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子どもと作る「ほうれん草の白和え」から考える組織開発

2歳の子どもが、野菜を食べたがりません。さて、どうしたものでしょう。味噌汁も、鍋物の野菜も、煮物も、サラダもダメです。どうしたら野菜を食べてくれるだろうか?と、気合いというか念(怨念)のようなものを込めて料理をつくっても、結局食べてくれません。

野菜を食べてくれないと、栄養が偏っているんじゃないかとか、いろいろ心配になります。しかし、まぁ、そんなに細かく気にしなくても、よほど塩分や糖度の高いものでなければ、食事をとってくれていれば良しとしよう、という風に思っているものの、やはり野菜を食べてもらうと嬉しいのです。

ほうれん草の白和えに、2歳児が参加する

晩御飯の支度をしているとき、ふと我が家の2歳児が暇そうにしていたので、ほうれん草の白和えをつくるために豆腐をつぶしてもらおうと頼んでみました。使った道具は、無印良品のステンレス泡だて器(小)。これを使って、地道に豆腐を潰してもらいます。

豆腐が潰れていくプロセスって、子どもからすると粘土遊びみたいで面白いんですよね。そこに、ちょこっと味噌を加えて混ぜてもらいます。これもまた、絵の具とか粘土みたいで面白い。どんどん混ぜてくれます。(テーブルに、豆腐を少し撒き散らしながら)


そこに、茹でて水で締めて刻んだほうれん草を放り込み、さらに混ぜていきます。ほうれん草と豆腐をからめるのはちょっと一苦労なので、ぼくも木べらで参加します。一緒に混ぜていると、なんだか楽しくなってきます。

ちなみに、レシピは樋口直哉さんのこちらを参考にしています。

程よく混ざったところで、一緒につまみ食いをしてみました。おいし〜!と目を輝かせました。そう、つまみ食いって美味しいですよね。ぼくも、キッチンで料理して、つまみ食いしながら缶ビールを飲む時間が大好きだし、そういう時のつまみ食いってとっても美味しいんですよね。

こうして作ったほうれん草の白和えを指し、妻に向かって「これはわたしがつくったやつ。食べてね」と伝えていました。自分は料理ができるし、つくったものが美味しいものになったと自信になったようです。

こうして、ほうれん草の白和えは、子どもの好物の一つになりました。野菜を食べなくて悩んでいたのが、小さく解消しました。

2歳児のごっこ遊びに、大人が参加する

これに味をしめたぼくは、チジミをつくるときに小麦粉や片栗粉を水でといてもらったり、コールスローをつくるときに酢と砂糖とマヨネーズを混ぜてもらったり、無印のステンレス泡だて器(小)を使ってできることをあれこれやってもらうようになりました。

そうすると、コールスローや野菜チヂミもよく食べます。やはり、自分が手を加えたものへの愛着が生まれるようです。

さらに面白いことは、このステンレス泡だて器(小)が、子どものおもちゃのレパートリーに加わったことです。ままごと用のおもちゃの鍋のなかをこの泡立て器で混ぜ、ぬいぐるみ達にご飯を与えてごっこ遊びをしています。子どものごっこ遊びに参加しているときに、よくぼくも料理をつくってもらいます。

ここで重要なことは、ぼくがただ料理のプロセスに子どもを「参加させた」のではなく、普段から子どものごっこ遊びのなかの料理のプロセスに参加していたことです。この経験があるから、豆腐を潰すプロセスを遊びの延長に位置付けることができたのだと思います。

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子どもは大人の実践に参加するが、大人は子どものごっこ遊びに参加する。このような"参加し合う関係"が、家事・育児の悩みを少し解消したということを考えると、様々なシーンで、ぼくは子どもの活動に参加できているか?子どもに参加の間口をひらけているか?を問い直すことができそうだと、発見しました。

組織開発との類推

今回、こうして料理のプロセスに子どもに参加してもらうことで、子どもが料理の楽しみを知ったとともに、野菜を楽しんでくれるようになったわけですが、普段から子どもの活動にぼくが参加していることが下地になっていたことを発見しました。そこでふと「これって組織開発と似てるかも?」と思ったのです。

組織開発において、ロゴマークやビジョンステートメントなどのCI(コーポレートアイデンティティ)の開発を、社員の方々を巻き込んだワークショップを通じて開発することがあります。

大企業において、いくら良いロゴや良い理念(だと経営層が思ったもの)をつくっても、社員になかなか浸透しない、理解されないという悩みを聞きます。2歳児が、親が作った料理を食べてくれないのと似ています。

社員は2歳児じゃない!と怒られるかもしれません。もちろんそうです。しかし、この類推から考えられる「参加」というものが持つ本質を問い直したいのです。

社員への浸透を図るためにも、そもそもCIを作るプロセス自体をオープンにし、社員の方々に参加してもらうことで、名実ともに社員の思いが込もったものができあがります。2歳児が料理を作るプロセスに参加することで野菜を食べるようになることと似ています。

しかし、ただ参加してもらえば思いが込められるかというとそうではなく、コピーライターやデザイナーが仕上げている途中のものを吟味するプロセスもまた開示される必要があるでしょう。社員から意見だけ募集してあとはデザイナーが仕上げる、というやり方ではなく、完成までのプロセスが常にオープンになっている必要があります。この点は、「つまみ食い」をして、味を見て調整する必要があるのと似ているのかもしれません。

さらに、普段から社員の言葉や様子を見ていたかも問われるでしょう。そもそも会社の理念を一緒につくりたい!と思うほどモチベーションがなく、もっといろんな不満が山積しているようなら、ロゴ開発よりもまえにそうした不満について対話し、問題を解消するところから始めなくてはならないかもしれません。

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普段から社員の活動に参加し、理念をともに作るための関係性の下地ができていてこそ、ボトムアップ型のワークショップは成功します。ここにもまた、"参加し合う関係"を見ることができます。

参加し合う関係が成立するか?

普段から2歳児と一緒に遊び、ままごとのなかで料理をする仕草をしているのを観察していたからこそ、ぼくは豆腐を潰してもらおうと閃いたのだと思います。この子は料理にきっと興味を持っているはずだという仮説は、観察から立てたものです。

この類推から考えられることは、リーダーがプロセスを開示し、メンバーの参加の間口を開くことの重要性はもちろんのこと、リーダーが普段からメンバーの活動に参加している/参与観察していることが重要であると言えます。

「参加させる」「参加してもらう」という言い方をしている時点で気をつけたほうがよいかもしれません。「参加し合う」という関係性が成立していることが、家事でも組織開発でも条件となるでしょう。

NIKKEI STYLE出世ナビ「私のリーダー論」から、育児のヒントを得ることもできそうです。


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臼井 隆志|Art Educator
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