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反転、改革、創造。みんなの得意を解き放つ。

企業を健康で活力のある状態にする。こんな仕事に約25年に亘り携ってきた。短期間で結果を求められることも多かったので、いわゆる効率化という即効性のある薬を投じることもあった。そんな時、常に違和感を感じていた。人や設備を減らして、効率化して収益を生み出して何をするのだろうか。株価を上げる、増収増益を達成する。そんな理由を聞くたびに、そうした目標も重要だと感じていたものの、いま提供している価値を高めるとか、新たな価値を提供するとか、こうした目標の方が圧倒的に大事なのではないかと、強く思っていた。

多くの会社では、現場から少し遠い計画を立てる人と、現場で計画に沿った指示をもらって実行する人と、2つに別れていたと感じる。さらに、現場は機能ごとの組織になっていて、各組織は指示をする人とは繋がっていても、現場の組織同士では繋がっていないこともしばしばだったと思う。故に、降りてきた指示に従って、脇目も振らず、自らの創意工夫を加えることなく、突き進む。現場の人たちがそんな日々を過ごしていたのを見て、とても勿体無いと感じていた。そこで、現場での気づきを瞬時に活用して、現場組織に横串を通して動けたらなんと素晴らしいだろうかと、色々と仕掛けてみたが、盤石に造られてきた機能別組織の壁に阻まれることもあったと思う。いわゆる縦割りだ。もちろん飛躍できた現場もあった。

未来を切り拓きたいと悶々としていると、キャッチーなタイトルが目に止まった。昭和99年。逆襲。すかさずクリックすると、少し嬉しくなってきた。プロジェクト参加は手挙げ制、経営計画も20代もふくむ全員でつくるという会社が紹介されていた。社長は「戦略ありきで人を集めるのではなく、社員が得意なことを活かしたい」話している。多様性の社会に向けて、多様なタレントの持つ能力を活かす。とても理に適った動きだと思う。明らかにモチベーションも高いはずだ。

「いきなり世界」というエイベックスの事例も素晴らしい。一世を風靡したエイベックスが更なる進化を遂げているのを見て胸が躍る。やはり芸能の世界に身を置いていると、他業界より世界の潮流を感度よく受け止め、素早く危機感を感じたのだろうか。韓国や米国で活躍した人の能力を取り込み、日本人がビルボードで首位を奪取した。やり方次第では、すぐに羽ばたける能力を、日本人が間違いなく持っていることを証明してくれたと思う。

農業で既得権を打ち破る取り組みも進んでいる。日本の農業は欧米と違って、狭くバラバラな土地で機械を入れにくく、コストが掛かる。変えられない常識とされていたところに、メスを入れている。離農を考える高齢の農家から次々と農地を譲り受け、面積を広げているのだ。固定資産税改革にまで踏み込み日本の農業の再生に取り組んでいる。これまで高コストの中、美味しさを突き詰めることだけに注力していた日本の農業も、スケールを生かした形へと転換するチャンスが到来した。

多様性に触れる日常や自然と触れ合う環境を梃子に、豊かな生き方を模索している若者も多くなってきた。前職はパン屋、鍼灸師、そして生産現場勤務。佐渡島でオフィスを開いた東京のITコンサルティング会社は様々なバックグラウンドの人を集めて、地域課題をITで解決する人材を育てている。オフィスの周りには課題が溢れ、現地現物で今学んだITスキルを投入することができる。産業遺産、伝統文化、そして自然は、佐渡島への愛着を生み、異次元のモチベーションを産むのだと思う。学びと実践のサイクルは改革を加速度的に進めるはずだ。

この記事には、徳島の遠隔事業の話題もあった。ある児童が言った「座右の銘にしたい言葉は、有言実行です」には「これだ!」という感覚が湧いてきた。構想を掲げ、それをやり切る。何十年か前には当たり前だったこの言葉は、多くの世代では諦めへと変わっていった。過疎化の進む小学校でこの児童がどんな経緯でこの考えに至ったかは分からないが、遠隔という技術を使って、閉じた世界から解き放たれたことが影響しているのではないかと感じる。好きなチャットルームに入って、生まれ育った環境が違う人と交わり、互いが興味津々で対話する。色々な可能性を感じたのではないだろうか。多様性を自分の中に取り込むことができたら、間違いなくこれからの時代に活躍する人材になってくれると考えている。

変わらないでいる。この瞬間はとても楽だと思う。内部の意見を取りまとめて、課題を抽出する。これもとても楽な活動だ。でも何も変わらず、数年後も同じことを続けているだろう。正直、そんなことに時間を使っていては勿体無いと思う。新たな希望を探す活動に時間を使うべきだ。外部にいる自分達とは違う価値観や能力を持った人と交わり、刺激を受け、力を借りる。変化を能動的に生む必要があるのだ。必要と言ったが、一度手をつけてみると、変わらない日常が続くことに比べて、実はとても楽しいことだと分かる。人は新たな刺激に驚き、目を輝かせる生き物だ。しかもこれは一方通行ではない。外部の人も自分達の内部がある。そこには変化のない日常があることも多い。お互い様だ。

そろそろ縦割りから抜け出し、自分の殻を打ち破り、身を置く環境を変え、能動的な交わりや変化を求める日常を楽しんでみたいと思う。日本人の持つこだわり、突き詰める力、思いやる心、自然を大事にする心。いくらでも改革や創造の種はある。反転攻勢の日本を始めてみようではないか。調和とともに進めていきたい。

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