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創刊163年の米老舗メディア『アトランティック』でも起こりうるリストラと有料ニュースレター市場の可能性

新型コロナウィルスに関しての優れた報道で注目を浴びていた米国の老舗メディア『アトランティック(The Atlantic)』が、社員の17%にあたる68人のレイオフを実施することが明らかなりました。国内ではあまり知名度はないものの163年の歴史を持つ文芸誌で、新型コロナウィルスに関する報道に対する高い評価からここ数ヶ月で記録的な有料購読者を獲得していただけに、大きな驚きをもたらすニュースでした。

リストラの直接のきっかけとしては、大幅な広告費の削減、そしてライブイベント事業が全て中止となり、バーチャルイベントからでは同様の収益を上げることが難しい故の決断だったとのことです。リストラの対象はイベント部門、セールス・マーケティングを中心に行われ、ビデオ制作部門11人を含む編集部門も22人が削減の対象とのことです。

昨年秋にスタートしたばかりの有料サブスクリプションサービスには今日までに合計16万人の登録があり、そのうち新型コロナウィルスが深刻になり始めた3月以降の購読者は9万人という記録的な急成長をもたらしていました。ウェブサイトへのアクセスも3月には月間8,700万人もの訪問者と、急増していただけに大きな衝撃を受けている人が多そうです。

既にメディア業界における一時休暇、給与カット、リストラは深刻な状況になっていて、ニューヨーク・タイムズが5月1日時点でカウントした数値では約36,000人を記録しているそうです。

世界中のあらゆる地域や業種で不況、リストラが進む中、個人的にも最近愛読していたメディアで起きた厳しい現実に遭遇し、胸が痛める出来事でした。

そんな中、可能性を感じさせてくれる取り組みを先日目にしたのでご紹介したいと思います。ニュースレター有料購読配信プラットフォーム 「Substack (サブスタック)」共同創業者によるブログ投稿ですが、自分が情熱を持てるニッチなトピックについてのニュースレターを配信することで、生計を立てることができるライターが多く生まれている、というお話です。

元ニューリパブリックの記者が始めた気候変動問題を扱うニュースレター 「Heated」 中国の専門ニュースレター「Sinocism」* など、月額5〜10ドルの有料課金で表現の場所を創り出すことに成功している元ジャーナリストが数多く現れ、社員としてメディアに所属していた時よりも収入を得ている人がいる、という内容です。現状有料課金をしているSubstack利用者は全体でも10万人程度とのことですが、これが何十万人、何百万人となる世界が来るのか、とても気になるトレンドです(国内においてはnoteでの有料課金サービスが近いかもしれませんね)。

有料ニュースレターの発行は、今回リストラという厳しい状況を経験している数千人、何万人の人全員が選択する手段ではないかもしれないとは思います。ただ、今後生活を維持しながら自分の経験を活かして文章を書いたり表現することが可能になる時代の到来も強く感じます。

ともあれ、一日も早く事態の収束が訪れることを心より願ってます。

*以下関連する過去の記事です。よろしければご覧ください🙂

Photo by Charisse Kenion on Unsplash

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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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