターのトップに昇進した50代女性:

の話などで、この一端が見える。

ちなみに僕の連載でこうした話を取り上げているのは、女性の社会進出が困難だなんだと叫んだところで、結局のところ事態を打開するのは個人の意志と行動であって、そのためには心身のエネルギーが必要であるからだ。それを作り出すのがトライアスロンだったり、なにかの趣味だったりするからだ。

若い男性の意識変化が早い

この状況は、今後、激しく変わってゆくだろう。

理由の1つは、日本の人手不足。本格化はこれから。大卒者の人数は今年あたりの卒業生から、毎年、急速に減ってゆく。企業側は一時離職した女性たちを、しっかり給料を払って、活用せざるをえない状況がこれから来るだろう。

もう1つは、男性側の意識の変化。前述の「男女共同参画白書」では、18−34歳男女の意識の経年変化がよくわかる。

男女共同参画白書 2023

グラフ上の女性側は2015年から2021年までの間に、離職した上での「再就職コース」が長年の1位から2位へ、正社員ポジションを育児休業などを使い維持する「両立コース」が34%で1位になった。

グラフ下の男性側(将来パートナーへの期待)のほうが変化が激しい。1992年には10%ほどだった「両立コース」が97年から上昇を続け、2021年に1位になっている。その割合は39.4%で、女性側の比率を上回っている

また「専業主婦コース」は、女性側で13.8%、男性側で6.8%と、およそ女性からみておそ倍率2倍の難関となっている。

男性1人では家計は支えられない(or支えたくない)、という意識は、女性より男性側で強い。と当然、育児休暇取得にも積極的で、家事も日常的にこなす。それができない(かつそれほど高給でもない)職場からはさっさと転職する。日本社会空前の人手不足がそれを支える。そんな時代だろう。

「同格婚」「同類婚」の時代

SNSでも、「同格婚」「同類婚」という言葉を目にすることが増えた。収入・地位が同レベルのパートナー同士の関係だ。特に、いわゆる「ゆとり世代」といわれる30代前半までの男性では、教育環境などの面で男女対等が当然という価値観もあるだろうし、日本の経済環境としても、男性1人で支えられない時代といえる。

僕は女子大のキャリア講座を担当する中で、最初の2017年から、この話をし続けてきた。当時、根拠としたのは、「欧米で進んでいるから、日本にも10年後から、普通になってゆくと思う」というロジック。予測・推測として話していた。

(筆者講義資料)

今、統計データとしても、ニュース記事でも、明確に現れるようになっている。

「パワーカップルが選ぶパワー賃貸 マンション1億円時代」との記事(7/31)もその1つ。

それは新たな階級格差が固定化されてゆく流れでもあるだろう。ただ、見えているものには対策することができる。わかっているなら、がんばってみよう。

参考:2021年note ↓ ↓ ↓


<トップ画像「天使の石像」妙に大人びた天使さん・・>

8/1追記:公式さんからCOMEMO PICK選出いただきましたー^先月「アスリート投資家」から2連続^^

このマガジンでは、数ある投稿の中からCOMEMOスタッフが選んだ知見を共有していきます

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八田益之(「大人のトライアスロン」日経ビジネス電子版連載中)
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