自律的なキャリア形成とは、筋トレのようなもの
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
いまや年間288万人が転職している時代。不透明さを増す昨今の社会事情の中で、自分自身のキャリアについて再考する方も増えていると感じます。日経でも「キャリア」や「リスキリング」という文字を見ない日はありません。
昔から「キャリアップ」というのは、社会人共通のお悩みごととして存在していました。日本型雇用の中では新卒採用でどこに入るか、がキャリアにおける最大の選択でした。よって、多くの人が良い会社(安定した大企業ないしは公務員)になることから逆算的に大学を目指し、良い大学に入るために中学高校から受験してその時に備える。これが戦後日本における一つの勝ちパターンとして信じられてきたことは疑いの余地がないでしょう。
学生と社会人の違いはなにかを問われた時に、いつも回答していることがあります。それは「正解があるかどうか。もしくは、正解を教えてくれる人がいるかどうか」ということです。学生のときにはテストがあり、テストには模範解答という正解があります。ところが、社会に出るとこのやり方がだいぶ変化します。新卒のことは上司や先輩が正解らしきものを教えてくれますが、数年も経つと自分で考えることが求められます。上司にお伺いを立てても方向性が大きく間違ってないかという指針はもらえますが、基本的には自分で「正解らしきもの」を見つけ、それが合っているはずと信じて業務を進めることになります。まして、自身のキャリアに関することであれば、今の会社にいるのがよいのかどうかを教えてくれる人はいません。
多くの方がこの「もやもや」を日々抱えながら過ごしているのだと思います。では、どうすればよいでしょうか?
日経でも特集に登場しているキャリア論の専門家である田中研之輔さんの新著「キャリア・ワークアウト」には、そのための処方箋が多く紹介されています。
あなたは今、自分の強みを最大限に生かしながら働いていると言えるだろうか。毎日組織のために一生懸命働いていても、「いつまでこの会社にいられるのか」「自分のキャリアはこのままでいいのか」とどこか不安を感じている人は少なくないはず。でも、キャリアの正解を誰も教えてはくれない。「この本には、自分で解を見つける具体的なヒントがある」ーー。新刊 『キャリア・ワークアウト』 (日経BP)の読みどころを、転職や働き方事情に詳しい村上臣さんが語る。
キーとなる考え方が「プロティアン・キャリア」です。詳細は以下の特集がありますのでぜひ一読いただければと思います。重要なのは、これ自体が彼のキャリアの「もやもや」の実体験から始まっていることです。一見成功しているエリートのような人であっても、キャリアがとまってしまうかもしれないという強烈な危機感を持っていたということは驚きに値します。
あるとき「このままだとキャリアが止まる」と気づきました。学生に教えるだけでは自分は全く成長しないと考えたのです。
そのとき出会ったのが「プロティアン・キャリア」という考え方でした。1976年に米ボストン大学経営大学院のダグラス・ホール教授が提唱した概念です。プロティアンという言葉の語源はギリシャ神話に出てくる、思いのままに姿を変えるプロテウスにあります。プロテウスは火にもなり、水にもなり、時には獣になる――。環境の変化に応じて変幻自在に姿を変えます。これこそが打開策だと確信しました。
私は「ジョブはひととき、キャリアは一生」だと思っています。ジョブ型雇用の中では一定期間雇用主と約束した成果を出す(=ジョブ、役割)ことを積み重ねていくことになります。ひとつひとつ積んでいった経験が、後に振り返ってみるとキャリアと呼ばれるものになる、そのようなイメージです。
田中教授の言葉をお借りすれば「働くとは、悦びであり、キャリアとは生きざまである。」ということです。とても素敵な考え方であり、共感する部分が多いです。キャリアで「もやもや」している方は、ぜひ手にとっていただければと思います。
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タイトル画像提供:perfecta / PIXTA(ピクスタ)