EUに走る3つの断裂(縦・横・斜め)

ハンガリーという国のマイナーさとは裏腹に重要なニュースです。さて、今回続投が決まったオルバンと言えば、移民受け入れ問題でメルケルに真っ向から対立し、ドイツを道徳的帝国主義と称し、自国国境間際の移民・難民に対し催涙ガスや放水銃を打ち込むといった対応が非難されました。EUの腐ったリンゴ、東欧のトランプなどあまりうれしくない別称を耳にしますが、EUの東西対立を代表する国・首相の1人であり、そうした人物が権力基盤を強めているという現実は覚えておいた方が良い事実です。

東西対立以前に、EUを巡る分裂と言えば、経済格差を巡る「横」の南北断裂(端的にはドイツvs.南欧)が最も有名でしょうが、近年では移民対応を巡る「縦」の東西断裂(端的にはドイツvs.ハンガリー)が注目を集めました。さらに、最近では「斜め」の断裂として「沿岸欧州vs.大陸欧州」という構図も見られ始めています。ちなみに、ここで言う沿岸欧州は「8か国(デンマーク、エストニア、フィンランド、アイルランド、ラトビア、リトアニア、オランダ、スウェーデン)」が想定され、3月にはこれらの国の財務相が今後のEU改革に関する共同声明を発表し、ドイツを中心とする大国主導の意思決定への異議を唱えました。これまでドイツと歩調を揃えてきた印象の強いオランダやフィンランドが入っていることが興味深い動きです。

今年から来年にかけて、欧州は目立った国政選挙がありませんが、どう足掻いても4~5年に1回はその時は到来します。「オルバン的な勢力」が複数国で芽を出し始めている中、今のユーロ圏経済が如何に堅調と言われても、中長期的には不安を覚えざるを得ません。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018040700393&g=int

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