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フリーランス新法施行と残された課題

いよいよ明日11月1日からフリーランス新法が施行されます。

一昨日の日経新聞にも解説記事があり、私のコメントも載せていただいております。

フリーランス新法は、フリーランス(正確には「特定受託事業者」)と事業者間の取引の適正化とフリーランスの就業環境の整備を目的とする法律であり、フリーランスが安心して働ける環境整備の一歩となるでしょう。

とはいえ、フリーランス新法が施行されることで、フリーランスに関するすべての問題が解決するわけではありません。

今回は、フリーランス新法が施行されたとしても残る課題について書いていきます。

フリーランス側の契約リテラシーの向上

フリーランス新法では、広く取引条件の明示が義務づけられており、フリーランス新法の大きな狙いの一つといえます。

(「どこまで明示すればよいのか」という発注者側の疑問が多くありますが)これにより取引条件が曖昧なままに取引が進むことが防止されるでしょう。

そうなってくると、次に問題になるのは、明示を受けたフリーランス側の理解です。

「取引条件明示」は契約書である必要はないのですが、ここで明示された内容は、当事者間の合意内容を示す証拠となります(正確には、時系列的には、合意形成後に明示することになりますが)。

したがって、取引条件の明示を受けたフリーランスとしては、当初合意の内容と異なる内容が記載されている場合には、異議を唱えなければ、誤った明示が証拠とされる可能性があります。

フリーランスとしては、「明示内容が合意内容の証拠とされる」ということ前提として、明示された内容の確認を行うべきでしょう。

労働者性の認定の問題と非正規雇用の待遇改善

次に、フリーランス新法は、労働基準法上の「労働者」ではない事業者を対象としており、フリーランス新法の成立によって「労働者性」の考え方が変わることはありません。

労働者性の問題については、厚労省において相談窓口が設けられており、今後、労働者性に疑義があり得る場合には、こちらに相談することになります。

労働法学的には、この「労働者性」の概念について、維持すべきか、拡張すべきか、第三類型を設けるべきかといった議論がなされており、今も厚労省で議論がされています。

この点に関しては、既に書いてきたところですが、私が強く主張したいのは、一定のフリーランスを労働者として保護したところで、通常は非正規雇用になります。そうなると、統計上も非正規雇用労働者が増加するかもしれません。
いずれにしても、フリーランスの労働者性の議論は、非正規雇用の待遇改善を政策的に進める必要があるでしょう。

プラットフォーム就労者の問題

もう一つ大きな問題として、フリーランス新法は、それ自体プラットフォーム上で仕事を受けるプラットフォーム就労者について保護するものではないということです。

フリーランスがプラットフォームから直接業務委託を受けるような形式では、フリーランス新法の適用はありますが、そうではなく、従前たる取引の場としてのプラットフォームの場合は、実際の発注者とフリーランスとの間に取引が発生するため、フリーランス新法の対象にはなりません。

欧米諸国では、このプラットフォーム就労者の政策について議論が進んでおりますが、日本においてはやや遅れているように思われます(フリーランスガイドラインに仲介事業者の規制がありますが、本質的なところではないといえます)。

また、プラットフォーム就労者の問題については、政府だけでなく司法としての判断を進めていくという考え方もあります。
実際に、欧米諸国では、プラットフォーム就労者を労働者とする旨司法判断がなされており、この点でも日本より進んでいるといえます。

今後、政府、司法の場においてこの点の議論が進んでいくことを期待したいと思います(司法という意味では、弁護士である私も一旦を担っていますが…)。

とはいえフリーランス新法には期待したい

上記のようにフリーランス新法が施行されたとしても残る課題はあります。

ただ、今回フリーランス新法が成立、施行されることは、フリーランス活躍にとって大きな一歩であると思いますので、フリーランス新法には期待したいところです。

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