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キュレーションは終わり、AIが情報を最適化する世界がやってくる

佐々木俊尚

TikTokのショート動画が全盛期を迎えているようです。グーグルもこれに対応し、「YouTubeショート」という最大60秒の短い動画を共有できるサービスをスタートしています。

TikTokとYouTubeショートの特徴は、ただ「短い」というだけではありません。TwitterやFacebookのようなSNSでコンテンツを観るのと違ってタイムラインが存在せず、ただひたすら自動再生が続いていく。

フォローとフォロワーの関係がない世界

つまりフォローしている誰かから動画や記事をおすすめされるというSNSの作法ではなく、アルゴリズムをぶん回して「たぶんこの人はこういう動画を観たいのだろう」という予測をもとに次々と動画を送り込んでくるのです。

そのあたりの変化は、この記事が非常にわかりやすく的確だと思います。

SNSでのフォローとフォロワーの関係は、「情報をシェアする」という点で大きな意味がありました。インターネット上には膨大な情報があり、日々無数のニュースや記事や動画が流れている。玉石混淆のなかから良いものを選び取るのは難しく、だから良質な記事をシェアしてくれる人を信頼し、それらの人をフォローして情報を受けとる。

この構図をわたしは2011年の著書『キュレーションの時代』(ちくま新書)で描きました。2010年代は良くも悪くも、SNSで情報が流れるというこのキュレーション的な構図が定着した時代だったと思います。

「悪くも」と書いたのは、必ずしも良質な記事ばかりがシェアされ広まったわけではなく、逆に陰謀論や極端なイデオロギー党派性に基づいたあまり質のよくない記事も、キュレーションによって拡散していったという現実もあったからです。

AIがすべてを最適化していく

しかしTikTokやYouTubeショートには、人間のキュレーションが存在しません。プラットフォーム側のアルゴリズムによって、シェアされるコンテンツが決まるのです。

ネット企業のプラットフォームビジネスは、元をただせば古い時代の垂直統合を破壊し、コンテンツと発信者を水平分離していくというものでした。1990年代まではニュースは新聞社やテレビ局が制作から紙や電波に載せるまでを垂直統合し、音楽はレコード会社がミュージシャンの囲い込みからCDにプレスするまでを垂直統合し、映画は映画会社が映画館を傘下におさめて垂直統合していたのです。

しかし2000年代にニュースはヤフーニュースやスマートニュースで見られるようになり、音楽はYouTubeやSpotifyで配信され、映画はAmazon Prime VideoやNetflixで観られるようになりました。「作る者」と「配信する者」が水平に分離したのです。

プラットフォームは新たな段階に入っている

ところがAIの登場によって、この構造がふたたび変化しようとしています。プラットフォームは制作と配信をただ水平分離しただけでなく、AIによって配信を最適化することによって、「新たな垂直統合」とでも呼べるような形へと変化してきているのです。

人びとが何を求めているのかをAIが緻密に分析し、個人個人にあわせてアルゴリズムで最適化されたコンテンツをピンポイントで人びとへと送り込む。そういう統合された世界がやってこようとしています。現時点ではそれはTikTokのような面白く暇つぶしの動画サービスでおこなわれているだけですが、いずれはこの新たな垂直統合がニュースや報道などの世界にも入ってくるかもしれません。

それがジャーナリズムにいったいどのような影響を与えるのか。今後かなり大きな議論になっていくのではないかと私は予想しています。

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