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デジタルネイティブな会社の文化とは

どうも、すべての経済活動をデジタル化したいLayerXの福島です。

日本でもDXという言葉がバズワード化しています。毎日のように様々なメディアの記事で、いかにビジネスを、行政をデジタル化していくかを目にしない日はなくなりました。

そんな中、先日こんなつぶやきをしました。

思わぬ反響を得まして、もうすこしまともにまとめてみようと思った次第です。

ちなみにこのスライド自体、LayerX社内にある会社の戦略・方針を示した「LayerX羅針盤」というスライドがありまして、そこから抜粋したものであります。

(さすがにLayerX羅針盤自体を共有することはできませんが、上記スライドのような粒度で各事業やメンバーがどういうスタンスで、どういう戦略やポリシーに則った上で、意思決定すればいいか、日々優先度を着ればいいかを迷わずできるような指針をしめした20枚ほどのスライドです。)

マーケティング・営業

顧客管理・ファネル管理を属人化せず、徹底してファネル管理。ファネル管理することで、「より正しいKPI管理・評価」→「より正しいアクション」→「精緻な事業計画」とつながる。「テックタッチ」「ヒューマンタッチ」を分け、「テックタッチ」を最大限活用し、「ヒューマンタッチ」にレバレッジをかける。

まずはマーケティング、営業からです。「ファネル」とは、顧客がどうやって自社の製品を知り、購買に至るかのフェーズに分けた図表です。

当然、デジタル以前からファネルは存在していました。がデジタル時代にファネル管理の重要性は増しています。なぜかというと、デジタル時代においては、広告やセミナーなどのリード獲得の段階から、実際に購買に至るまで、加えて購買後の利用動向やリピート、アップセルをしているか、などのすべてをログ解析やデータで把握できるからです。これにより今までよくわかってなかった、顧客の購買前の行動や購買後の行動、施策に対する反応やABテストの効果などすべてが見える化されて、正しい評価につながります。

「より正しいKPI管理・評価」→「より正しいアクション」→「精緻な事業計画」

ファネル管理が精緻化することで、会社全体としてより正しいアクションが行なえます。

「計画に対して、リード獲得がこれだけ足りてない。ウェビナーや広告などで流入をxxまで増やそう」

「リードから商談に行くまでの率が低い。なのでリード獲得の訴求やその後のフォローアップを変えてみよう。結果商談率をyyまぜ改善しよう」

「購買後の最初のユーザー利用率が低い、やばい。ユーザーオンボードの方法をこう変えよう。結果最初のユーザー利用利用率をzz%まであげよう」

など、会社として・事業としてより健全・健康な状態(=事業計画が達成できている)にむかって、より正しい、事業計画の具体的根拠や変数をあたえてくれます。ファネル管理をしながら、正しいアクションを行うと、会社としての計画を達成できそれがやればやるほど精緻なものになっていくというサイクルが生まれます。

「テックタッチ」「ヒューマンタッチ」

テックタッチ、ヒューマンタッチは文字通り、テックでのユーザー接点、ヒューマンでのユーザー接点のことです。

例えば、「webでリスティング広告を打つ、ユーザーにpush通知を打つ、ボタンを変更して反応率を見る、ある行動をした見込み顧客に自動的にメルマガを配信する(マーケティングオートメーション)」などはテックタッチ、「電話で営業のフォローアップをする、見込み顧客にアポを取りデモを見せ営業をかける、先方に出向いてオンボーディングする、トラブルシューティングをカスタマーサポートとして対応する」などはヒューマンタッチです。

これらも従来、デジタル以前から当然のようにビジネスの世界では行われました。デジタル世界での違いは前述の「ファネル管理」「それに基づく分析・アクション」と相互に作用し、デジタルで行えるものはテックタッチで行い、ヒューマンタッチにレバレッジをかけるとより効果のある、マーケティング・営業が行えるというものです。

プロダクト

勘ではなく、「事実」で真の顧客理解をする。チャーンレートや、利用動向の分析など「統計的なデータ活用」はもちろんのこと、徹底したログの収集や、その穴を埋めるユーザーヒアリング・顧客ヒアリングを通した「正しい定性情報・定性理解」を重要視する。

