欧州景気は後退するか?
欧州景気は第3四半期と比べ失速している。エネルギー動向もあり、欧州の景気悪化は他地域と比較して確度が高いと考えるのも普通の見方である。11月のPMIの確定値は、ユーロ圏のGDPが第4四半期に縮小した過去のパターンと合致するなど、景気が悪化すると考える見方は一般的でもある。
しかし、ユーロ圏経済はエネルギー危機にあえいでいるにもかかわらず、過去2四半期のGDPデータは予想を上回った。これには12月7日に発表されたユーロ圏GDPの上方修正も含まれる(確定値は前四半期比+0.3%、速報値は同+0.2%)。特に周辺国では、意外にも一部の指標がなお景気の拡大を示す水準にもある。これにはいくつか理由がある。まず、1970年以来最大のエネルギー危機は、全体的データにはまだ目に見える影響は及んでいない。例えば、投資は新型コロナ禍の落ち込みから引き続き回復している。恐らくは、税制優遇措置や復興基金の「次世代のEU(NGEU)」、さらには2021-21年の景気刺激型の財政政策により活かされた長期にわたる余剰生産能力が組み合わさった結果であろう。また、観光に敏感なセクターが活況であることや大々的に実施された財政政策がサポートしたこともある。
とはいえ、第4四半期がたとえ予想を上回り強めに推移したとしても、ユーロ圏は限定的だが長期にわたる景気後退に入っているのではないか。以下6点指摘する。第一に、Ifo期待指数など先行指標は厳しい状況を示唆していること。第二に、実績データも厳しい様相を示していること。たとえば10月の小売売上高(ドイツ前月比5%近く、イタリア同1.5%のそれぞれ縮小)や鉱工業生産(フランス同2.6%減)などを見れば明らか。第三に、新型コロナ後の追い風はもはや期待できないこと。第四に、実質所得の低下が続いており、消費者信頼感も低水準に留まっていること。第五に来年以降、債務の持続可能性に対する懸念から財政も引き締めモードになることが想定されること。第六に、米国経済が減速をはじめるなど世界の景況感もネガティブに働くこと、である。
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