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今の時代に合った「適材適所」の人材配置を成功させるポイントとは。

皆さん、こんにちは。今回は「適材適所」について書かせていただきます。

企業の経営戦略を立て実行する際、一般的には「何の事業を選択するか」を決めてから、「誰をその事業の責任者に充てるか」を決めるケースがほとんどだと思います。当社ではその逆で、「人材が先で、事業が後」とするケースの方が多く存在します。

何の事業を選択するかについては、社員の得意領域であること、社員がやる気を出して頑張れそうな領域であることが重要です。あえて「苦手な領域や社員の適性に合っていない事業を選択することはしない」と決めています。それだけ社員の“やる気”や“能力”を引き出すことを重要視しているからです。(ただし、これが全てのケースに当てはまるわけではありません。事業ありきで人材を採用するケースも増えてきています。)

各企業が描く戦略を着実に実行していくために、必要なポスト(事業)に人材を配置する際、どのような点を意識していくべきなのでしょうか。
また、その逆で、それぞれの人材の強みや特性、能力を生かすために、どのようなポストや役割を与えていくべきなのでしょうか。

このような「適材適所」を実現する上で、前提となる考え方や方針について具体的に考えていきます。

■「適材適所」の目的とは

引用した記事には、

環境変化に応じて事業領域も変化させていく中で、各人のスキルに見合うポストを提供し、企業収益に貢献させるのは難しくなっている。

とあります。終身雇用を前提としている場合、企業が人材のスキルに見合うポストを提供することが必要で、企業の発展とともにポストが増えていく分にはそれが実現可能でしたが、今は特に環境が激しく、どんなに大企業であっても長期間会社が安定して存続することが決して当たり前ではありません。だからこそ社内に常に活躍場所があるとは限らず、適材適所が社外にあることも想定しておかなければならない、というのが記事の内容です。

終身雇用、かつ年功序列的な要素が強く残る企業においては、ポストごとに定められた職務レベルに応じて、報酬や評価が決まっています。重要なポストを与えられるためには「社歴」も必要条件でしたが、最近では徐々にそれが緩和されつつあり、あくまで「スキル」や「専門性」を重視した人材配置がされるように変化しつつあります。

企業は若手社員に対し、組織の中である程度の下積み経験を期待していますが、一方で社員は、能力もやる気もスキルもある人であればなおさら、年齢に関係なく大きな裁量を求めています。転職が当たり前の今の時代において、若手社員は社外でのキャリアの可能性を常に選択肢に入れ、成長機会を求めていることは紛れもない事実であり、従来通りの画一的なポストを提示するだけでは、優秀な人材の離脱は防げないことは明らかでしょう。

人材の再配置など、配置転換を行うケースとしては、

1、事業戦略を実行する上で、成功確率を高めたい場合(“事業戦略の実行”が目的)
2、チームに何か問題があり、それを解決できる人材を配置したい場合(“組織課題解決”が目的)
3、重要な部署やポジションのリソース不足により、人材を多く配置したい場合(“人材補充”が目的)
4、意図的に特定の社員に難易度の高い仕事や役割を与えたい場合(“人材育成”が目的)

など様々です。
1・2・3のようなケースだと、「事業」ありきで人材を最適配置していくという考え方ですし、4のケースは「人材」ありきで最適配置を実現していくという考え方となり、それぞれの目的に応じて適材適所のやり方も異なります。どちらにせよ、人の配置が最適化されると、

●生産性向上(社員の能力を十分に発揮できれば、生産性向上につながります)
●離職防止(社員の適性や希望に合った配置が実現できると、満足度が高まり、離職を防ぐ可能性が高まります)
●コスト削減(適正な配置によりリソース配分を最適化できると、少ない人数で同等もしくはそれ以上パフォーマンスを発揮し、人件費などのコスト削減につながります)
●仕事のミスマッチ減少(社員がそれぞれの能力に合った仕事ができると、スキルが合っていないというミスマッチ状態を回避することができます)
●職場の活性化(社員一人ひとりの生産性が向上し、仕事に前向きに取り組めている状態を構築できると、組織の活性化が図れます)

