水素エネルギーと時間に対するオーナーシップ
水素エネルギーについて、少し、教えていただく機会がありました。いままで、よくわかっていなかったので、改めて、自分なりの理解を共有したいと思います。
水素エネルギーとは
化石燃料に酸素を足し、反応させることで、水と二酸化炭素とエネルギー(蒸気でタービンを回して発電することで、電気エネルギー)が生まれます。一方、水素燃料に酸素を足し、反応させることで、水とエネルギーが生まれます。二酸化炭素が生じないというところが、大きな違いです。この図を眺めていると、水から水素を作り出せば、永久にぐるぐる回せるのではないか、と思うのですが、もちろんそんなことはありません。
下図のように、水に電気(電圧)を加えることによって、酸素と水素が別れます。これにより、水素ガスをつくることができます。この水素ガスに、先ほどの上図のように酸素を加えて反応させることで、水と電気エネルギーを得ることができます。
この水から水素ガスをつくる際に必要な電気をAとし、水素と酸素を反応させて生み出す電気をBとしたとき、次のような不等号が成立するのだそうです。
電気A > 電気B
つまり、水素によって得られる電気よりも、水素をつくるためにかかる電気の方が大きい。これって、つくればつくるほど赤字になるようなものです。
しかし、この電気Aが、再生可能エネルギーだとしたらどうでしょう。太陽光や地熱のようなもので、水から水素を作り出すことができたとしたら。
水素としての貯蔵
電気は、貯めておくことが難しい資源です。発電したものを送電すること、バッテリーに貯めて運搬することを考えると、この水素というものがまた魅力的に見えてきます。つまり、太陽光などの再生可能エネルギーを、水素の形にして貯蔵しているようなものと考えることができるのです。
世界経営者会議でシーメンス社長兼CEOのジョー・ケーザーさんが次のように語っておられました。
未来に対して、今やれることは何か。
義務ではなく、チャンスとして考える。
カーボンニュートラル、水素経済へのチャンスだ。
デジタルツインを目指し、世界14万人の従業員のリモートワークを推奨し、エネルギーから医療まで多岐にわたる事業を展開するシーメンス社が、そのエネルギーとして水素に注目しているという事実。
アイスランドの試み
上記の図のように、水と再生可能エネルギーによって、酸素を放出して水素ガスをつくります。この水素の状態で運搬することで、再生可能エネルギーの活用が難しい場所まで、電気の形ではなく、水素の形で届けることができ、貯蔵することができます。そして、必要に応じて、どこにでもある酸素と合わせて反応させ、水と電気として活用することができます。
こうした試みは、アイスランドで長く取り組まれてきており、地熱発電を起点とした水素エネルギーの活用が勧められています。
風力や波力なども活用できるかもしれません。水ということでれば、洋上発電と組み合わせることで、無尽蔵に水素を作り出すこともできるのかもしれません。
未来へのオーナーシップ
ever blueというベンチャーの描く世界は、まさに、こうした世界です。水素ガスを、風力を活用したヨットで運搬する。再生可能エネルギーと海水によって洋上で生み出された水素ガスを、風力を活用して世界中に運搬する。まさにエネルギー革命。
SF的な洋上都市構想も含めて、未来を描く上で、エネルギーは重要な観点だと思い至ります。石炭文明、石油文明と呼ばれるように、エネルギーによって、文明は大きく左右されそうです。スチームパンクというようなSFのジャンルがあるのも、まさにエネルギーや動力が何に依存するかによって描かれる世界が全く異なるものとなるからです。
私たちが、どのような未来を望むのか。そのためには、どのようなエネルギーを選択するべきなのか。そこから考える必要があるのかもしれません。
先のシーメンス社長のジョー・ケーザーさんは、オーナーシップカルチャーが重要である、ということを暑く語っておられました。「誰でも、どこでも、何をしていていも、この会社が自分の持ち物と考える」ということ。
僕たちが、僕たちの未来を考えるとき、そこにオーナーシップカルチャーはあるでしょうか。オーナーシップを持つということがどういうことか、改めて考えてみたいと思います。下記は、場所に対するオーナーシップを持つに至った体験をまとめたものですが、未来という時間軸に対してオーナーシップを持つためには、どのような体験が必要になるのでしょうか。僕としては、これかな、という体験はあるのですが、それはまた別の機会にまとめたいと思います。