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不安材料多し。漸進的な金融緩和アプローチがメインシナリオ

米国トランプ大統領の登場が近づく中、各国ともに関税動向が不明となりつつあることもあり、英国の企業には不安感が台頭していると見られる。中国の先行きに慎重な状況から、過去1年間で事業困難になったと考える企業が58%となり、容易になったと考える企業13%と比べるまでもなく、懸念材料が蔓延しつつある、ということになる。

12月19日に開かれるBOEの金融政策会合は、MPCの意思決定の枠組み、市場のプライシング、記者会見も最新の金融政策報告書もない会合であることを考慮すると重要なイベントにはならない状況が整っている。しかし、その先の動向を考えると、貿易や財政政策に起因する不確実性が高まっている目下の状況において、金融政策は中期的に漸進的なアプローチが広く支持されることになろう。

MPCは漸進的なアプローチと整合するペースを明示的に定義していないが、これまでに示されたパターンからすると四半期に一回、金融政策報告書の発表に合わせたペースでの利下げに安心感を抱くのではないか、と考える。これに基づけば12月の会合において、8対1の票でバンクレートを4.75%に据え置くとともに、ガイダンスを維持すると思われる。反対票を投じる1名になると予想されるディングラ委員でさえ、漸進的なアプローチを支持していることも踏まえれば、その確実性は高いと見られる。以上から、2026年第1四半期まで四半期に一回のペースで利下げが実施され、利下げは金融政策報告書が公表される会合に集中すると予想する。

一方、リスクは利下げ余地が限られること、である。当社は英国のインフレ率予想について、2024年の推定2.6%から上昇して2025年に平均3.2%になった後、2026年に2.5%まで減速すると予想している。既存の物価上昇圧力に加えて、大半の企業は国民保険料の雇用主負担の増加を受けて価格を引き上げると予想していることも加えれば、さらにインフレ圧力が増すことが考えられる。経済統計や動向次第で、緩和サイクルを減速させたり、加速させたりする、柔軟かつ先見的な姿勢が重要であることは言うまでもない。

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