上級国民政治屋「裕福な上級国民だけが子ども産めばいいじゃん」
小池都知事がぶちあげた東京都の私立高校授業料の無償化は、こと少子化対策として最悪手である。
これは、2024年度から私立高校の授業料をすべての世帯に対して実質無償化すると発表したものだが、その狙いは、世帯年収により教育レベルが変わる「教育格差」是正だとか言ってるのだが、むしろこれは格差を拡大させることになる。
これから高校入学を控える親からすれば、そりゃあ教育費負担が軽減されるのだから歓迎する話だろう。一見、誰も損をしていないのだから「別に反対する話じゃない」という者もいる。「本当は国がやるべきことなのに、小池都知事は偉い」などという者すらいる。
これこそ「得を与えているように見えて実は大きな損として返ってくる」事例の典型のようなものだ。すべてのバラマキ政策がダメだとはいわないが、大抵政治家をやるバラマキは選挙対策だったり、ポピュリズムにすぎない。
それでも本質的な課題解決のために役に立つなら百歩譲って目をつぶれようが、岸田政権の「異次元の少子化対策」がことごとく的外れなのと同様、無意味どころか逆効果になる。
政府の少子化対策のダメさ加減は何度も書いているので詳しくは書かないが、児童手当などの家族関係政府支出を増やせば出生数があがるなんてことは断じてない。むしろ、その政府支出の穴埋めとして必ず、税金や社会保険料の国民負担増がセットでついてくるのだから、国民の可処分所得は減り、かえって婚姻や出生の減少の原因となる。それはこの20年間の推移を見れば明らかに証明されている。
東京都の私立高校の無償化も、目的としてあげている教育格差の是正とは反対の教育格差の拡大にしかならない。
なぜそうなるか。
この記事が分かりやすく解説してくれている。
簡単に言うと、私立高校の無償化は畢竟その前段階の私立中学受験のための競争激化と教育費負担増になり、かえって子育て世帯の家計を圧迫することになる。子ども一人にかけなければいけない教育コストがあがれば「もう一人産むか」という希望もあきらめることになる。
それどころか、当然ながら、家庭教師を雇ったり、塾などに通わせることのできる裕福な層しかますます子どもを産むことすらできなくなる悪循環になる。これは、少子化の原因である中間層の少子化がさらに進むという最悪手でしかないのだ。
全国的には、世帯年収900万以上でなければ子どもを産めなくなっている。
もっといえば、東京23区においては、直近6年未満での出産している世帯に限れば、その中央値が1012万円にまで高騰している。要は、東京で子を産む半分以上が1012万以上の世帯ということだ。
みんながみんなそれだけの所得があればいいが、現実はそうではない。結局、所得のボリューム層であり、かつて出生数のボリューム層だった中間所得層が、出生もできなければ、その前段階としての結婚もできなくなっている。それが今の(というより20年間の)出生減の根本原因であり、私立高校無償化はさらにそのアクセルを踏むようなものになる。
日本より出生率低下が酷い韓国も同様。
子どもを産んでもらうために親の経済的負担を軽減しようとしてバラまくと、結局そのお金は今いる子どもたちのために全額投資されて、新しい子どもを産む方向には結び付かないのだ。これは2008年の会計検査院の少子化予算の無駄として指摘されていることだし、事実その通りになっている。
もちろん、今いる子どもの中に経済的な問題で教育が受けられない子に対する支援は必要。子育て支援そのものは否定しないが、それは少子化対策にはならない。むしろ行政がやるべきはそうした分配の適正化であって、一律配ればいいという乱暴なものではない。
そもそも少子化対策なら、2人→3人ではなく、0人→1人を目指さないと何の意味もない。
政府も都も、やっていることは支援がなくても子どもが産める裕福な上級国民だけが子どもを産めばいいという考えなのかとすら思ってしまう。もしそうなら、それは社会ダーウィニズム的優生思想に近い危険な考え方だろうと思う。
とかく政治家の金の使い方が的外れなのは、決して彼らが無知なわけではない。彼ら政治家は自分らの政治稼業(政治ビジネス)の延命のために、いかに上手に公金を流用するかしか考えていないのだろう。大学無償化などは、つぶれそうなクソ大学に公金使って延命させて、官僚の天下り先の確保と見返りに政治資金パー券購入みたいなスキームがあるのだろう。そこにかけては、天下一品のずる賢さがある。
政治家は政治で金儲けをしているという声に対して、元政治家の石原伸晃氏はテレビ番組「ミヤネ屋」でこんな反論をしている。
まあ、石原さんはそうでしょう。石原家などという超富裕層の家に生まれたのだから、政治で金儲けするなんてそんなチンケなことは考えないでしょう。でも、だから石原さんは総理にはなれなかったのでは?とも思う。政治家が政治をやっているのではなく、政治屋がやっているのだから、政治屋しかトップには立てない。
そういうものの、前掲したJBプレスの記事に出てくる大学教授のように、まともな意見を言う人もいる。大学教授の中にも、当然ながら権力者におもねいて鉛筆なめなめの御用学者ばかりではないが、少なくとも政府のなんちゃら会議に呼ばれるのはそういう御用学者ばかりだし、出自を見ると元官僚の天下り教授のいかに多い事か。
何でもいいが、とにかくこうした現実に即した論が展開される人達がもっと取り上げられるべきだし、メディアも御用学者ばかり使うのもやめた方がいい。