「加速するジョブ型雇用社会に備える」をテーマに議論してきました(イベントレポ)
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
先日8月3日に、日本経済新聞社の石塚由紀夫編集委員がファシリテーターを務めるオンラインイベント「働き方innovation 加速するジョブ型雇用社会に備える」に参加してきました。
最近毎日のように紙面を賑わす「ジョブ型雇用」について、様々なバックグラウンドを持つパネリストの方々と共に議論しました。COMEMO公式にも記事があがっていますので、ぜひご一読ください。
議論は大きくわけて3つありました。はじめに、コロナショックによる働き方の変化について。次に、メンバーシップ型とジョブ型雇用について。最後に、社員の働き方マネジメントのあり方についてです。
碇さんからは「組織レジリエンス」という言葉がでました。日本語で言うと「頑健性・迅速性・統合性」のことですが、不測の事態や危機への組織の対応力が重要であるとの指摘です。2011年の東日本大震災により、企業のBCP対策(事業継続計画)の準備が進みました。データセンターや運用拠点の分散化、在宅やサテライトオフィスを利用した事業継続の準備ができていた会社も多いのではないでしょうか。
これらは「復旧までの時間をしのぐ」目的であることも多く、今回のコロナのように長期間でどう復旧するのかもわからないというような状況は想定できていないでしょう。SaaSツールなども活用しながら、オンラインとガイドラインにそった新しい様式に対応していきながら、これまでの常識にとらわれず大胆に取り組んでいくことが求められます。
メンバーシップ型、ジョブ型については日経新聞上でも数多くの記事が出ています。
ジョブ型雇用は社員にとって、自分のキャリアは自分で切り開く、という制度です。企業には、社員が就きたいと考える職務になるべく就ける仕掛けが求められます。日立製作所グループは海外拠点でポストに空きが出ると社内外から公募していますが、国内にも広げる考えです。
これまでの成果主義の人事制度と、ジョブ形雇用との違いは、後者が雇用の流動性を高める仕組みだということです。欧米のように、外部との間で思い切った人材の入れ替えをするのは当面難しいとしても、社内の人材流動性を上げることが、企業にとって制度導入を成功させるカギでもあります。
議論の中で「経営学の用語にはジョブ型・メンバーシップ型という言葉はない」という発言がありました。たしかにこれは各国の労働法に沿った話であり、企業が勝てる組織をつくるという議論の中では出てきません。私からは「最大のチャレンジは、中間管理職のスキルのアップデートである」という投げ込みをさせてもらいました。なぜならば、リモートマネジメントにおいて管理・監視型では全く機能しないこと、成果物と評価について中間管理職が正しく制度を運用できないことには始まらないからです。
日本の大企業を中心に、90年代半ばごろには成果主義ブームが起こりました。能力や努力のような目に見えないものではなく、目に見える成果を評価。そのために、半年ごとに目標と達成度を設定し、その達成度を上司が5~10段階で評価することで昇給や賞与にもダイレクトに反映されました。年功序列の廃止です。その結果、短期の成果が出やすいものが優先されたり、失敗を極度に恐れるようになったりしました。また、所属している組織やプロジェクトが達成数字の面で有利になりがちで不公平感が生まれ、社内の士気が低下することもあったようです。
では、今回のジョブ型雇用導入についてはどうでしょうか。職務に対して報酬が示されることで、個人のもつ能力が客観的に評価されるという点が異なるでしょう。しかし、評価については課題が多いでしょう。組織と個人との期待値をすり合わせ、お互いが納得できる目標を設定する。その成果がどう評価され、賞与等に反映されるのかなどもこれまでとは異なる運用が必要になるでしょう。ここでも重要なのは、評価者側のトレーニングです。ジョブ型を導入する企業は、特に中間管理職に対しての人材開発を入念に計画して実行する必要があると思います。
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タイトル画像提供: Rawpixel / PIXTA(ピクスタ)