出戻りという言葉が嫌いだ。という話
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出戻りという言葉が嫌いだ。という話

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

人材不足という声をよく聞くようになりました。理由としては、少子高齢化に伴い労働人口そのものが減少に向かっていること、また今必要とされるスキルを持つ人材が足りない(需給ギャップ)ということなどが挙げられるでしょう。

また、終身雇用の崩壊と共にキャリアを主体的に構築しようとする方々も増えました。リスクモンスター(東京都中央区)が20~60代の社会人男女を対象にした調査によると、転職の経験がある人は56.6%。経験がない人の43.4%を上回り、2人に1人は転職を経験していることが分かりました。

もはや転職が当たり前の時代において、以前勤務していた会社に再度入社する事例も増えてきています。

起業や出産・育児で離れた社員の「出戻り」を促す動きが活発になっている。以前は一般の中途採用と同様の扱いだったが、すかいらーくなど受け入れ制度を整える企業が相次ぐ。出戻り社員は仕事内容や社内事情を熟知した即戦力として扱える。一度退職した社員に「裏切り者」とレッテルを貼らず、積極的に受け入れることが、人手不足を乗り切る鍵になる。

ここで気になるのが「出戻り」という言葉です。辞書を引いてみると、以下のような意味があるそうです。

1) 一度出かけて、途中でもとへ戻ること。
2) 嫁いだ女性が、離婚したり、夫に死別したりして生家に戻ること。また、その女性。
出典:デジタル大辞泉(小学館)

なぜ再入社のことを「出戻り」というのか。背景には、まさに日本型雇用が生み出した文化があります。日本型雇用制度は3つの要素から成り立っており、(1) 終身雇用 (2) 年功序列 (3) 企業別労働組合 です。特に1と2について、今でも根強く職場に影響を及ぼしているでしょう。

これって何かに似ているなと思ったことがあります。
そうです、嫁入りです。

女性が男性の家に嫁ぐ、(嫁ぎ先の義父母を含み)一生尽くすこと。離婚は不名誉。かつて、そのような時代がありました(今でもそう考えている方は存在しているとは思いますが)。まさに就社して定年まで勤め上げること、転職なんて裏切りだ、という考え方と共通点がないでしょうか。

決してそれが悪いと言っているわけではありません。本人が望んで1社で楽しくキャリアを積んで、最後まで勤め上げること。それはとても価値のあることだと思います。しかし、本人が望んでなく、仕方なく我慢と努力を繰り返しているのだとしたら。本来の約束が果たされず、制度だけが残っていたとしたら、それはアンフェアでしょう。

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どうも「出戻り」という言葉は過ぎ去った昭和の文化、滅私奉公を彷彿とさせるため、個人的には嫌悪感すら抱く言葉です。なんでだろうと考えると、自分自身が「嫁入り」も「出戻り」も経験しているからかもしれません。

個人的な話で恐縮ですが、わたしは古い農家の女系一家の長女の方と結婚しました。こちら側は核家族の二男でした。結婚が具体的になったときに先方から言われた条件が、なんと婿にくること。当時「今の時代にそんなことがあるのか!?」と衝撃を受けた記憶がありますが、結局わたしが向こうの籍に入り改姓をし、結婚と相成りました(なので村上は旧姓です)。

出戻りについては、2000~2011年まで勤務していたYahoo! JAPANを退職し、2012年に経営陣として再入社をした経験があります。実は当時のヤフーは経営方針として「出戻り禁止」というポリシーがありました。ですので私が戻った際には社員が驚きでどよめいたと聞いています(おそらく出戻り1号です)。経営変更を象徴するような出来事の1つでもありますが、以降は積極的に出戻りも歓迎し、今では「モトヤフ会」という会社公式のアルムナイ組織も運営されています。

現在の会社では出ていくことも戻ることも、ポジティブに歓迎する文化があります。会社としてひとりひとりのキャリアに真剣に向き合った結果、(社内でステップアップする適切なポジションが用意できない等で)それが社外になることがその時点でその人にとってベストであるならば、それは応援すべきことであるという共通認識があります。

ですので、社内の異動も社外への転職も同じ「Next Play」(次の役割)と言います。例えば、次のような形でよく使います。

He/She has decided to pursue his/her next play outside of the company,
(彼/彼女は次の役割を会社の外で追い求めることを決めました)

出戻りについてはそもそも頻繁にありますので特に強調されることはありませんが、入社時の紹介のときに「boomerang employee」(ブーメラン社員)と言われることはありますね。

前述した通り、出戻りはそもそも日本型雇用との相性はよくありません。その時のポジションに求められる役割が明確である、ジョブ型雇用のほうがより機能しやすいでしょう。日本でも早く「出戻り」という言葉がなくなるくらい、労働市場がなめらかになっていくといいなと願っています。

現在は大変革期の真っ只中です。今後個人としてどのようにキャリアを捉えていけばよいかを体系的にまとめた本が以下にあります(おかげさまで発売以降、キャリアカテゴリのベストセラーに)。ぜひ一度手にとっていただければうれしいです。


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タイトル画像提供:Zenzen / PIXTA(ピクスタ)

#日経COMEMO #出戻り社員に期待すること

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