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マネージャーに必要な「観察」と「ゆさぶり」の技術

「育成」じゃないと悟った話

新米マネージャーだったときの話です。

当時の私の悩みは、新しく自分の部下になったメンバーのキャリア。彼は営業が得意ではありませんでした。

ただし、頭脳がすごく優秀だったために「教育を頑張ればどうにかなるのでは?」と、一生懸命に「育成」をしようとしていました。

しかし、一向にうまく育たない。一方でどんどん暗くなる彼。

どうにかしてあげたいと、日々かなりの時間を割いていた記憶が鮮明に残っています。

そんな中、彼を観察していると気づいたのが、どうやら他の仕事が得意そうだということ。そこで、本人の希望も聞きつつ別部門への異動を後押ししました。

結果は成功、すぐに大活躍。一気にその部門の中心メンバーになりました。その後、彼と会話をするとその仕事が得意なだけでなく好きでもあるようで、イキイキと自信に満ちていました。

全くの別人。

ここで、人が育つためには「得意」と「好き」がいかに重要か。そして、「育成する」のがいかに困難か、それどころか「育成」などというものは不可能だということに気づきました。

こちらができるのは「環境・きっかけを与えること」くらいで、自分で成長してもらうほかありません。マネージャーができることといえば成長を支援するのみです。

それから、試行錯誤を繰り返す中で「自分の適性が何もわからない中、野村さんに育ててもらったおかげで成長できました」と、うれしい言葉を言っていただける機会が増えてきました。

そこで、この記事では、マネジメントをする人に向けて"部下"の「得意」と「好き」の見つけ方をご紹介します。

どんな企業でも人が足りないという実情は、下記のような調査にも現れており、読者の方々も共通の悩みだと思います。その中で1人でも多くのチームメンバーが大きく成長するためのヒントになれば幸いです。

※そもそも上下で表現するのは好きではないのですが、この記事では読んで理解をしやすくするためにマネジメントの対象者を「部下」と表現しています。

部下の「得意」と「好き」の見つけ方

「あなたの好きな仕事はなんですか?」
「あなたの得意な仕事はなんですか?」
このように問われると、意外と答えに詰まりませんか?

実際、これまで多くの部下が答えに詰まっていました。この部分を言語化できていない部下がほとんどなので、マネージャーがその得意と好きを探す手伝いをしてあげる必要があります。

そこで必要なのが「観察」、そして「対話」「実践」のサイクルです。

部下の「得意」を観察する

まずは観察です。部下の仕事っぷりをよく観察します。特に私が見ているのは、「アドバイスしたあとの、返ってくる量」です。

例えば、以下のような2人のケースを想定してみます。

まずは一人目。アドバイスをすると素直にその部分の修正だけをしてくるAさん。

次に二人目。アドバイスをすると、伝えたことを思考のフックに、他の部分の改善まで自分なりに考えてくるBさん。

上記は一例ですが、同じアドバイスを受け取っても、Aさんのように「言われた部分をその部分だけ改善するのか」、Bさんのように「自分なりに思考して+αを考えてくるのか」で大きく変わってきます。

私の経験上、自分なりに思考を進めてくる部下は、ある程度その業務が得意であることが多かったです。

そして部下の思考を見るためにも気を付けていることがあります。それは「アドバイスの際、答えはすべて言わない」こと。

今回の例のように、普段のアドバイス時も修正するべき点をすべて伝えるのではなく、ヒントだけ出したり、一部だけ具体例まで伝えるにとどめたりしています。

その後、観察する上で気づいた「こういうのは得意そう」と感じた部分を、部下に積極的に伝えていきます

例えば「私から見ていると、あなたは〇〇な部分が得意なように見える。例えば~~なときに、~~のように行動していたのが、~~な意味で素晴らしかった。」などと伝えます。

このとき、もし伝えた「得意」が間違ってたとしてもかまいません。得意は状況やタイミングによっても変わってくるものです。とはいえ、伝えたことで本人には気づきになったり、自信になったりします。

それをもとに、「自分ってこういうこと得意なのかも?」と考えられるようになるきっかけになることもあるので、とにかく他者であるマネージャーから部下には積極的に素晴らしい点を伝えていきましょう。

