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世界にトビ立て、日本の焼き鳥文化

「鳥貴族」が世界進出

庶民の味方で格安で美味しい焼き鳥が楽しめる居酒屋フランチャイズ「鳥貴族」が本格的にグローバル事業に乗り出す。まずは米国で直営店を出し、同時に台湾と香港に出店し、アジアでの展開を広げていく方針だという。
日本の飲食フランチャイズの世界展開も珍しいものではなくなってきた。古くは世界に「牛丼(Beef Bowl)」文化を創った吉野家を筆頭に、ラーメンの一風堂、焼き肉の牛角、うどんの丸亀製麺など、多くの飲食ビジネスが世界進出し、成功を収めている。もちろん、成功事例ばかりではなく、世界進出したが思うように成果が出なかった例もある。
しかし、日本の飲食ビジネスは世界で戦うポテンシャルを持った事業であることは疑いようはない。

日本食文化の世界開拓という視点

日本の食文化の多くが世界に広まっているが、なぜか「焼き鳥」はなかなか世界に広まらなかった。海外からのゲストが来た時に、「焼き鳥」は高評価を得やすいインバウンド受けが良い料理にも関わらずだ。
加えて、「肉の串焼き」という料理は様々な国でみられる食文化であり、世界展開するときの文化的下地もあるといえる。インドネシアのサテ、中国の羊肉串、トルコのシシケバブ、米国のBBQなど、多様な食材で各国の食文化を反映したスパイスやタレを生かしたメニューがある。
日本人の美食に対する思いの強さと貪欲さは、日本に移住した外国人が驚くことの1つだ。テレビをつけると、なにかしらのグルメを題材とした番組がやってるのは信じられないという言葉を何度も耳にしたことがある。
日本人の美食に対する貪欲さは海外の食文化を取り入れることにもオープンだ。変化を好まない傾向の強い日本人だが、美食に関してだけは逆といえるだろう。変化も外国文化も大好きだ。カレーを代表として、ケバブにタイ料理、シュラスコなど、そのまま日本の食文化に定着しているものも多い。
このベクトルを逆方向に向けて、日本の優れた食文化を戦略的に世界に広めることはより力を注ぐべきだろう。また、せっかく異文化が混じったのだから、そこから生まれた日本文化とのフュージョンした食文化のイノベーションも期待したい。
欧州を中心とした美食文化では、近年、移住した外国人から持ち込まれた異国の食文化と母国の食文化をフュージョンさせることで生まれた革新的な料理が人気だ。

日本の鶏肉が秘めるポテンシャルの大きさ

日本の畜産では、和牛にばかり焦点があてられがちだが、豚肉や鶏肉の品質も世界と比べると非常に高い水準にある。特に、鶏肉のもつビジネスとしてのポテンシャルは高い。宗教的な理由で鶏肉を忌避する文化を持つ国はほとんどなく(食肉とする過程で特殊な処理が必要となることはあるが)、鶏肉のヘルシーさと経済動物としての生産性の高さから、世界的に鶏肉の消費量は増えている(参考:USDA「World Markets and Trade)。

加えて、世界の鶏肉の消費量の中で、日本の消費量はわずか2%にしか過ぎない。この消費量はタイとほぼ同じだ。タイの人口は約7000万人のため、国民1人当たりの鶏肉の消費量は日本よりもタイの方が多いことになる。
ビジネス機会としての鶏肉のポテンシャルは大きい。

焼き鳥のほかにも、日本から世界に売り出すことができる食文化はまだまだ多くあるだろう。最近は、インバウンド観光客に「牛かつ」が非常に人気のある名物となっている。人気過ぎて、日本人がなかなか食べることができないくらいに混んでいる。「蕎麦」の持つポテンシャルも、まだ世界で広められる潜在能力の高さを感じる。ヘルシーさだけではなく、「縁起の良いときに麺類を好んで食べる」という文化をもつアジア圏では、日本における「クリスマスのケンタッキー」的なポジションも狙えるかもしれない。

世界展開をにらんだ時に、日本の飲食ビジネスが持っている潜在能力は高い。内向き志向になっている暇などなく、鳥貴族のように世界に打って出る企業がこれからも増えてほしい。

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