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もう、イベントに「主催者」はいらない。

知人の有名なバンドマンが言っていた。

「今のお客さんはお客さん同士で盛り上がって、ステージで歌っているおれたちなんて観ていない」

さすがに「観ていない」ことはないと思うが、確かに今と昔ではイベントの在り方がだいぶ違う。

では「次」はどうなるのか?

電通若者研究部では「ツギクルワーク」と称して、βutterflyに所属する学生たちと月に1回のワークショップを実施している。ツギクルとは「次にくる」の略で、毎月テーマを変えながら学生同士が未来を予測している。

今日は次にくる「イベント」をテーマにした際の話。

βutterflyとは電通若者研究部がプロデュースする学生団体の総称。蝶の羽ばたきのような力学的にはわずかな変化でも、そのわずかな変化が無かった場合とは、その後の状態が大きく異なってくる「バタフライエフェクト」をモチーフにしている。

■観客のいないスポーツ観戦

このワークは、事前課題でそれぞれが考えた「次に来るイベントの形」を並べながらスタートする。この日、まず目を引いたのはこれだった。

映像のないスポーツ観戦とはつまり、本編は観ずに観覧者の実況や感想だけで楽しむスポーツ観戦の形。テレビで言えば、副音声と本編が逆転した形式だ。

確かに近年、副音声の注目度は増している。「テラスハウスは本編の音を字幕にして、副音声を主音声にするとめっちゃ楽しい説」というのも聞いたことがある。そのままのコンテンツを観る一次観戦に加え、二次観戦三次観戦と楽しみ方の幅が広がるかもしれない。

■ファン企画型イベント

次に注目したのはこちら。

ライブで歌う曲をファン投票で決める、などファンをライブに「参加させてあげる」形式は定番になってきた。これからはファンがライブ自体を企画する形式も生まれるかもしれない。イベントは事務所主催ではなく、ファン主催で行われるのが当たり前になっていく。そんな逆転現象も未来では当たり前かもしれない。

■主催者レスイベント

最後に紹介するのはこちら。SOUND YOUTHというバンドサークルの日本一を決める学生団体から出てきた見立てだ。

イベントを主催するのは事務所でもファンでもない。人工知能が勝手にイベントを自動生成して、僕らはそれに乗っかればいいだけ、というこちらの見解。イベントの主催者が言っているから逆に説得力がある。

■スポットライトはどこを照らすか

実際にそんな未来になるかはさておき、この20年で起こった変化は主役の移行、つまりイベントでスポットライトが当たる場所が変わってきたということだ。

20年前、イベントは演者のためのものだった。スポットライトはステージに立つカリスマアーティストを照らし、観客はただの群衆だった。

そして10年前、スポットライトに照らされていたのは音楽フェスをはじめとするイベントオーガナイザー(主催者)たちだった。この時期、CDの売れ行きが低迷する中、リアルなライブが盛り上がった。イベントが租税乱造される中「あのイベントは○○主催だから信用できる」など、イベントは主催者によってブランド化されていった。

そして今、イベントでスポットライトを浴びるのは観客そのものになりはじめている。観客が主役でアーティストは添え物。それが冒頭のバンドマンが言っていた現象だ。かく言う自分も、毎年参加しているFUJI ROCKを「BGMがカッコいい大きなビアガーデン」と(敬意を込めて)言っている。

そう考えると、昨今起こったファンのマナーでアイドルのコンサートが中止になると言う現象も、違う意味で観客にスポットライトが当たった結果かもしれない。

そしてこの先、イベントの未来はどうなるのか?人工知能がイベントを自動生成し、主催者という存在自体がイベントから消える時代は本当に来るのだろうか。引き続き、若者の中に生まれる価値観の変化から世の中の動向を観察したい。

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■そんな中、イベントを主催します(告知)

さて、最後に告知を。冒頭で紹介した「ツギクル」を一般にも公開するイベントを先日発表した。

βutterfly Foresight Creative Sessionの"Foresight"とは、日本語で「先見の明」。つまり未来の動向を予測することだ。このイベントでは「次に来る夫婦の愛の形」をテーマに学生と社会人がディスカッションをし、その未来予測に基づいて新たなサービスや商品を企画する。

僕も主催者というより、参加者のひとりとして一緒に楽しみたいと思う。起業やビジコンに興味がない人たちも、気軽な気持ちで遊びに来てくれたら嬉しい。

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