Clubhouseが組織カルチャーに与える影響について考察してみる
Clubhouseの勢いが止まりません。一時よりは少し落ち着いてきているとはえ、この影響により「音声のみのオンラインコミュニケーション」が文化として根付いていく雰囲気は出てきたと言えそうです。
そこで、このnoteでは、Clubhouse的な音声コミュニケーションが社会の文化として根付いてきたとしたら、組織カルチャーにはどういう影響を与えるのか?ということを考えてみたいと思います!
Clubhouseは今どういう状態か
日々状況が変わっているので、振り返ったときに分かりやすいよう、書いている今日2021年2月2日時点でどういった状況か押さえておきます。
僕自身は1/25(月)の朝から使い始めたのですが、世の中の盛り上がりもちょうどこの一週間で一気に広がった感じですね。SNS上での会話がここまで一つのサービスに染まったことは、Pokemono GOのリリース以来では?という印象です。
プラットフォーム型のメディアの一つとして、僕なりにポジションを整理すると、こういう感じです。(プレイヤーは主観で選んでいます)
「なぜ盛り上がっているのか?」「どこがすごいのか?」ということについての考察はたくさん出てきているのでぜひ以下をご覧ください。
↓流石の徳力さんのまとめ。
↓30-40代の方の利用・考察が多いので、20歳の方がどう見ているかのこのnoteはお勧めです。
↓フェーズ的にはアーリーアダプターに入ってきたって感じですかね。
当初の僕の印象としては、「緊急事態宣言によってリモートワークになり、会食もできなくなって、話す機会が減った寂しい大人たちが飲み会の代わりに遊んでいる一過性かな」という感じでしたが(自分もその一人です)、どうやらこれは、文化の一つとして定着していく可能性もあるなと。
招待制の飢餓感に煽られて一気にバズって、一時SNSは「招待してください」「フォローしてください」だらけでしたよね。
この辺は、まだ「まずは使ってみて楽しむ」というフェーズだったわけですが、集まって話すだけというシンプルな構造のため、「どう使うべきか」「こういう使い方は違うのでは?」みたいな議論へと急速に進んでいます。
こうした議論のプロセスを経て、一つの文化として定着してくんだろうと思うんですよね。
もちろん、iOS限定などの課題も今はあって、企業での利用に広がるにはまだ遠そうですが、Clubhouseきっかけで作られつつある「音声コミュニケーションという文化」自体は根付いていくのではないでしょうか。
そこで、Clubhouseを受けて確立してゆく音声コミュニケーションという文化が、組織カルチャーや働き方にどういった影響を及ぼすか考えてゆきます。
仮説としては3つあります。
(1)音声のみのコミュニケーションが急増する
コロナ禍を受けて加速したリモートワークの流れは不可逆な変化であり、こうした働き方を前提に組織を作っていく必要があることは、ダイヤモンドオンラインの連載でちょうど論じたところです。↓
リモートワークのコミュニケーション上の課題に、オフィスでできた雑談ができない・聞こえないというのがあります。ちょっとした会話で仕事の進め方を確認したり、同僚同士の会話をなんとなく遠巻きに聞きながら、情報をキャッチアップしているということは実は多いですよね。
特に「うちの会社らしい行動や言動」といった、組織のバリューやクレドと紐づくカルチャーの根幹は言語化が難しく、こうした日々のやりとりから浸透してゆくものです。
これを補完する動きとして、「オンライン上で雑談をなんとなく聞きながら仕事をする」という働き方が進んでゆく可能性があります。
テック系の企業では既に、Discordなどのツールを使って「音声を繋ぎっぱなしにして働く」というリモートワークのあり方が出現しています。
このツールで繋ぎっぱなしにしておくと、周りのタイピングしている音が聞こえて仲間の存在を感じられたり、「雑談部屋」にオンライン上で入ってちょっと話してる声が聞こえたりするなど、オフィスっぽく仕事ができます。
僕自身も、コロナ禍の中で創業したAlmoha LLCでも、リモートベースにしているため、朝会と称して毎朝Discord上で集まって今日何やるかなど声を掛け合ってから、1日をスタートしています。
雑談が聞こえなくなったことにより失ったものを、「音声をつなぎながら働く」ことで補える可能性が出てきたということです。
これは、動画とセットのZoomだと「見られている」感覚による心理的障壁が高いため、「音だけ」というコミュニケーションならではの新しい働き方と言えます。
(2)時間を決めて通話する文化が作られる
下の表は、コミュニケーション方法の変化を僕なりに整理したものです。テクノロジーの進化と共に、コミュニケーション方法も進化していて、コロナ禍がコミュニケーション3.0へと加速させていることが伺えます。そして、前時代の手法は淘汰されていくということも見えると思います。
ここにあるように、固定電話→携帯電話と進化してきた音声コミュニケーションは、Clubhouseのような音声ルームのツールにとって変わられる可能性があります。(Clubhouseはオープンに話されているイメージですが、機能としてClosedも可能なのでそうするとほぼ電話の状態です)
