エンゲージメントを高める「ストレッチアサインメント」
先日の日経新聞に以下のような記事がありました。
日経新聞社の調査によれば、働きやすさを尊重する「ホワイト企業」でもなく、また、「働きがい」が高い「モーレツ企業」でもなく、「働きやすさ」と「働きがい」の両方を掛け合わせた「プラチナ企業」の方が、売上高の増加率、PBRが高いという結果が出ているようです。
適度なアサインがエンゲージメントに影響する
昨今では、「ホワイトすぎる企業」も敬遠されるということもよく聞かれます。これは自身にとって難易度が低すぎる仕事がアサインされ、成長実感がないということが理由のようです。
これと近いことが、人材版伊藤レポートにも書かれています。
人材版伊藤レポートが示した「共通要素4」の「社員エンゲージメント」の中で、取組みの一つとして「エンゲージメントレベルに応じたストレッチアサインメント」を挙げています。
具体的には、エンゲージメントレベルを把握した結果、エンゲージメントレベルが高い社員に対しては、「社員のキャリア志向に沿った適切なアサインメントにより、他の職務や、より高いレベルの職務へ挑戦を促すことで、エンゲージメントレベルが向上し、その社員が持つポテンシャルや能力が最大限活かされることが期待される。」としています。
つまり、「簡単すぎず、かつ、難しすぎない」レベルでのストレッチアサインメントを行うことが、エンゲージメント向上につながるとしています。
ミッションの明確性、計画性がポイント
人材版伊藤レポート2.0では、「海外企業のストレッチアサインメントは、ターンアラウンド、組織変革、事業創造といったように、アサインメントのミッションが明確であることが多い。また、候補者のアサインメント先でのミッションは、当該候補者が高く評価されている能力をより高度に発揮させる内容や当該候補者が抱える課題の克服に役立つ内容に、計画的に設定されている。」としており、ストレッチアサインメントのミッションの明確性や計画性が重要であるとしています。
「エンゲージメント」と「満足度」は違う
さて、以前にも書いたことがあるのですが、人材版伊藤レポートが重要としている「エンゲージメント」は、「満足度」とは違い、「企業が目指す姿や方向性を、従業員が理解・ 共感し、その達成に向けて自発的に貢献しようという意識を持ってい ること」を指しています。
つまり、「福利厚生が良い」、「給料が良い」、「仕事が楽」といった理由での「満足度」とは違い、そういった対価や見返りよらず「”自発的に”貢献しようという意識」を持つことに意義があります。
難しすぎる仕事をアサインすることは、それはそれでパワハラの一類型とされており、実務的には「適度」な職務かどうかの判断は難しく、「言うは易し」でしょう。
ただ、冒頭の記事のような「プラチナ企業」の売上増加率の上昇率、PBRの高さや、人的資本経営の観点からも、適度な職務へのストレッチアサインメントを実施すること重要といえるでしょう。