などの効果が期待できます。

■適材適所の人材配置を成功させるポイント

先日、18年ぶりの優勝を飾った阪神タイガースの岡田監督の記事には、

「機能しない組織に共通するのは、若手や控えに『自分たちのことを気に掛けてくれない』などと感じさせてしまうことだ。岡田監督は主軸以外の選手を併用して競わせるなど、選手を柔軟に起用し、誰でも頑張ればチャンスがあるという期待感を持たせた」

とありましたが、若手中心のチームの中で「選手の適性をしっかり見極めたこと」、そして「各々の選手の自覚を促し、戦略に沿った配置を行ったこと」が強いチームを作れた要因と紹介されています。

プロ野球の例で言うと、既に能力が顕在化し、想定通りのパフォーマンスを発揮できている一軍選手だけでなく、二軍三軍も含めた控えの選手に対しても常に新しい能力を発掘しようとしたり、起用に関して適切な競争環境や期待感を演出するなど、選手の能力を引き出す工夫を数多くしているのだと思います。

ビジネスにおいて「適材適所」の人材配置を実現させるためには、簡単に言うと、

① 社員一人ひとりの能力や強みを把握・可視化する
② 部署やプロジェクトに必要とされている能力を把握・可視化する
③ ①と②をマッチングさせる

というステップが必要になります。

「個人が持つスキルや強みを最大限引き出し、思う存分能力を発揮できる場所に配置すること」が、本来の適材適所の理想の姿です。人も含めた“経営資源”をどこにどのくらい配分するかを決めることが経営戦略のセンターピンなのです。
「フットワークが軽く、タフな環境に耐えられそうな営業っぽい人材を営業部署に配置する」とか、「細かい作業が得意そうな真面目な人材を経営管理に配置する」といった、「〇〇っぽい人」「〇〇に向いていそうな人」という主観や偏見で社員の配属を決めてしまうのは、あまりにも乱暴です。

●経営戦略・事業戦略に基づいた適正な「人数」「人材要件」を把握する
●客観的なデータ(仕事の進め方や性格などの検査結果、それまでの評価や実績など)を見ながら、個人の「適性」をしっかり見る
●定期的な面談などを通じて、候補者となる社員の今後の「キャリア展望」を把握する

というようなプロセスを通じて、最適な人材を選定し、期待値を伝えた上で配置を行っていくことが重要です。

■適材適所に織り込むべき指標

「適材適所」は、「人を、その才能に適した地位・任務につけること」ですが、「適所適材」はその逆で「地位・任務に、適した才能の人をつけること」です。「適材適所」は人材を起点とした異動で、「適所適材」はポジションを起点とした異動、ということです。空いているポジションに対して誰を配置するかを考えるか、ポジションを決める前に誰を異動させるかを考えるかの違いですが、これは二者択一ではなく、各企業の戦略やフェーズに応じて、上手に使い分ける必要があります

「伸びている事業に優秀な人材を配置する」というのが鉄則ではありますが、現在のポジションに「合っていない人を別の場所に配置する」というような配置換えを行うことの方が、日常的には多々発生しているはずです。たとえば、「一定期間連続して評価が低い」とか、「本人が持っているスキルと業務内容がマッチしていない」「周囲との相性が極端に悪い」というケースもあります。このようなケースも各々が能力を発揮できる新たなポジションを見つける必要があります。また、長期間にわたって同じ部署での経験を積んでいる社員も、ケースバイケースではありますが、基本的には別の部署での経験を新たに積むことで成長にドライブがかかるため、異動対象者として定期的に配置換えを行うこともあります。