電話ってこれまで「急にかかってくるもの」だったんですよね。従来の電話は「急にかかってきたものを取るもの」であり、「仕事に急に邪魔が入る」のが電話の特徴でした。
集中していても電話が鳴ると取らないといけなくて仕事が止められます。これが携帯電話となると「いつでも取れて当たり前」なので、更に防ぎようがありませんでした。(個人的にそれは大きなストレスでした)
これが、Zoom等によるオンライン会議が定着してきたことで、「離れた場所にいても時間を決めてから話す」という流れができてきました。
チャットなどで「14時からお願いします」とアポをとって、その時間になると「オンライン上のその会議室に入る」という感覚ですね。
これにより、2人で話す時も「(電話ではなく)Zoomで」となることが増えていて、電話することがすごく減った感覚があります。時間を急に奪われることはだいぶ減ってきたと思います。
ここにClubhouseといった「音声だけで話す部屋」が確立してくると、「急に電話をかけて通話する」文化が崩壊し、「予定した時間に会話する部屋に行って話す」という文化にアップデートされると考えています。
Aさん「今日この後話せる時間あります?」
Bさん「15時なら!」
Aさん「ではRoom設定しますね」
みたいなチャットを経て、音声コミュニケーションする感じですね。メールだとこれ面倒なんですが、チャットだからさくっとできていいです。
つまり、「電話」という概念がなくなって、「決まったルームに行って話す」という概念に置き換えられるのです。
急な電話に手を止められることがなくなるので、個人的にはぜひ向かって欲しい方向だなと思っています!!
(3)情報をオープンにする力学が高まる
最後は、情報のオープンさについてです。
Twitterやnoteといった個人が発信するメディアが確立し、企業からの情報よりも、個人や第三者の情報をより信頼するようになっています。
これはマーケティングの世界から始まっていて、企業からの広告しか情報がなくそれをもとに購買を意思決定していた時代から、個人が発信する情報をもとに顧客が意思決定するようになりました。
どんなに「この商品はおいしいよ」と企業が広告しても、顧客からの「食べてみたらイマイチだった」という言葉がネット上に溢れれば、当然企業の広告は信頼されなくなるわけです。
つまり、商品やサービスのブランディングが、企業主導から顧客主導に変化したということです。
(手前味噌ですが)消費者主導のマーケティングに関する連載。↓
これと同じことが、働く職場としての企業ブランドにも起こります。
企業がどんなに「オープンな組織です」と採用サイトや採用イベントで説明しても、中にいる社員が「会議で意見を言ったら咎められた」ということをネット上で書いたら、その企業は信頼を失いますよね。
そして、企業の発信よりも中の人を信じて「オープンでなさそう」という、イメージを持たれてしまうと思います。
企業によっては、「社内のことをTweetするのは禁止です」などと制限をかけて、マイナスのイメージがもたれないように抑えているところもあるようです。SNSをチェックをした会社側から「削除するよう指示された」というTweetも見たことがあります。
一方、Clubhouseは、「録音禁止で残らないメディア」という特性があるため、後から消して無かったことにはできないわけです。
企業としては「残らないなら大きなリスクではない」と捉えられるかもしれませんが、「残らないので後から広報チェックできない」とも言えるわけです。
企業としては、自分たちでは把握不能な場所で、会社として言われたくないネガティブな側面を言われてしまうかもしれないのです。これは、まぁ飲み屋で大声で悪口を言ってるのと同じことなのですが、それを無数の人が聴く可能性があるということです。
このようにClubhouseを認識すると、個人の発信を止めることはもう不可能なので、企業としては、チェックして制限するのではなく、社員が自分たちの会社のことについて外でオープンに話しても困らないような組織づくりをすることが最優先と思っています。
とはいえ、即座に最高の組織がつくりあげられるわけでもないですし、完璧な組織があるわけでもありません。
そのため、まず心がけたいのは、組織のカルチャーや働き方の実態に対して、対外的に発信しているメッセージにギャップがない状態にすることです。
実態を隠してよりよく見せようとするから、嘘をつくことになり、信頼を失う結果となるのです。そのためこれからの社会においては、「透明性を持ち正直であること」が企業のブランディングに欠かせなくなってゆくといえます。
以上、3点の仮説を挙げてみました。
Clubhouseがどこまでマスにリーチするかは分かりませんが、音声メディアの変化を軸にして、働き方や組織カルチャーにもこうした変化が生まれることは、間違いないと思います。
この機会に、自社の組織カルチャーについて、コーポレートサイトや採用活動で発信しているメッセージが、組織の実態に沿っているかどうかから、見直してみてはいかがでしょうか?
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