未婚と既婚の幸福度は、なぜこんなにも違うのか?
「幸せですか?」
そう問われたら、みなさんはどう答えますか?
結婚は幸せの代名詞のように思われていますが、では、結婚した人たちは幸せで、未婚や独身の人たちは不幸なんでしょうか?
調べてみました。
未婚と既婚、男女年代別でみると、確かに既婚者のほうが男女ともに幸福度が明らかに高いものになりました。既婚者の場合は、年代が上がるごとに若干幸福度は下がる傾向はありますが、ほぼ全年代で8割以上が幸福であると答えています。これはこれで相当高い数字だと思います。
一方、未婚者の場合は、男女ともに既婚者より幸福度は低め。そして、なぜか40代が最低となります。特に、40代未婚男性は幸福と感じる率がたったの36%しかないだけではなく、不幸と感じる率(28%)が最大値を記録しています。
なぜ、未婚の方が既婚より不幸度が高いのでしょうか?
実は、これ、日本人に限らず、全世界的にそのようです。
もともと日本人の幸福度の低さは定評があります。国連発表の幸福度ランキングでも日本は先進国で最下位という結果です。
では、独身者と既婚者とで見た場合はどうでしょう?
世界各国を対象とした「2010-2014世界価値観調査」からその部分を抽出(未婚も含む独身)すると、アメリカ・オーストラリア、オランダ、スウェーデンなどの欧米諸国であっても、既婚者より独身者の方が不幸度の高い。未既婚で幸福度に差がないのは、フィリピン、タイ、マレーシアなどの東南アジア諸国です。
この中でも、日本とドイツは群を抜いて「独身の不幸度が高い」国です。日本人とドイツ人、なんとなく共通している部分もあるように思います。しかし、一方で、少ないながら「独身の方が幸福な国」もあります。特に台湾は10ポイントも未婚の方が上回っています。同じ東アジアでも、日本と台湾がこれほど違うのも興味深いところです。
© 荒川和久
「フォーカシング・イリュージョン」という言葉をご存じでしょうか。
これは、ノーベル経済学賞の受賞者であり、行動経済学の祖と言われる米国の心理学・行動経済学者ダニエル・カーネマンが提唱した言葉です。ある特定の「状態」に自分の幸福の分岐点があると信じ込んでしまう人間の偏向性を指します。
たとえば…
「いい学校に入れば幸せになれるはず」
「いい会社に入れば幸せになれるはず」
「結婚すれば幸せになれるはず」
学校、会社、結婚という「状態になりさえすれば幸せになれるはず」という思い込みは、強い状態依存を産みます。その状態依存が強まれば、そのうちその状態にない現在の自分を肯定できなくなっていきます。それが不幸感を生み出していく元です。また、状態依存は、その状態にある誰かとの比較をするようにもなり、欠落感や劣等感も増長されます。
もちろん目標を定めて努力することは大切ですが、学歴や就職や結婚という状態が自動的に幸せを運んできてくれるわけではありません。状態とか環境とか周りの人ばかりを見て、考えすぎないこと。それが大事です。
未婚者や独身者に比べて、既婚者が特別恵まれた状態にある人たちばかりではないのに幸福度が高いのは、子育てを含めた日常に(いい意味で)没頭して、余計なことを考える暇もないからかも、と考えたりします。
案ずるより産むが易し。幸せも案外そんなものかもしれません。