プロダクト開発は、あらゆる企業にとって、最も重要でコアとなるものです。

しかし、おそろしいことに、デジタルの世界が訪れるまで、真の意味でその企業のプロダクトの価値を正しく理解していた企業はいなかったのではないか、と私は思っています。

(全く関係ないですが、野球の世界では、統計的なデータを取って選手の価値を測るまで、誰もが本当の選手の価値はわかってなかったという記事です)

「真の顧客理解、真の課題の理解」は本当に重要で、これさえ出来ていれば、その他の多少の要素、ちょっと開発が遅い、マーケティングが下手、マネタイズが下手、といったマイナスは企業経営にとって誤差ともいえるくらい、重要です。企業経営における殆どのロスは「顧客を理解できてない、解決する課題を間違えている」ことで起こります。

ではデジタルの世界だとその顧客理解をどうやっているのか?

ひとつは統計的な理解、ユーザーの行動ログを分析し、どういう傾向のユーザーがサービスをやめるのか、どういう傾向のユーザーがロイヤルユーザーになっていくかを把握することです。ここに関してはその他の記事で多くが語られてるので深追いはしません。

もう一つ重要な顧客理解の方法は、もっと定性的な顧客理解です。定性的な顧客理解でもデジタルの方が有利なのです。これはすべてのサービスのログが取れているということに起因します。従来のモノは売り切りでした。売ったあとどう使われてるかのフィードバックを取るのが非常に難しかったのです。

一方デジタルの世界ではすべての行動ログが取れます。この行動ログは仮に統計的データになっていなくとも、「あるユーザーの行動の真実」を表すという点で有効です。これと従来行われてるようなユーザーヒアリング・インタビューを組み合わせることで大きな力になります。

「あるユーザーの行動の真実」はここが課題なんじゃないか?ここが便利なんじゃないか?ここをこうするともっと良くなるのでは?という人間の想像力を働かせる補助線になります。その仮説を基に、ユーザーヒアリングをすると統計データでなくとも、「真の顧客理解、真の課題の理解」にたいして大きなヒントが得られます。

こうして今までは全くわかっていなかったユーザー行動を、時には統計的に、時にはミクロに、時にはその穴埋めとしてヒューマンタッチのユーザーヒアリングをすることで埋めることができます。

開発生産性

自社の「コア」と「ノンコア」を理解して、「ノンコア」の部分は徹底して、クラウド・SaaS・ソリューションを活用。(「巨人の肩にのる」)あらゆる業務改善にエンジニアを配置し、「巨人の肩」をフル活用できる徹底的な内製化(前提: 「ソフトウェアのコントロール領域の広がり」 * 「技術の民主化・コモデティ化」の波に乗る)

開発生産性はデジタル企業の大きな武器です。

そしてこの開発生産性を高めているのは、ソフトウェア業界が作り出している構造そのものに起因します。

ソフトウェア業界の産業構造で最も重要な概念は、〇〇 as a Serviceという概念です。ソフトウェア企業は水平分業型であり、さらにはその1機能のなかの1モジュールをas a Serviceとして提供していきます。

昔は自社で管理していたインフラを、多くの会社はクラウド(IaaS)で運用しています。さらに、今のクラウドは様々な機能が提供されています。機械学習に関しても、クラウドに乗っかることですでに相当なことができるようになっています。

バックオフィス業務はSaaSによって、磨かれた機能が大量に提供されてます。これを組み合わせれば今まで高価なカスタマイズコストを支払って実現していたERPを安価に構築することができます。

自社のコア業務にも、モジュール単位で様々な便利機能を外部から取り入れることができます。

前提として、「ソフトウェアのコントロール領域」が広がっていきます。企業のあらゆる業務にすべてソフトウェアが入る時代になります。

ですので、そういった〇〇 as a Serviceを使いこなす、ソフトウェアエンジニアをあらゆる業務に配置し、内製化することが重要です。〇〇 as a Serviceはカスタマイズをしない前提で、安価に提供されるものだからです。使いこなすためにはソフトウェアエンジニアのパワーが必要であり、そこを内製化して、自社業務に合わせていくことが「デジタル企業のコア業務」なのです。

