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オシロ社がプロフェッショナルな組織づくりで進める「黒帯」と「DRI」

前回の記事では、オシロが目指す「家族的プロフェッショナル型組織」のあり方について紹介した。今回は、そのような組織をつくっていく上で、現在オシロ社が整備を進めている「黒帯」と「DRI(directly responsible individual=直接責任者)」という2つの取り組みについてシェアしていきたい。


社員全員が「黒帯」になるロードマップをつくる

「黒帯」というのは、もちろん柔道や空手などに見られる有段者の証。その分野で技術を習得し、実力・実績ともに熟達したと認められたときに締めることが許される。いわば「プロフェッショナルの証」だ。

ぼくは社員全員が黒帯を目指してほしいと考えている。それぞれの職能のプロフェッショナルとしてのレベルアップを目指せる組織でありたい。ただ、こういうと会社でよくある等級制度と変わりがないんじゃないかと思われるかもしれないが、それとはちょっと違う。

等級制度の場合、階級が上がれば上がるほど先鋭化されるピラミッド構造になっているが、ぼくがイメージしている黒帯制度は、「黒帯は多ければ多いほどいい」。オシロ社の黒帯は、社員の総数に対してごく少数の人しか得られない階級ではなく、なるべく全員が黒帯となれるような成長を支援していく仕組みにデザインしたい。

そういうと「全員黒帯にしてしまったら、人件費がとんでもないことになってきちゃうんじゃないの??」とツッコミが入りそうだ。等級制度と違う位置づけなので、黒帯と給与は連動しない。ただし、社員の成長や実績には当然報いたいと考えているし、業績と給与は連動させていくつもりだ。

黒帯制度はどちらかといえば社員一人ひとりがオシロ社でビジネスパーソンとして成長できる環境を整備したい意図がある。実際、このような職能やスキルによって段階や認証で可視化する取り組みは、大手企業を中心に増えている。

自分自身はどのようなスキルアップが必要で、どのようなトレーニングや経験を積み、どれだけの時間軸で習得していきたいのか。社員が自身の強みや弱みを認識した上で、より高いパフォーマンスを発揮できる道筋をつくる。そういった「黒帯までのロードマップ」のようなものだ。

しかし、ここで注意したいのが、プロフェッショナリズムとチームワークの両立だ。一人の黒帯が出せる力には限りがあるし、特に会社の場合は単独で仕事が成り立つことも少ない。

複数の黒帯が力を合わせた方が、断然強い力が出せるし、より多くの問題が解決できる。そこでぼくは、オシロ社流にアレンジした「DRI」を取り入れることにした。

大きなプロジェクトに臆さないマインドを培う

DRIは、スティーブ・ジョブズさんがAppleを世界的企業へと成長させた一因ともいわれている。簡単に説明すれば、あらゆるプロジェクトやタスクに責任者を置き、プロセスと遂行における責任の所在を明確にする制度だ。

なぜ、オシロ社でDRIを取り入れることにしたのか?その理由は二つある。まず一つが成長中のスタートアップにありがちな「ボールの取りこぼし」をなくすこと

スタートアップは、日々新しいことが起きもするし、変化もしていく。やるべきことがそこらじゅうに落ちている。「それぞれのボールにはしっかりと名前を書いておいたほうがいい」と思った。誰がこのボールの持ち主で、誰がそのボールを処理するのかを決めておけば、お互いに見合ってしまって取り損ねることもなくなる。

もう一つの理由は、社員全員がなんらかの「プロフェッショナル」であることをイメージしているからだ。上述のように、ぼくはオシロ社が黒帯(プロフェッショナル)同士が力を合わせ、より多くの問題を解決し社会に貢献できる組織にしていきたいと考えている。

オシロ社にとってのDRIは、プロジェクトやKPIの達成に向けて黒帯同士を束ねるチームをつくり、推進できる能力と定義できる。

そのようなプロジェクト・オーナーシップは、責任をもって遂行してこそ養われるものだ。そして若手社員でもプロジェクトや大事なタスクの責任者を任されることによって、徐々に大きなプロジェクトにも臆さずチャレンジできるマインドが培われる

そんな成長を全社で応援したいと思っているからこそ、オシロ社ではDRIを全社で共有し、黒帯の社員はすすんで若手のDRIへのチャレンジを応援していく体制にしていきたい。

社員の挑戦を奨励し、成長を支援する取り組み

この原稿を書きながら、改めて「家族的プロフェッショナル型組織」とはなんなのか思考を整理している。そうした時に思い浮かんだのは、オートクチュールを手掛けるトップブランドが自組織を表現する際に用いる「メゾン(maison)」という言葉だ。

メゾンもまた家や建物・家族までも意味する言葉だが、一つのブランドのもとにプロフェッショナルが集まり、お互いのパフォーマンスを引き出し合うことで美しい作品が創造されていく。しかし、そのプロセスには幾重もの試行錯誤があると思うし、そのようなチャレンジの連続を経て生まれる絶対的な美を、ぼくは心から尊敬している。

そういった意味では、「家族的プロフェッショナル型組織」は「メゾン的」であるともいえるかもしれない。

オシロ社はコミュニティを通じてアーティストやクリエイター、そしてブランドや企業をエンパワーメントし、よりよい成長へと支援する会社だ。

そのためにはまず、社員の一人ひとりが美意識を持ち、高いパフォーマンスを発揮し、なにより幸せなチームである必要がある。そういう哲学を、オシロ社では社員の心と身体の健康に配慮した多くの制度で体現してきた。

そして、現在「黒帯」と「DRI」に取り組みはじめたのは、社員のプロフェッショナリズムへの意識をより高くしていくため、そして社員の挑戦を奨励し一人ひとりの成長を会社全体で支援していく体制を整えるためだ。

ただ、今でもぼくは「社員は家族」と思っているし、今後もその考えを変えるつもりはない。そういった意味では、ぼくの中ではやはり「家族的プロフェッショナル型組織」のほうがしっくり思える。

プロフェッショナルであろう。挑戦し続ける組織であろう。

ありとあらゆるプロフェッショナルは、自身のアクションに責任を持つ。しかし、あらゆるプロフェッショナルの成功の裡には、幾重もの挑戦と失敗があることをぼくは知っている。もちろん、ビジネスでは失敗をしないほうがいいし、失敗したとしてもしっかりと振り返りをして、同じ過ちを繰り返さないよう改善していくのは当然のことだ。

しかし、失敗だけを恐れて必ずうまくいくことしかやらずに現状に甘んじることは、進歩がないことと同義だ。まだ誰もやったことがない、未開拓の領域に足を踏み入れることは、大きな勇気がいることで、そこで失敗することもあるだろう。しかし、新しいことに全力で挑戦した上での失敗には大きな学びがあり、決して無駄にはならない

挑戦し続けること、そして新しいものを創り上げていく苦しみと孤独は、アーティストを目指し、そして挫折した自分自身がよく分かっている。しかし、オシロは会社であり、社員は決して独りではない。

チームであるからこそ、挑めるものがある。プロフェッショナルであろう。恐れないでいこう。新しいこと、難しいことをやっていこう。「黒帯」と「DRI」の取り組みは、そんなメッセージを込めている。

成長と挑戦、そして失敗を恐れずに前へと進む組織へ。この取り組みが走りだし、機能するころには、オシロ社は非連続な成長をしているだろう。

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