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サステナビリティ人材に求められる10の要素

みなさんこんにちは。シェルパ・アンド・カンパニーの中久保です。様々な業界でサステナビリティ人材が不足する中、弊社においても、サステナビリティに関わる人材の採用や育成を進める中で、改めて「サステナビリティ人材とは何か」という問いについて考える機会が増えています。

本記事では事業会社や金融機関などで、企業のサステナビリティを向上させる「サステナビリティ人材」に共通して求められる主な要素を10種類挙げてみたいと思います。これらの要素を洗い出すに当たっては、私自身の評価機関やコンサルティングファーム等における経験や、金融庁作成の人材育成スキルマップを参考にしました。

知識・実務経験が求められる要素

1. サステナビリティ

言うまでもありませんが、サステナビリティが何であるか、そしてそれがなぜ求められるようになったのかを理解することは、サステナビリティ人材としての出発点です。一方、個別のサステナビリティ課題は非常に多岐にわたり、一度にすべてを理解することは不可能です。まずは全体像を把握しておくことが、今後の知識習得や実務経験を積み重ねる上での基盤となります。
参考になる資料例:JPX-QUICK ESG課題解説集/JPX・QUICK

2. サステナビリティ規制・ガイドライン

サステナビリティに関連する規制やガイドラインは非常に多岐にわたりますが、特に自分の業界において重要なものを把握し、具体的に何を対応しなければならないのかを理解することが必要です。ただし規制やガイドラインには膨大な内容が含まれているため(例えば、欧州サステナビリティ報告基準のESRSには約1200のデータポイントがあります)、まずはその概要を理解することが優先されます。これにより、実務での対応が円滑に進められるでしょう。
参考になる資料例:ESG情報開示実践セミナー/JPX

3. サステナビリティ情報開示の手法

事業会社であれば、自社のサステナビリティに関する情報を適切に開示し、投資家をはじめとしたステークホルダーに伝えることが重要です。一方で、金融機関では自社の情報開示に加えて、投資先企業の情報開示を評価することが求められます。例えば、マテリアリティ(重要課題)の特定やKPIの設定など、サステナビリティ情報開示の手法を理解し、これを実務に反映させることが必要です。
参考になる資料例:ESG情報開示実践ハンドブック/JPX・TSE

4. サステナブルファイナンス

サステナブルファイナンスの理解は、金融機関におけるサステナビリティ人材にとって欠かせないスキルです。しかし、事業会社やその他の団体で働く場合にも、重要な知識となります。サステナブルファイナンスの基本原則、イニシアティブ、商品などを理解することで、投資家が求めるポイントを把握でき、自社の資金調達や持続可能な成長に結びつけることができます。
参考になる資料例:サステナブルファイナンスに係る資格試験・研修等の事例/金融庁

5. ESG評価機関

特に上場企業においては、ESG評価機関による評価に対応する必要が出てきます。そのため、各評価機関を理解し、適切に対応することが重要です。また、金融機関としても、どのESGデータ商品を活用するかを判断するために、各評価機関の特徴や評価項目を理解することが求められます。具体的には、総合的なESG評価であるMSCI ESG RatingFTSE Russel ESG ScoresS&P Corporate Sustainability Assessment (ESG Scores) ・Sustainalytics ESG Risk Ratings、あるいは環境に特化したCDPなど、多くの評価機関が存在し、これらの評価項目を知ることは1.のサステナビリティに関する知識の全体像を知ることにも繋がります。

6. バリューチェーン全体における事業活動

サステナビリティに関する基礎的な事項を理解したら、次に各課題や論点が自社の事業活動にどう当てはまるかを特定する必要があります。そのためには、まず企業の事業活動全体を把握し、バリューチェーンの段階ごとにどのようなサステナビリティ課題が存在するかを想起できることが大切です。また、各課題に対してどの部署が対応するべきか、どの部門と協力が必要かを特定するためにも、企業活動全般への理解が不可欠となります。

7. 経営戦略

サステナビリティの課題は多岐にわたり、理解が深まるほど対応すべき事項が次々と浮かび上がってきます。そのような状況では、何を優先すべきか迷うことも少なくありません。この際、4で述べたマテリアリティの考え方に基づき、財務的に重要な事項や、社会・環境に大きな影響を与える事項を優先することが基本です。ここで重要なことは、各サステナビリティ課題について企業の経営戦略と整合性を持たせ、統一されたストーリーとして企業価値向上に結びつけることです。そのためには経営やファイナンスの理解が役立ちますが、まずは企業の戦略を理解することが出発点となります。

その他の要素

8. 情報収集力

2.で述べたサステナビリティ規制・ガイドラインを筆頭として、サステナビリティ分野では常にキャッチアップすべき情報が膨大に存在します。これらの情報を継続的に収集し、自社に関連するものを選別し、さらに具体的な対応につなげるスキルが求められます。

9. 社内外の関係者との連携

サステナビリティは、自社だけでなく、幅広いステークホルダーとのつながりを考慮する必要があります。そのため、各ステークホルダーとの対話が不可欠です。また、規模の大きい課題には他社との協力や業界イニシアチブへの参加が求められることもあります。さらに、社内においても、6.で触れたように複数の部署が関わるため、協力体制を整えて対応することが重要です。

10. 発信力

最後に発信力を挙げたいと思います。サステナビリティはまだ比較的新しい分野であるため、単に与えられた課題をこなすだけでなく、積極的に情報発信や関係者との議論を行い、新たに発見した課題を共有することが必要です。また、ガイドラインの制定などに際して、業界の意見形成に参画することも、自社のみならず、社会全体のサステナビリティを推進するために重要な要素となります。

チームで実現するサステナビリティ

いかがでしたでしょうか。サステナビリティ人材に求められる主な要素を10種類ピックアップしてご紹介しましたが、全てを一人で完璧に身につけるのは難しそうですね。金融庁も指摘しているように、個人で全てのスキルを習得するのは容易ではなく、組織やチーム全体でスキルを補完し合うことが不可欠です。

このような要素を各チームメンバーで持ち寄り、それぞれが役割を果たすことで企業価値を向上させ、ひいては社会全体のサステナビリティ推進に貢献できるチームを組成していくことが、今後ますます重要になるのではないでしょうか。


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