独身の「童貞率・処女率」30年間の変化
今回は、セックスについてのお話です。
「最近の若者は恋愛をしない=セックスレスである=草食化している」などという論法をよく聞きますが、全くの事実誤認であり、認識を正しくしていただきたいと思います。
とはいえ、決して「最近の若者もセックス意欲が旺盛である」と言いたいのではありません。
そもそも、昔も今もそれほど変わらないのです。
社人研の出生動向基本調査には、独身者に対する「性体験の有無」を調べたデータがありまのす。その1987年と2015年とを比較してみましょう。
まず、男性の童貞率を見てみると、2015年の方が微妙に増えていますが、各年代別に見ても約30年前とほぼ数字は変わりません。
女性の処女率に関して言えば、むしろすべての年代において処女率が下がっており(性体験率が上昇)、むしろ肉食化と言ってもいいくらいです。
推移を細かく見ると、男女とも1990年代後半から2000年代前半にかけて性体験率が上昇しており、そこから比べると下がったと言えますが、長期的にみれば、それほど変化があったわけではないのです。
18~34歳の全体の数字をグラフ化すると一層わかりやすい。
男はほぼ変わらず、むしろ女性が1987年には処女率65%だったという事実の方が驚きではないでしょうか?
このコラム連載でも何度もお伝えしている通り、日本の未婚率が急上昇したのは1990年代からです。つまりこのデータの1987年当時は、ほぼ100%が結婚した皆婚時代でした。
そんな皆婚時代に、独身女性の7割近くが処女だったということは、つまり、結婚をしてはじめて性体験をするという女性が多かったということを表します。
言い換えると、「結婚というお膳立てがなければ性体験をしなかった」とも言えるわけです。皆婚時代だからといって、セックス意欲が旺盛であったわけでも、みんなが肉食系だったわけでもないのです。
こちらの記事では「30代前半の男性では1987年の8.8%から2015年の12.7%に増加」と報道されていますが、この数字は、独身者も既婚者も合わせての数字です。既婚者は100%性体験済みであり、ふたつを合算した数字は無意味と言えます。なぜなら、30年前と今とでは当然ながら未婚率が上昇しているわけで、合算してしまうと既婚者比率が下がる分、童貞・処女率が上がるのは当然だからです。
日本の独身者の童貞率は、昔も今もほとんど変わらないし、処女率は、晩婚化や未婚化の影響によってむしろ大きく下がった、というのが正しい認識です。決して、若者の価値観の変化などではありません。
加えて言うなら。既婚者がセックスをしているかと言えば、それも違います。
相模ゴム工業が2013年に実施した調査によれば、既婚者のうち55%が「セックスレスだと思う」と回答しています。特に、40~50代男性の6割の方がセックスレスなのです。
今も昔も、独身も既婚者もそれほど変わり映えしないのです。