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ボーカロイド海外展開、長年の活動が奏功か=ドイツ語圏

オーストリアのウィーンで3月29日にボーカロイドのコンサートが開催されることが発表されました。ウィーン少年合唱団が歌う舞踏会に、ボーカロイド「結月ゆかり」などの開発販売を手掛けるAHS社が協力します。

日程や参加方法などの詳細は下記のプレスリリースを確認していただくとして、今回、特別にAHS社の尾形代表からコメントをもらうことができました。

そもそもの発端は、オーストリア、ウィーンの日本大使館からの連絡。さぞかし驚いたのではと思いましたが、

「大使館、舞踏会、ウィーン少年合唱団ということで、驚いたと言うよりピンと来ませんでした。何を言っているのかと」(AHS社尾形代表)

コンサートに向けた意気込みについて聞いたところ、

「音楽の都ウィーンで、日本の音楽、ボーカロイド、そしてキャラクター文化を伝えられるとてもよい機会ということで、協力させていただきました」

自社製品の紹介にとどまらず、YAMAHAの最新ボーカロイド「VOCALOID5」を知ってもらうよい機会になるのではと期待しているそうです。ちなみにこの第5世代となる最新の「VOCALOID5」ですが、尾形代表によるとグローバル市場での販売が伸びてきているそうです。

いずれにせよ、ビジネス拡大のきっかけになればと期待する尾形代表。現地の反応が気になるところです。

ボーカロイドの海外展開、とくにドイツ語圏に関しては先日も、COMEMOで初音ミクのコンサートについてレポートしたところですが、今回はAHS社の活動について振り返ってみます。

ウィーンでのボーカロイドのコンサートは今回が初開催ではありません。2015年にウィーンのアニメファンイベントAniNiteでのコンサートが初となります。このAHS社のボーカロイドは好評で、その後、ベルリンに会場を移し、2016年と2017年に地元のアニメファンイベントAnime Messe Berlinでも行われました。ステージホールは超満員となる盛況ぶりでした。

そのあたりのもようは以前レポートしていますのでよかったら文末のリンクを参照してください。

実はAHS社はドイツとの関わりは深い。設立当初からドイツの企業と取引をしているそうです。ただ、日本のポップカルチャーをドイツで紹介するきっかけになったのは、2011年までさかのぼることができます。ドイツの大型アニメファンイベントConnichiに参加し、ボーカロイドを含めた日本における創作の現場を紹介したことです。同イベントではこの年、YAMAHAでボーカロイドの開発を主導した剣持秀紀さんも講演を実施しています。翌2012年にはフランクフルトの日本映画祭Nippon Connection(会場:ゲーテ大学)でボーカロイド文化を紹介する講演を実施。その数か月後には同じくフランクフルトで開催されたボーカロイドのファンミーティングに参加するなど、ドイツ語圏のファンを重視してきた経緯があります。

2013年にはデュッセルドルフのアニメファンイベントDokomiで実施されたプレゼン内では、同社のボーカロイド「結月ゆかり」のドイツ語インターフェース版の発売を発表するなどサプライズもありました。

ファンが多く集まるイベントに参加する。しかも継続的に。

こうした積極的な活動がボーカロイド文化の普及に貢献し、今回の「ウィーン少年合唱団舞踏会」でのボーカロイドコンサートの実施につながったのではないか。というのが今回の「気づき」です。

ボーカロイドは、アニメやマンガ、ゲームに続く、世界にファンが広がる「クールジャパン」のジャンルのひとつを形成しているのかもしれない。改めてそう感じました。

参考情報:
・「音楽の都にボカロの歌声が響く ウィーンの大規模アニメコンベンション「AniNite」リポート」(「ねとらぼ」、2015年)

・「海外でも広がるボカロ ドイツのボカロ事情を探る」(「ねとらぼ」、2016年)



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