東京の感染拡大は抑えられるのか?
東京都の新型コロナウイルスの新規感染者は先週後半から100人を超えた日が続いています。連日の報道では20-30歳代の若者の割合が多くを占めており、特に夜の街での感染拡大が懸念されています。3月から4月にかけて感染者が急増した時は同じ夜の街でも銀座、赤坂、麻布などでの感染者が目立ち、年齢層も40-60歳代の男性の割合が多くを占めていました。この時はまだ検査体制も十分ではなく行政検査が中心でしたので、ある程度疑わしい有症状者のみが検査対象となったこともあり、ピーク時には東京都の検査陽性率が3割を超えました。私のところでも数は少ないですが3月下旬の検査陽性率はほぼ4割、4月上旬はほぼ5割でした。今回の感染者の増加は検査体制も充実化し、ホストクラブでの集団検査など積極的に検査を進めていることから相対的に増加していることも考えられますが、前回と類似していることは感染経路不明の感染者の割合が徐々に増えていることです。
「感染経路不明」ということは「どこで誰からうつされたかわからない」ということで、その人がさらに他の人にもうつしていて、それがもしかしたら満員電車や混雑したスーパーである可能性もある訳です。ただ私はこれまで多くのCOVID-19が疑われる発熱患者さんの診療を行ってきましたが、詳細な行動形態を伺うとほぼすべての方が「リスクのある行動」すなわち「接待と伴う飲食店の従業員やその店に行った方」や「会食の時にマスクをしないで長時間会話をした方」であり、本当に感染経路がわからない方、すなわち「真の感染経路不明者」で陽性になった方は4月のピーク時に診察をした方お一人だけでした。この方は一人暮らしでテレワークをしていて外出も近所のみと仰っていたので、私もどこで感染したのかが推測できませんでした(お話ししていただけなかった事情があったのかどうかはわかりません)。
すなわち、東京都が発表する「経路不明者」がこのような「真の感染経路不明者」ばかりとなれば本当に市中で拡がっていることが懸念され、封じ込めがきわめて難しい状況であると考えなければなりません。ただ現在の内訳を分かる範囲で分析すると、「リスクのある場所での感染者が無症状の状態(感染早期で本人が感染しているとの自覚がない状態)で家庭内や職場に持ち込み第三者に感染させてしまったケース」や、「感染源はある程度つかめているけれども諸事情で正確な情報の聞き取りができずに経路不明となっているケース」などが多くを占めるのではないかと推測されます。
しかしながら、「感染経路不明者」の割合が増していくことは水面下での感染が一気に拡がる可能性があることであり、これから数日間は予断を許さない状況です。特に今週に入り中高年層の感染者割合が増えてくるような場合には、市中への拡がりの可能性が示唆され、重症者も急増する可能性があります。私はこれまでの診療経験や症例報告からCOVID-19は基本的な感染対策をしっかりと行っている環境下では次々と拡がっていくような感染症ではないという認識を持っていますので、過剰に恐れることなく、リスクのある所には行かないこと、もし行った場合には最低でも1週間はランチを含む会食の機会を持たないこと、体調不良を感じたら必ず休むことなど、各自の行動をもう一度見直してみることが感染拡大に歯止めをかける重要な要素になると考えます。