大企業を中心に年に数回は異動の時期と決め、「定期異動」型の仕組みを持っている企業が多いですが、「定期異動」が自社のカルチャーにそもそも合っていないという判断をしている企業も一定数いると思います。当社がまさにそうですが、私たちの場合は、本人の意向を全く無視して、トップダウンで異動や配置換えを行うことはほぼありません。定期異動を実施しないことによる会社全体のロスもありますが、それでもあえて「定期異動はやらない」という選択を取っているのは、あくまで社員一人ひとりの“やる気”を尊重していて、「興味がない部署に異動させられた」とやる気を削ぐことでの人材のロスを防ぎたいからです。

メガバンクが新卒採用した行員を専門性の高い部署に配置し、育成する取り組みを加速する。三井住友銀行と三菱UFJ銀行は2025年入行の採用で、配属部署を特定するコース採用を拡充し、市場部門に携わるコースや支店運営に関わる採用枠を新設する。もともと専門人材を充当する意味合いが強い中途採用を補完するとともに、入行段階から希望に応じる採用枠を増やし、有望な人材の確保につなげたい考えだ。

こちらの記事のように、新卒採用の段階から配属部署を特定し、専門性を高めていくような動きが加速しています。「配属ガチャ」を避けるためにも、本人のやりたい仕事を選べる状態を構築することの重要性が増しているのです。

これまでは、“適材”となる人材を育成し“適所”に配属させる手法が一般的でしたが、組織主導の適材適所よりも、社員の自律性を尊重し、社員のキャリア観を踏まえた適材適所の人事が企業に求められています。人材獲得競争が激化する昨今において、企業は業務効率化や生産性向上によって飛躍的に競争力を強化していかなければなりませんが、そのためにも社員の意志を尊重しながら適正を正しく見極め、能力を最大化できる人材配置が必要不可欠です。

したがって、適材適所を実現するために注視すべき指標としては、

① 異動のプロセスや手法が自社のカルチャーに合っているかどうか
② 社員のキャリア意向を踏襲できているかどうか
③ 希望と異なる部署への異動があった場合に、社員のやる気のロスを最小限に抑えられているかどうか

は外せないポイントと言えると思います。

■偶発的な“異動”も意図的に視野に入れる

「本人の意志を尊重する」ことをベースとした「適材適所」の必要性はこれまで述べてきた通りですが、一方で、本人の希望に沿わない異動やジョブローテーションに意味がないと言っているわけではありません自分が想定していなかったジョブチェンジが、結果として時に思いがけない成長機会につながることも十分あり得ます

「思いがけない異動」によって、本人の意欲をかき消さずに新しい場所で活躍できるイメージを持ってもらうためにできることもたくさんあります。異動という機会をポジティブに捉え、前に進んでいく力へと変えてもらうための様々な“支援”や“工夫”も企業に求められていると思います。

社員の自律的なキャリアを企業が支援していくことは大前提ですが、意外と誰もが自分の適性を正確に把握・理解しているわけではありません。それまでの経験をもとにその仕事が「好きか嫌いか」「向いていそうか向いていなそうか」くらいの感覚値しかないことがほとんどです。それは人事も同様です。

さらに、どのようなテクノロジーを活用したとしても完全な「適材適所」を予測することは困難です。
本人の意志に委ねてばかりでもダメで、人事部門や上司に異動タイミングなどの判断を委ねてばかりでもダメで、適材適所につながるツールを導入して完璧な配置ができたと自己満足に浸っていてもダメなのです。
ということは、あらゆる可能性の中から、適材適所の精度が高まる方法を模索し、仕組みを一つ一つ整え、結果を検証し、改善し続けていくしかないのではないかと思います。

適材適所を通じて社員の成長を促し、企業の持続的な成長につなげるには、企業側が個人の過去の経験や実績、特性や性格、価値観、コミットメント具合、仕事や上司との相性などを含めた多くのデータを網羅的に把握した上で、“個々の強みや適性を的確に把握”し、“それを引き出すための役割や配置”を決め、その後に“効果検証”と“きめ細やかなフォローアップ”をし続けるといった、意図的かつ能動的な取り組みが欠かせないのではないでしょうか。


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