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人文資源の6次産業化 ~ビジネスとアート/人文研究の価値

こんばんは、uni'que若宮です。

僕はITスタートアップを経営していますが、最近また、アートや人文的・カルチャーへの興味を強くしています。

アートやアカデミアの人たちをビジネスシーンに混ぜるような仕掛けをしたり、逆にアートの人たちをビジネス・マーケ面でサポートしたり。そういう活動をしているのですが、これからはそういう活動を「人文資源の6次産業化」と呼んでいきたいなと思います。


なぜアートや人文が大事だと考えるのか?

そもそも音楽や建築をしていたり、アート研究をしていたバックグラウンドもあるのですが、ビジネスをする傍らそういうものに触れることによって視点や視座を変えてバランスをとっている感じもあります。

高速な成長が求められるITベンチャー界にいると、「ハック」「グロース」「ディスラプト」といった合言葉が飛び交う中で、どうしても爆速爆速爆速ゥゥゥゥ!圧倒的ィィィィィ!!!成長ォォォォォ!!!みたいな錯覚に陥るのですが、早く成長する、というのも実は目的ではなく手段なはずで、スタートアップとかイノベーションの本来の目的は「文化」を新しくつくることだと思うからです。


「文化をつくる」という観点で考えると、たとえば短期に10億ユーザーに使われるような①空間的な価値の大きさも大事ですが、価値とは四次元的な積分値だとおもうので、たとえば②感動のような「価値の深さ」や650年つづくような③時間的な「価値の長さ」も重要だと思っています。これまで、なんとなく①が優先されてきた感がありますが、これからの個やエシカルの重要性が大きくなる時代には、改めて②や③も大事になってくるのではないでしょうか。


アートや人文は「資源」?

今やっている事業やその価値は、果たして650年先にも社会に存在しインパクトをもっているでしょうか。650年後、西暦2669年です。なんかもう、会社がどうなっているかとか想像できないですよね。

そんな650年も長い間、現役のまま続いてきたものがあります。それが能です。

最近ちょくちょく能楽師の安田登さんとお話しする機会があったのですが、安田さんは「このつまらない能がずっと生き続けている、それがすごい」とおっしゃいます。能には「伝統」と「初心」という仕組みやあえて面白くならないように努力するとか、長く続くためのすごい知恵が詰まっている。

そして安田さんはこの連綿と積み重ねられてきた知恵の蓄積を「文化資源」だと言います。安田さんの最新の著作『すごい論語』(いとうせいこうさん、釈徹宗さん、ドミニクチェンさんとの対談本)から引用します。

「資源」というのは「さまざまなものに利用しうる有用物」のこと、その代表としては、現代の文明を支える石油資源を挙げることができるでしょう。石油はガソリンや軽油として加工されれば自動車などの動力源になり、灯油として加工されれば冬場の寒さをしのぐ熱源にもなります。火力発電の燃料としても使われていますし、プラスチックや化学繊維の原料にもなります。

ここでポイントなのは「資源」という考え方、そしてそれは加工することでさまざまに活用できる、という考え方です。


文化は「つくるだけ」でよいのか問題

安田さんは能や『論語』『平家物語』など日本の古典を新たな観点から読み直すことで、そこから芸能の方法論やマネジメントやマーケティング、教育論まで実に多岐にわたる知恵を取り出します。

このように文化として蓄積してきたものを資源として活用することはとても大事なことだと思います。けれど日本には活用されないままに眠っている資源がたくさんあるのではと思うのです。

特に僕がおもうのは、アートや人文研究の活用です。理系技術研究は活用可能と考えられますが、人文資源は一般にはビジネスとは遠く、活用可能性が低いものとして社会とあまり接点をもっていない。これはあまりに勿体無い。


そんな想いから、文化や人文とビジネスとを混ぜるような活動をしてきたわけですが、その中でちょっとずつ気付いてきたことがあります。

それはアートや人文においては「つくる、生み出す」という方法は教えられ、受け継がれているが、つくったものの活用法はあまり議論されていない、さらにはその結果として、二次活用しようとすることに拒否反応すらあるということです。


これはまるで「生産」しかしない一次産業のようなものです。

美味しい野菜を作ることはできる。ですが、いくらいいものをつくっても、それが活用されず食べてもらえなければ腐ってしまいます。たとえて言えば「人文資源のフードロス」みたいなことがたくさん起こっているわけです。


6次産業化をみんなで

もちろん、美味しい野菜を作ることは大事ですし、その技術自体、とても価値が高いものです。ですが「まるかじりでも美味しい野菜」をつくれるからといって、まるかじりでしか食べちゃいけない、ということはないと思うのです。

「一口目はぜひ素材の味を味わってください」というのはいいでしょう。でもまるのままの使用のみにこだわりすぎて、せっかく生産したものが誰の口にもはいらず腐ってしまうこともあるのではないでしょうか。

安田さんが実践しているように、素材がよいものであればあるほど、それをさまざまな活用ができるものに「加工」し(2次産業化)、ニーズに合わせてチャネルなどを組み合わせて「流通」(3次産業化)をしていくことも大事ではないでしょうか。


「アート思考」をやっていても、「ビジネスにアートは役に立たない!」という方もいますし、逆に「アートはビジネスのネタにされたくなんかない!」と言われたりもします。あるいは、アートやアカデミアにビジネス的なアドバイスをしても、「ビジネスの手助けなんかいらない!」と拒否られることもあります。

でも、どっちが上、とか助ける、とかそういう話ではないのです。せっかくある資源なので、そこを分断してしまわないで、もっと活用しませんか?活用のための「加工」や「流通」も考えませんか?というだけなのです。


もちろん「美味しい野菜のまるかじり」もやっぱり最高ですし、何でもかんでも混じればいいとはおもいません。ですが、現状はあまりにも勿体無いのではないでしょうか。

「6次産業化」によって全国に美味しいものを届けられるようになり盛り返した農家や、それがきっかけで若い後継者が見つかった農家もあります。そしてなにより、そうしてその技術がサステナブルに続いていけば、たくさんの人がより長く美味しい野菜を食べられるのです。

「資源」とは公共のものだと思います。

生産者が独り占めにしていいものでも、一部の企業が「消費」してしまっていいものでもありません。その活用と継続のために、もっとあたらしい「加工」や「流通」を考えて、つなげていけたらいいな、と思っています。

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東洋経済「すごいベンチャー100」uni'que CEO、 ランサーズタレント社員 (最近の興味)編み物としての建築←コアバリュー、アート思考、新しい働き方、新しい教育 ←DeNAで新規事業 ←NTTドコモで新規事業 ←美学藝術学研究者 ←アート・音楽イベント主催 ←建築士

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コメント (1)
美味しいもの作ってればお客さんは来てくれる!

とか

サービスさえちゃんとしてれば差別化できる!

っていう誤解はたぶん飲食業にもいっぱいあって
それはここでいう“作ってそれでおしまい”
的な感覚に近いのかも

若宮さんが言うように、資源は使ってもらって意味がある

って考えたら自然と

じゃあどうしたら使ってもらえるか(食べてもらえるか)?
っていう発想になると思う

そこまでがセットなんじゃないかなー
ととても共感です◎

ナガサキ
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