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ハンガリーの少子化対策「女性よ、結婚したら8年以内に4人産め、産んだらまた働け」ということ。

2050年までに人口が減るワースト20という記事がありまして、日本はワースト9位だそうですが…単に減少率でランキングしてもあまり意味はないと思います。

ワースト20の顔ぶれを見ると、ほとんど人口の少ない国です。中には1000万人にも満たない国(東京より少ない)もあります。人口1億人以上の国は日本だけ。

実は、これこそが人口減少問題の本丸で、今後中国もインドも大幅に減少して、世界の人口はアフリカ以外全てが減少します。

それについては、このビジネスインサイダーの記事が出る半月以上も前に、「世界中が人口減少する」という記事を僕は東洋経済オンラインの連載で書きました。

この記事は、なぜか、翻訳もされていないのに、海外からの注目度が高く、さっそくアメリカとカナダからの取材がきています。具体的メディア名はあえて出しませんが、海外の大手メディアが注目するのに対し、日本のメディアからのレスポンスは現状ゼロです。

日本のメディアは、「人口減少は不可避」という事実を頑なに認めようとしません。誰に忖度しているのでしょう?


ところで、ビジネスインサイダーの記事で、人口減少世界のワースト14位にランクされているハンガリーという国があります。

このハンガリーが打ち出した少子化対策がユニークなので、ご紹介します。

簡単に翻訳しますと、40歳未満で初婚なら、1000万フォリント(日本円換算で約360万円=2019/10/15レート)を20年返済で国が無利子で融資してくれます。融資なので、返済する必要はあるんですが、第一子を産むと返済は3年間猶予されます。さらに、その3年以内に第二子を産むと、さらに3年間返済が猶予されるとともに、360万円のうちの1/3(120万円相当)の返済が免除されます。さらにさらに、第3子を産めば、残りも全額免除されます。

要するに、3人子ども産めば、貸した360万円は返さなくていいよってこと、あげたと同じことになります。ハンガリーにおける360万円は、平均年収の2.5倍とのことなので、日本価値にすると1000万くらいです。

まだ続きがあって、4人目を産むと一生所得税が免除されるそうです。

他にもいろいろとあるらしいのですが割愛しますが、とはいえ、条件があって、最初の360万円貸し付けに際しては、最低3年以上正規就労していないといけません。要は、3年間社会保障費を支払っていないとダメということで、学生のうちに働かず「できちゃった結婚」してももらえません(翻訳があやふやですが多分そういうこと)。また、結婚して360万円借りても、5年間子どもができなかったら即効返済しないといけなくなります。なんか子ども産めなかった罰みたいです。


こちらの現地メディアの記事によれば、

モデルケースとして、「大学出て、3年間正規で働き、結婚して8年間で4人を子どもを産んだ場合、最大で10年間で総額約2000万円相当の恩恵に預かれる計算らしいです。

ちなみに、これだと既に子どもを産んでいる40歳以上のお母さんには何の得にもならないみたいに見えますが、4人以上出産した人の所得税免除は既に4人産んだ人も含めて全てに適用するようです。


ハンガリーの合計特殊出生率は日本と同じ1.4です。こういう政策をハンガリーがやらざるを得ない背景には、「少子化と人口減少はなんとかしないといけないが、移民は絶対嫌だ」というのがあるとのこと。

確かに、日本の少子化についていろいろ言うと、すぐ「フランスを見習え」という出羽守が出てきますが、フランスの出生率をアップさせたのは移民の子であって、フランス国籍同士の出生数は日本同様減り続けています。もっと言えば、移民の子を合わせてもフランスの出生率はここ4年連続減少中です。

移民に頼るべきではないというハンガリー政府の考え方には賛成します。


ですが、この少子化政策、一見、良さげに見えますが、どうなんでしょう?

経済的理由で、3人目、4人目を諦めざるを得ないお母さんにとっては福音なのかもしれませんが、これはあくまで対象は現在40歳未満の未婚女性です。360万円を手に入れるために、8年間で4人を産むというノルマを課せられるようなものじゃないですか?

一生所得税免除といっても、それって結局4人産んだあと、子育てするというより働かないと恩恵に預かれないわけで、「女性よ、働け、沢山産め、4人産め、産んだらまた働け」と言ってるように思えるんですよね。

それこそ、以前どこかの政治家が発言して炎上した「女性は産む機械」と同じじゃないか、と。

そうまでして人口減少って防がなきゃならない問題だとは思わない。

お母さん及びお父さん、そして家族の幸せのために子どもが増えるというのはいいと思うのですが、こういうやり方ってどうも「国家による人間の家畜化」を見てるようで、僕はすっきりしません。

同時に、これでは、子どもが欲しくてもできない夫婦のケアが何一つないのでは?と思います。むしろ、子を産むことこそが人間としての正義であり、産めない者は悪である、という無用の対立構造を生むのではないかという危惧があります。

みなさんはどうお感じになりますか?


このハンガリーの政策ですが、短期的には出生数は回復するかもしれませんが、すぐに元に戻ると思います。人口減少は絶対に回避できないのですよ。人類の人口転換メカニズムの前では、意志も金も効果を発揮しません。


ちなみにこのニュースでハンガリーのこの件が紹介されているのですが


これ明らかな間違いね。GDPの5%ではなく、政府支出費の中の家族関連(子供手当など少子化対策関連)比率が5%であって、GDP比ではハンガリーも2017年で2.7%。過去一度も5%を超えたことなどない。大体世界一位のデンマークが3.4%なのに5%なんてあり得ない。この山田某っていう教授は例の内閣府の少子化対策委員会で「壁ドン練習しろ」とか戯言行ってた会議の座長ね。いい加減適当なこと言わないでほしい。


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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。