部下の「好き」を探る

次に、部下との対話の中で「好き」を探っていきます。ただ、本人の中で言語化されておらず、「どんな仕事が好きなの?」と聞いても、本人もわかっていないことが多いものです。

特に頻出するワードが「自分のモチベーションがどこにあるかわからないんです…」というもの。ここで私がヒアリングする内容はいくつかありますが、今回は一つをご紹介します。

それが「揺さぶり」の質問。例から考えてみましょう。

部下「仕事はつまらない訳じゃないんですけど、自分のモチベーションがどこにあるか全然わからないんです…」
自分「そうなんだ。じゃあ、もしまったく給料や待遇の条件が同じな場合、仕事内容はものすごく単純なコピー取りを一日中するのと今の仕事とどっちがいい?」

このように、「どういう部分が好き?」と聞くだけでなく、嫌がりそうな内容を出して「どの部分が嫌なの?」と聞くのがコツです。

ここで重要なのは「コントラスト」を意識して、部下が普段考えてないような部分から「ゆさぶり」をかけることです。その中で、部下の中での言語化を手伝います。

もし、自社が「自由で若いうちからバリバリ働ける。裁量がある。」という会社であれば、「毎日同じ作業で裁量なし。マニュアル通り。」というテーマを出してあげてください。

そのときに何を感じるのか。なんで嫌なのか。極端な対比をさせながら、自分が何にモチベを感じるかを意識してもらいます

実践と対話を繰り返す

もちろん、その話一回だけで、その場で答えを出してもらうわけではありません。

「ちょっと考えてみて」と部下に伝え、しばらく待ちます。状況によりますが、数週間~2か月くらい待ってから再度話を聞いてください。その間はもちろん観察を続けます。

少しでも言語化が進んだら、その内容をもとに、自社の仕事から部下の好みをどんどん聞いてみます。

自分「この部署のこういう仕事はどう?」
部下「違いますねぇ」
自分「じゃあこういう仕事はどう?」
部下「これも違いますねぇ」
自分「だったらこっちの部署のこんな仕事はどう?」
部下「いいかもですねぇ」
自分「じゃあそこの違いはなんなの?」

このようなイメージです。実際にその仕事を振るかどうかは別として、あくまで思考・言語化の手助けのために自社の仕事を色々と聞いてみます

そのために、部下との1対1の面談を少なくとも2,3回行います。

そして、すぐには正解がみつからずとも、「こういうのいいかも」と仮置きでもいったん道が見つかったらすぐに実践をするのがおすすめです。

他部署へ異動までせずとも、自分の部署の中で近い仕事を作るなりして、部下にやってもらいます。そして、その実践している姿を観察しつつ「やってみてどうだった?」と改めて聞きましょう

マネージャーが手間を惜しんではいけない

と、ここまで読んでくれたマネージャーの方々の中には「え、ここまでやるの?」と思われた方もいるかもしれません。もちろん自分の業務の状況などによっては瞬間的に難しいことも多々あります。

ただ私は自分1人でできることは本当に小さいものだと思っています。会社目線ではコストをかけて採用した部下一人ひとりがより良いパフォーマンスを発揮できれば、それが大きな組織力となるのです。

その組織力を作るために、部下の能力を引き出すのがマネージャーの役目。そもそも、せっかく自社を選んでくれた部下に少しでも「この会社に来てよかった」と思ってもらいたいので、ここにはすごく時間をかけます。

部下が「得意」と「好き」を見つけることをサポートすること、そしてそれに合わせて適性に合う仕事ができるように可能な限りサポートすること。

これらのサポートはマネージャーが手間を惜しんではいけない部分だと、私はそう思います。

終わりに

私が社内起業したRightTouchという会社ではもちろん「育成」はせず、各チームメンバーが成長を最大化できるような環境づくりや機会の創出に徹しています。

RightTouchではまだまだ創業メンバーを募集中で、成長できるフィールドは山のようにあります。

こんな環境で少しでも働いてみたいと興味を持っていただいた方は、ぜひ応募をご覧いただき、カジュアルに話しましょう。

もう少しRightTouchを知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

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