そしてこれらの磨き込まれたソフトウェアはまさに「巨人の肩」であり、そこに乗っかることで今までの世界の常識ではありえない開発生産性を出すことができます。

この開発生産性が、前述の正しいファネル管理、正しい顧客理解と組み合わさると、もう後続の企業はあなたのプロダクトに絶対に追いつけないでしょう。

マネタイズ

ショットでの単価や、短期的な収益ではなく、顧客の中長期での「LTV最大化」を重要視する。短期的に顧客を騙すより、長期的に顧客のためになることをする。ソフトウェアが広がることでモノからサービスに産業構造が変わり、売り切り型ではなく、中長期での収益(そしてそのもととなる顧客体験)を重視する

ソフトウェア産業の構造をビジネスモデルでみたときに、一番大きな違いは、「売り切りモデル→サービス産業」への転換だと思います。

ソフトウェア産業では、あらゆる製品が、サービス型、売り切りではなく継続して提供し改善し、お金をいただくというモデルになります。

こうすると企業に最も重要なKPIは「LTV(ライフタイムバリュー)」になります。そしてその大元となる「UX」こそがデジタル企業にとって最も重要なものになります。

LTVはある意味、デジタルになり、購買後のユーザー行動が明らかになったため計測できるようになった指標です。

LTV志向は大胆なプロダクト投資、競合に先立つマーケティング投資も可能にします。巨額の赤字を出しながら、高い株価と資金調達能力を誇るソフトウェア企業は、すべてこのLTVに基づいて投資意思決定をし、その赤字原資となる資金を投資家から調達しています。(長期的にここの差分はなくなると思いますが、)こういったLTV志向に対する知識やスタンスの差がファイナンスリテラシーの差となり、それだけで優位性が生まれるマーケットもまだ数多く存在するように思えます。

基本の徹底

ここに書いてある事自体、いわゆる普通のIT企業、いやITに限らずともまともにビジネスをやっている企業にとっては「当たり前・常識」のことしか書かれてません。

そうそれでいいのです。ビジネスとは、「他人にはできないけど、自分たちの資源を使えばできる顧客のためになるサービスの提供」です。なのでビジネスの原理原則自体がそんなに複雑になることはありません。もし複雑になっているとするならばそれは優先度が絞れてない、シンプルにできてない、本質を抽出できてないということでしょう。

デジタル時代に何が変わるかというと、その原理原則の中で使う「道具」の変化に過ぎません。が、道具の変化は常に、考え方の変化・優位性の変化に逆伝播していきます。ですので正しい原理原則を徹底できる、正しい「道具」の使い方、意思決定方法、それをいかすための企業文化や考え方の変化が必要なわけです。それに合わせて自社のスキル、優位性を変化させ、磨き込まないといけません。

そこの徹底ができる会社はやはり少ないです。なのでやはりこの原理原則にしたがって会社文化を改造し、ビジネスモデルを適合させ、徹底していくことこそが、いわゆる「DX」でも最も求められる要素だと私は考えます。

昔とある尊敬する経営者に質問したことが鮮明に蘇ります。

「御社で今までで一番効いた施策ってなんですか?」
「メルマガのセグメントを細く切り、ABテストを繰り返し、マーケティングオートメーション化したことですね」

ここに全てが詰まってるなと思いました。おそらくメルマガのセグメントを切る、仮説を絞り出しABテストをする、その結果をオートメーション化する。多分みんな知ってます。そして「やっている」と思いこんでいます。

でも差がつくのです。結局どこまでいっても、基本に従って、真の顧客理解をし、その理解を深めるための実験を繰り返す。そのために「デジタル」という道具を使いこなす、使い倒す。

これに尽きるのだなと思います。

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LayerX CEO, Gunosy創業者, エンジェル投資家。大学時代はコンピュータサイエンス・機械学習を研究していました。テクノロジーを武器にしたスタートアップエコシステムの拡大に人生を賭けています。