AIに仕事を奪われないためには、失敗しつづけることだ
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
# 本記事は日経電子版連動お題企画「#AIに奪われない仕事」への寄稿です。
「AIに仕事が奪われる」。英オックスフォード大学工学部のマイケル・オズボーン教授が2013年・2015年に発表した共著論文は今でも多く引用されるほど話題になりました。正確には「仕事が自動化される可能性」を研究して列挙したものですが、おおむね「雇用の49%が自動化される可能性がある」という結論は衝撃的です。
先にお題に対する回答を示しておくと、日経ビジネスでの対談においてオズボーン教授自らがある程度の方向性を示しています。
一方で「『内科医』の仕事が将来AIなどに自動化される確率」については「わずか0.6%」と予測しています。
このように「社会的知性」が必要な仕事については、当面自動化される可能性が低いようです。コンシェルジュのようなサービスや、保育や介護などといった仕事もその範疇内でしょう。
現在AIと呼ばれるものは、おおむね機械学習というテクノロジーです。大量のデータを解析してあるパターンを見つけることに長けています。また、体系化されたデータであればなお扱いやすいという特徴があります。一見人間にしかできないだろうと思うような仕事も、実はAIが得意なものも多く存在しています。
例えば「刑事のカン」のようなものは長年の経験から学び続けたある一定の行動パターンを指すことが多く、言動や歩き方等から「あやしい」という判断をして職務質問をかける。そういったものです。実際にこれをソフトウエアに実装してビジネスをしている企業が米パランティア・テクノロジーです。あのオサマ・ビン・ラディンの捜索に貢献したと噂されて一躍有名になりました。
また、体系化という意味では音楽(作曲)も得意分野かもしれません。
楽曲にはコード進行があり、ヒット曲には共通のコード進行も見られることがあります。有名なもののひとつに「丸の内進行(丸サ進行)」があり、椎名林檎さんのヒット曲「丸の内サディスティック」で使用されたことから多くのアーティストが影響を受けたものと思われます。若者の間で人気のボーカロイド曲でも多様されており、ハチ(米津玄師)さんの人気曲でも利用されています。最近のアーティストでも、YOASOBIの「夜に駆ける」や、Official髭男dismの「I LOVE...」でも要所要所に取り入れられていますね。
もちろん取り入れ方やメロディーラインは千差万別ですので即AIで自動化できるとは言いませんが、音楽理論は体系化されているので「Jazzっぽい」とか「ブルースっぽい」曲を生み出すことは十分可能かと思います。
先のオズボーン教授の説では、人間にしかできないことのひとつに「創造性」が挙げられています。創造性とはなにか?というのは回答が難しいお題ですが、これまで予測できなかったような発見や発明(イノベーション)を生み出すことでしょう。では、それを実行するためにはなにが必要なのでしょうか?
つまりそれは、AIにできず、人間にできること。それは、失敗を繰り返して長い時間あきらめないことだと考えています。「失敗は成功の母」と昔から言われているように、研究過程での失敗が新たな発明につながることがあります。電化製品の中でもなくてはならないもののひとつに「電子レンジ」がありますが、これも元々は軍事レーダーの開発者がたまたまポケットに入れていたチョコレートバーが溶けていることに気づいたからだそうです。
AIは実行結果を評価して、良い評価のものを抽出して再学習するということを繰り返して正解らしきものを導き出します。つまり、失敗したものをずっと追い続けるようなことは仕組み上しません。「AIからの評価が低いもの」から可能性を見いだし、さらに追求していく能力。これが、今後の人間にとって重要な創造性なのでしょう。
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タイトル画像提供:Graphs / PIXTA(ピクスタ)
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