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ChatGPTを活用して「防災を生活に浸透させるマーケティング企画」を考えてみた
4月からマーケティング力で社会の重要指標を動かせるかの実験プロジェクトに取り組んでいます。
このプロジェクトでは「どうすれば防災の生活浸透率を100%にできるか?」をテーマに、調査・分析・企画づくりに取り組んでいます。
進める中で、社会課題を解決するためのChatGPT活用可能性も見えてきていていて、とても面白くなってきました。
調査・仮説・企画の一連のプロセス、その中で考えた防災やChatGPTの可能性についてをお伝えできればと思います。
1. 顧客を理解する
前提として、防災対策は、熱心に取り組んでいる人が増えてきていますが、「未対策の人」が存在しています。
ヒアリングやSNSの口コミ調査をする中で、防災未対策の人たちは「大規模な災害が起こっても何とかなる…」と考えていることがわかってきました。
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課題定義
「防災未対策の人は、正常性バイアスが働いており、論理的に必要性を訴えるだけでは動かない」
2. 顧客を動かす仮説を考える
では、どのように課題にアプローチをできる良いか?
課題に対する仮説を考えていきます。
ヒントは災害を乗り越えた地域にあるのではないか?
防災が生活に浸透している地域・災害を乗り越えてきている地域からヒントを得ると良いのではと考え調べてみました。
調べていくと、伝承・お祭りなどを通じて、災害時の最適な行動を促していることがわかってきました。
有名なのは、「津波でんでんこ」です。
津波てんでんこ(つなみてんでんこ)は、津波からの避難についての標語ないしは合い言葉である。
「てんでん」とは、「てんでに」や「てんでんばらばらに」という意味で、「津波てんでんこ」とは、薄情なようではあっても、「てんでんばらばらに急いで早く逃げよ」という、津波から逃れるための教えである。
三陸地方では昔から「津波起きたら、てんでんこだ」と伝えられてきた。
問いと仮説をこのように整理をしました。
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論理的に防災の重要性・必要性を啓蒙しても動かない層を動かすためには、
・無意識に働きかけるコミュニケーションが必要である
・伝承・お祭りのような「物語の力」を使うことがヒントになる
と考えました。
3. 仮説を発展させるヒントを探る
参考事例:物語の力で防災意識を無意識に浸透させているケース
既に取り組まれていることで参考になる事例を調べていきました。
その中で、防災小説という素晴らしい取り組みを知りました。
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とても素敵な取り組みです。
防災小説の取り組みから、このような問いに整理をしました。
防災小説のような取り組みを、誰でも、簡単に作成して、みんなで共有するような文化をつくれないか?
ここまでの、
・顧客の理解・定義
・仮説づくり
・参考事例の分析
・問いの定義
を踏まえて、企画コンセプトに落とし込んでいきます。
4. コンセプト・アイデアをつくる
このようなコンセプト・アイデアを考えてみました。
先ほどの問いと、複数のトレンドを掛け合わせながら発想をしていきます。
コンセプト
-ChatGPTと防災小説
-もし文豪が防災をテーマに短編小説を書いたら?
このコンセプトを、いま話題のChatGPTを活用すれば、「防災小説を、誰でも、簡単に作成する」ことができるのでは!?
と考えました。
イメージを深めるためにコンセプトをビジュアル化
Canvaを活用しながら、コンセプト・アイデアをビジュアル化していきます。アイデアを即形にできるのは、本当に便利な時代です。
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早速、ChatGPTに聞いて、どのような答えになるか検証していきます。
太宰治の文体で、防災対策の必要性を伝える短編小説を書いてください。
そうすると…
太宰治の人間失格を思い出させてくれる小説を書いてくれました。
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かなりの手応えがありました…ChatGPTの物語を紡ぐ力すごい…
他の文豪も試してみます。
続いて、変身で有名なカフカの文体で書いてもらいました。
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ワークショップの中でコンセプトテストを実施したところ、共感・新規性・参加意向も高い…と確認することができました。
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4. コンセプトを発展させる
ChatGPTを活用すれば、防災小説を、誰でも、簡単に、工夫をしながら創ることができる、かつ、みんな面白がれる!
