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欧州の動きから日本が学ぶべきこと

2021年の1-3月期決算が出揃った。日経225構成銘柄の経常利益は前年同期比4.8倍、巨額利益を計上したソフトバンクグループおよび金融セクターを除くベースでの増益率でも2.3倍であり、安定した収益動向にあることが確認された。ただし、市況改善とそれに伴う在庫評価益の計上や事業売却益やクレジット損失引当金など一過性の項目などで説明できることが多く、全体としては個別銘柄の物色しか仕掛ける理由も見当たらない材料難の決算に終わった。

しかし、コロナ禍を乗り切ったのも束の間、一息ついている暇はなさそうだ。気候関連リスクは既に各セクターに対するゲームチェンジャーとなっているから、である。圧力が勢いを増している石油・ガスセクターを例に見てみよう。

圧力をかけるのは環境NGOのみならず。第一に、国際エネルギー機関IEA。5月に世界のエネルギーセクターが2050年カーボンニュートラル実現のための工程表となるレポートを公表した。ネットゼロ達成に至る過程に400以上の中間目標が示され、2021年に新たな化石燃料供給プロジェクト・石炭関連投資が停止とされた。2050年目標を達成するためには、年間のクリーンエネルギー投資を2030年までに約4兆ドルへ3倍にすることが求められ、エネルギー投資の総額を2030年までに5兆ドルにすることが必要、など、具体的なロードマップが策定された。いずれ石油は座礁資産になると言われるも、未だに原油価格が上昇すれば湾岸諸国のクレジットが安定するのは座礁資産になっていない証拠だ。どこで切り替わるのかが問題となるが、それが少しずつ見えてくることになる。

第二にオランダ裁判所が石油メジャーであるロイヤル・ダッチ・シェルに対し、温暖化ガス排出量削減を同社計画対比大幅かつ迅速に行うよう命じた。2050年までには実質ゼロとする排出量削減目標では生温いとして、2030年までに45%削減させる。一民間企業の計画が裁判沙汰となり、かつその判断に対して敗訴が言い渡されるとは。世の中の流れが急変している象徴的な出来事と言えるだろう。

第三に株主総会。エクソンモービルの株主総会では環境対策強化のための取締役二人が選任されたし、シェブロンでは二酸化炭素排出削減強化案が賛成多数で可決されるに至った。気候関連のリスクの取り入れ方次第では、株主総会をやり過ごすことが出来なくなったということを示している。

石油・ガスセクターはそもそも温暖化ガス排出量の多い、いわゆる非グリーンのセクターだ。それでも、EUタクソノミーでは目標値も設定され、企業がそれぞれ目標を掲げてESG経営に取り組む姿勢を見せていた。にも関わらず、相当の圧力がかかったこと、同セクターが例外なのではないことを踏まえておく必要がある。

事業会社に開示を促す気候関連財務情報開示タスクフォースTCFDは、欧州を中心に義務化され、範囲は米国にも及ぶ勢いである。TCFDに賛同する日本企業数は世界一だが、義務化されていない分、目標値に甘さが残る可能性が否定できない。様々な方面から圧力がかかった他国のセクター動向を眺め、すぐにも対策を取らなければ、土俵に乗り続けられなくなる可能性すらある。気候変動リスクをゲームチェンジャーと心得、一刻も早く対応することが全てのセクターに望まれる。例外はない。

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