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分配より成長を 日本を「失われた70年」にしないために

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

いよいよ衆院選です。各党の公約も出揃い、論戦が本格的に始まりました。「新しい資本主義」という見慣れぬ言葉も出てきましたが、重要なのはその中身。個人的に注目しているのは、今後の日本の成長戦略をどうするかの1点に尽きます。

第一生命経済研究所の永浜利広氏は「デフレにつながる需要不足が大きく残る現局面では、成長が期待できる分野や気候変動対策への賢い財政支出を増やし、経済の正常化に結びつける政策が優先されるべきだ」と指摘する。

衆院選で分配や格差が焦点となるのは「現時点の単純な所得の不平等ではなく、低い階層から高い階層に行きにくいといった階層移動の難しさがある」(明治大学の飯田泰之准教授)。こうした「格差の固定化」への対策も欠かせない。「リスキリング(学び直し)」や公教育の充実で社会階層を上昇していける機会を増やすことは国全体の成長の底上げにもつながる。

今般のコロナ禍のような未曽有の危機では、「分配」を重んじる施策の重要性も明らかです。特に大きなインパクトを受けた業種において職を失った方々などへのは、ピンポイントかつ十分な支援が必要です。しかし、「分配」は主に財政出動で実現されており、後の「成長」に成功しなければ、財政出動の負の遺産は次世代に引き継がれていくことになります。

経営に例えるとわかりやすいかもしれません。今の日本はトップライン(売上)が伸びないが、給与を増やそうとしています。本来、昇給や賞与の原資は利益から創出するものですが、これを借入金でまかなおうとしています。利益を増やすためにはコストを削減する、生産性をあげる、売上を伸ばすなどといった施策を複合的に行う必要があります。残念ながらコスト面においては、毎年積み上がる社会保障費により右肩あがりが確定していますし、少子高齢化により現役世代ひとりあたりの負担は大きくなる一方です。これを補って余りある成長こそが、今の日本に必要なものでしょう。

長期停滞している国として、失礼ながら南米のアルゼンチンを思い浮かべます。第2次世界大戦が終結した1945年時点では、アルゼンチンは世界屈指の富裕国でした。農業大国として欧州向けの輸出で富を築き、戦時中は中立国になって戦禍を免れたためです。もっとも、戦後は経済政策で失敗を重ね、約70数年にわたり停滞しています。まさに「失われた70年」です。日本もこのまま浮揚の機会を逃し続ければ、アルゼンチンの後追いになりかねません。

DeNA創業者であり経団連副会長でもある南場さんは『スタートアップ庁』の設立というアイデアを披露しています。

「既得権益を守る規制が多すぎる。改革のリードタイムも長い。霞が関の問題は省庁が規制単位でできている点にある。日本経済が右肩下がりで反転攻勢をかけようという現在は、目的を上位概念に置いた組織作りが要る。そうした観点から『スタートアップ庁』の設立が有効ではないかと考えている。既存官庁は最終的に人材や専門家の待機所になっていくイメージだ」

「米国では国防総省が発注する政府の仕事が企業を育てている。宇宙産業などがその典型だ。個人的な意見として、補助金はスタートアップを弱くするので必要ないと考えている。政府調達などにスタートアップの問題解決力をうまく活用し、ビジネスを通じて育てていくことが大事だ」

アメリカ国防総省の例が出ていますが、その内部の部局である「国防高等研究計画局」(DARPA)のことを指していると思われます。DARPAはインターネットの原型であるARPANETや、カーナビなどでも身近なGPSを開発したことで知られています。軍事利用を見据えた最先端技術の開発を担っており、独立した予算と一般公募によるプロジェクトで成り立っています。

成長戦略としてデジタル化に言及する党は多いですが、具体的には何をするのか。人材育成や予算配分とその執行の具体案、国家の課題として省庁の枠を超えたイノベーション創出をどうしていくのか。これこそが、政治にしかできない役割でしょう。

これからの政策議論において、ぜひ注目したい点です。そしてなにより、必ず「投票」にいきましょう!

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タイトル画像提供:taa / PIXTA(ピクスタ)

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