ことがわかりました。
さらにコンセプトを発展させるアイデアを考えてみます。
文豪シリーズが成り立つのであれば、SFシリーズもつくることができるのではないかと考えました。
アイデアを思いついたら、即ビジュアル化してみます。
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次は、一九八四年で有名なジョージ・オーウェルの文体でChatGPTに防災テーマで書いてもらいました。
予想通り、監視社会の闇と防災を組み合わせて小説を書いてくれました…
タイトル: 「避難の監視者」
近未来の日本。繰り返される自然災害によって、国民は防災対策を社会や生活の一部に根付かせていた。政府は都市を再設計し、厳格な防災基準を適用。さらに、全国民に防災意識を高める教育を施した。
しかし、この平和な社会には秘密が隠されていた。政府は、避難行動の監視者と呼ばれる職業を創設し、国民の防災行動を監視していた。避難行動が適切でない者には罰則が科せられ、過剰な監視が行われていた。
主人公・リョウは、避難の監視者として働く若者。彼は政府の防災対策に疑問を感じ始め、同志と共に防災対策の是非を問う秘密組織を結成する。彼らは、政府の過剰な防災対策が国民の自由を奪い、社会に恐怖を植え付けていることに危機感を抱いていた。
組織は、防災意識が社会や生活に根付いた形で実現できる方法を模索。その過程で、リョウたちは同じ志を持つ市民や識者と出会い、新しい防災対策の提案を試みる。その提案は、国民に防災意識を持つよう促しつつ、自由を奪わない形で防災対策を実施する方法だった。
物語は、リョウたちが新たな防災対策を実現するために、政府と対立し、社会を変革する闘いを描いていく。最終的には、彼らの努力により、防災意識が社会や生活に根付いた形で実現し、国民の自由が保たれる未来が描かれる。
アイデアの骨子が固まってきたので、社会に広げていくイメージをつくっていきます。
5. コンセプトが広がり社会が良くなるイメージを可視化する
ChatGPTは今までスキルがないとできなかったことを可能にしてくれています。プロンプトを工夫すれば、誰でも小説をつくれる時代になったメリットを、社会課題の解決や、個人の創造性・想像性を発揮するために活用できると良いと考えています。
コンセプトを広げたいイメージ
1. ChatGPTを使って、それぞれが防災をテーマにオリジナル小説をつくって発信をする(防災未対策の人も好奇心をもって取り組める)
2. 発信した物語の背景にあることを家族や友人と話し合う
3. 無意識に防災の重要性や必要性を理解する
4. 結果的に防災対策(防災グッズを購入したり、ハザードマップを確認したり)をするようになる
イメージを可視化してみました。
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これで
1. もし文豪が防災をテーマに小説を書いたら?
2. もしSF作家が防災をテーマに小説を書いたら?
の企画シリーズが出来上がりました!
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ここまでが、防災を生活に浸透させるための企画コンセプトをつくってきている流れのご紹介でした。
まとめ+ChatGPTの可能性について
AIが人の仕事を奪う、リスクがある…といったネガティブな要素が語られることが多いと感じています。
もっと「AIで社会課題解決にどう役立てられるか?」の可能性についての議論が生まれると良いと考えています。
生成型AIによって、今までとは違った方法で社会課題解決のアプローチに取り組めるようになってきているのは間違えありません。
今回にご紹介したChatGPTで防災をテーマに小説を書く取り組みも、賛否両論ががあるかもしれませんが、社会課題とAIの関係性を考える一つの取り組みにできたらと捉えています。
この後のプロジェクトでも、AIによって希望をつくったり、社会や人が抱える課題を解決する可能性を探っていきたいと思います。
また、ぜひ皆さんも、プロンプトを使ってオリジナルの防災小説を考えてみてください。
※防災以外のテーマでも応用できるはずです
下記の条件で、短編小説を書いてください
テーマ:[興味がある社会課題を記載]
文体:[文豪・作家名を記載]
代表作品:[作品名を記載]
メッセージ:[大切にしたいメッセージを記載]
文字数:[文字数の条件を記載]
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最後まで読んでくださり、ありがとうございました!