「メルケルなきEU」が背負う理想主義の後始末
いよいよ「メルケルなきEU」が幕を開けようとしています。2005年にドイツ首相の座に就いたメルケル首相の歴史は、そのままEU(欧州連合)の経験したバブルとその破裂、欧州債務危機(そしてその後始末)の歴史と重なります。もっと言えば、メルケル首相がCDU党首に就任したのは2000年4月ですから、メルケルCDU党首の歴史は1999年1月からスタートした共通通貨ユーロの歴史ともほぼ重なります。名実共にEUの礎を築いた政治家の1人でしょう。
ですが、近年のメルケル下でのドイツは「親しい友人」をとんと失ってしまったように見えます。緊縮路線をめぐって関係が悪化したギリシャを筆頭とする南欧はもとより、移民問題をめぐっては東欧、EUの運営方式をめぐっては裕福な沿岸諸国(デンマーク、フィンランド、スウェーデンなど)ともぎこちない関係が見られ始めています。こうして今の欧州大陸はドイツを中心として縦・横・斜めに亀裂が走っている現状が指摘されます。その他、ロシア、英国、米国との関係は語るまでもないでしょう。
後継者はメルケル首相の過度な人道・理想主義の後始末をしつつ、英国というバランサーを失ったEUの建て直しを図らねばなりません。並大抵の政治家では務まらない所業でしょうが、まずはメルケルを「つなぎ」としておきつつ、2021年に向けてその「顔」いつ、どうやって挿げ替えるかを考える局面に入ります。