2019年の株式市場を振り返る〜「株式市場」は「経済の鏡」について考える〜
今年の株式市場の終わり方に対して、驚いた人は少なくないと思います。日本の株式市場の基調を示すのに活用される日経平均は、2019年12月30日に約29年ぶりの高値で取引を終えました。今回は株式市場と経済の関係について考えていきます。
*株価とは何か?日経平均とは?
そもそも株価とは、その企業が将来稼ぎ出すだろうキャッシュフローの現在価値と定義されます。そして日経平均は、日経平均への組み入れ諸条件を満たした日本を代表する225社の株価基調を指数化した物です。つまり、日経平均とは組み入れ企業が将来的なキャッシュを稼ぐ力を、投資家がどう評価しているかの結果とも言えそうです。その日経平均が約29年ぶりの高値ということですが、指数に組み込まれている企業は将来に対して強気企業ばかりなのでしょうか?大企業製造業で業績下方修正を発表した企業が多く、そうとはいえない状況です。また米中通商問題から企業業績の先行きも見えにくく、日本のGDP成長率も伸びが鈍化している状況です。この流れをみても、株式市場が企業業績や景気の鏡として違和感ががあるようにも見えます。ただし、あくまで日経平均を組み込まれているのは大企業が中心であり、日本のマクロな経済全体の流れと乖離があっても不思議ではないです。では、上場企業全体で見ると、どうなのでしょうか?
*株式市場と日本経済の産業構造は違う!?
日本の上場企業は時価総額100億円未満の企業が多く、上場企業全体の約4割を占めます。これらの多くは中小企業です。そして、日本企業の約9割は中小企業です。では株式市場全体の動向は、経済の鏡として機能しうるのか?大和総研金融調査部が2010年のレポートにはこう報告されています。日本経済全体と経済全体の産業構造が違うと…。私達の多くは第三次産業に従事している人が多く、製造業を含める第二次産業に従事する人の比率は年々低下しています。GDPに占める割合も7割以上が第三次産業。しかし、株式市場の時価総額過半数を占めるのは、製造業です。この辺りも、株式市場の基調と、身の回りの経済動向との違和感に繋がるのかもしれません。
1970 年代以降は第 三次産業が徐々にそのウェイトを高めており、現在は第三次産業が GDP の約 7 割を占めている。 一方、株式市場の方をみてみると、第三次産業は東京証券取引所の市場第一部で時価総額の 4 割強を占めるに止まり、そのウェイトはむしろ 1990 年代半ばから低下している。
2020年も、こうした経済と株式市場の違和感は続くかもしれません。引き続き資本市場をウォッチしながら、みなさまに恩返しができるよう精進してまいります。
今年は、みなさまのおかげで沢山の機会やご縁と出逢えました。出版二冊、社外取締役、新番組レギュラー、学術研究の進展、データ解析分野の仕事と、ご縁に感謝です。恩返しができるよう2020年も精進してまいります。
応援いつもありがとうございます!
崔真淑(さいますみ)
*コラムのイラストは崔真淑著「30年分の経済ニュースが1時間で学べる」(大和書房)より。
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