体験を設計する力が強く求められる時代
我々が好む好まざるを問わず、もはや逃れられないのは、ソフトウェアがビジネスを飲み込んでいくメガトレンドです。
世界的に有名な投資家であるマーク・アンドリーセン氏は2011年8月にウォール・ストリート・ジャーナル紙に「ソフトウェアが世界を飲み込む理由」を寄稿しました。
10年前にここで書かれていた内容は、その当時ではまだ全産業を脅かすようなものではないと思われていましたが、そろそろあらゆる領域で無関係とは言い切れない状況になってきています。
一例ですが、日本のお家芸であった自動車産業において、現時点で最も時価総額の高い企業は米国のテスラとなり、2位のトヨタ自動車の3倍の評価を得るようになっています。
テスラは製品としての車単体に高い価値があるわけではありません。デジタルネットワークにつながった状態でスマートフォンアプリから操作ができ、オートパイロットなどのソフトウェアで制御された機能群は常に改善され、より高い価値を提供するのです。まさにソフトウェア時代の権化のような存在です。
テスラはこのようなハードウェアと統合されたソフトウェアサービスによって、理想的なユーザエクスペリエンス(UX)を提供することを目指しています。
UXの設計では、利用者はどのような状況にいて、どんな目的を持っているのかを捉えて、気持ちよく、効率的に効果が発揮できる状態を実現することが究極のゴールです。
たとえ、オートパイロット機能がレベル2の水準で技術的には課題を多く抱えているとしても、利用者の便益を追求して活用できる状態であれば、運転負荷を減らして安全性を高めることも可能になります。
もちろん、このUXはソフトウェアが世界を飲み込む前から重要な概念でしたが、ユーザの利用状況は複雑で多様であるため、一度に理想の設計はできませんし、追求しても理想の実現は叶わないものでした。
製品がデジタルネットワークに常時接続されて利用状況が可視化でき、実験と学習によってソフトウェアサービスを随時改善することで、やっと理想のUXに近づくことが可能になりました。
ソフトウェアが世界を飲み込んでいる現在、最も必要とされているスキルの一つがこのUXを設計し、追求するスキルです。まだまだ日本にはUXスキルの保有者が不足しています。
そこで私が代表理事を務めているUXインテリジェンス協会では、UXスキルのすそ野を広げるために、UXの検定試験を開始します。第一回目の締切は7月21日(木)までで、試験は8月6日(土)の実施になります。少しでも興味がある方は、ぜひ詳細をご覧になってください。
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