技術を極めることの本質
PFNのような会社が日本に出てきたことを素直に喜び、また応援したい。
ただ、技術や研究の本質はこの記事とは違うところにある。
下記の記事で描かれている素朴でシンプルな技術指向は分かりやすいし、これに憧れる気持ちは分かるし、DeepMindなどとも似た方向性だと思う。
ただ私が過去34年、技術と研究をやってきた実感とは正直いって、かなりずれている。
技術は「長期と短期」「ニーズとシーズ」「応用と基盤」「個人と集団」「ソリューションと要素」というような、どちらに素朴に倒してもうまくいかない矛盾の中で、いかに二項対立を避けて、突破していくかが最も高度な「本当の技術」で、そこかできるかが技術者、研究者の真の力量であり、腕の見せ所だと思う。
実際に、私の属する研究組織には、これらの対立軸をマネジメントする長年にわたって創ってきた仕組みがいろいろとある。
おそらくPFNでも、経営陣は、日々そのような矛盾に向き合っていると想像する。サイバネティクスの草分けの一人、ロス・アシュビーは、システムが環境に適応するには、環境の複雑さと同様の複雑性を内部に持つ必要があることを示し「Requisite Variety」と呼んだ。PFNを含めた技術組織のおかれている社会や経済という複雑系に対応するには、上記の対立する矛盾を内部に持つ必要がある。
今回は、取材だからきれいなところだけを表出ししたのかもしれない。今後は、上記のような複雑性をマネジする切り口でもっと深い示唆に富む発信を是非期待したい。
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