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「自然との一体感」と「幸せ」

 人類はこの地球から生まれ、育てられた存在である。その意味で、我々が自然の一部であることを認めない人はいないだろう。
 しかし、自分が自然の一部であることを、あなたは、日頃どれほど感じているだろうか。実は、これがあなたの幸せに大きな影響を与えるのである。
 この20年間に、幸せに関する科学的研究が盛んになり、いろいろな知見が明らかになってきた。
 その中でも最近の重要な発見が、その人が「自然の一部である」あるいは「自然との一体感を感じる」という主観的な感覚の重要さである。これを英語では「ネーチャー・コネクテッドネス=Nature Connectedness」と呼ぶ。このような感覚を持っている人は、幸せ度が高いことがデータから示されているのである。カナダのブリティッシュコロンビア大で、Holli-Anne Passmore博士やその共同研究者が、この数年、地道にデータを集め解析した結果、この事実が明らかになったのである。
 ここで、周りに植物などの緑が物量として多いかどうかは、あまり関係ないという。仮に自然を感じさせるものは少ないとしても、その人が、自然との一体感を感じ、自らを自然の一部と主観的に感じるかが、その人の幸せに大いに関係しているというのである。
 思い起こせば、私の山形県酒田市の実家には、小さいながら家の中に坪庭があった。水が流れ、緑を潤す小さな自然が、身近な場所に創られていたのである。日本の伝統建築には、坪庭という形で、小さいながら自然を身近に感じさせ、意識させる仕組みが組み込まれてきた。先人は、直感力でこのことの大事さを知っていたのではないかと思う(これを書きながら、実家の坪庭を創った今は亡き父のことを思い出しました)。
 禅の瞑想が、マインドフルネスという形で、心理学や脳科学と結びついて現代に科学的に再発見されたように、この小さな自然を愛でる日本の心は、現代に再発見されてよいコンセプトではないか。
 我々の伝統の中には、未来に向けて再発見する価値のあるものがまだまだあると思う。
 
 https://people.ok.ubc.ca/hapassmo/journal-articles.htm

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