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舞い上がるカタカナ

ビジネスシーンで使わる「カタカナ」は、和訳として適切な言葉がない海外のビジネスの考え方や手法などを話すときに、その内容を長々説明するのが大変なので、カタカナをそのまま使用しているに過ぎないはずです。
つまり、「伝えたい内容があって、それを簡便に伝える手段」として使われているはずです。

たとえば、DX。
デジタル技術を活用し、組織やビジネスモデルを変革、顧客に対する価値提供の質を抜本的に変えること」をしようとしているときに、それを毎回長々話すのが大変なので、「DX」という言葉を使っているはずです。

しかしながら、そのDXという言葉が流行り始めると、まったくトランスフォーメーションしないのに、とりあえず「DXする」という言葉を使ってみる、というコミュニケーションを却って難解にする(DXしないのにDXすると言う)現象が頻出し始めます。

そして、この「中身が伴わないうわべだけの言葉使い」はDXに限った話でなく、「舞い上がるカタカナ」として至る所で散見するなぁ、と思っています。

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「ミレニアル世代を中心に消費にパーパスが求められ、 デジタルネイティブの垂直統合ブランドビジネスが急成長しています。新しい消費潮流を踏まえたコマースイノベーションが求められています」

「アフターコロナが求めるデジタルワークプレイスは、インフラ整備に留まらず、業務プロセス改革や意識改革を包含したエンプロイーエクスペリエンスの向上を伴い、これまでにないスマートワークを実現します」

「デジタルトランスフォーメーションやグリーンイノベーションなどの社会変革の波に対応するリスキリングプラットフォームを構築し、新たな事業創造マインドの創出を行います」

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これらは、すべて事業計画書として守屋が目の当たりにした文言です。
もちろん、この1行だけを切り出して、良いとか悪いとか言うつもりはありません。むしろ、事業計画のなかにこの1行が入っていることは、十分あり得る話だと思うのです。

ただ、事業計画全体を通しても、「結局、この1行を超える内容が書いてなかった」のです。
これ、大げさでなく、本当にそうだったのです。
この1行を言い換えたり、補強したり、分解したり、類似の有識者のコメントやメディアの記事を転載したりしているスライドが続いているだけだったのです。

さすがにそれだと、お金の匂いがしなさ過ぎて、「で? 具体的には何をどうする商売なんでしたっけ?」という「?」がアタマの中をグルグルしてしまったのです。

・はやりのカタカナや専門用語を使って、「それっぽさ」を出している
・誰に何の価値をどうやって提供して、結果どのくらい儲かるのか、まったく分からない
・ピッチしている本人が、じつは自分事として一意専心で本気でやろうとは思っていない

たぶん、本人に悪気はなくて、一生懸命作ったパワポなのだとは思います。
ただ、その努力の方向が致命的に間違っていて、「その事業の起案者として何が何でも成し遂げたいという熱量」が伝わってこないし、そもそも事業であるはずなのに「顧客への価値や顧客が買い続けてくれる理由」などが、どこにも書いてないのです。

大企業の事業開発部門に混ぜてもらっているなかで、たびたび遭遇するこの「舞い上がるカタカナ ≒ 中身が伴わないうわべだけの言葉使い」を撲滅したくて、日々、一生懸命向き合っているのですが、まだまだ力不足で流行を止めれていません。
毎年うまれるカッコ良さげな新種のカタカナが代わるがわる猛威を振るってくるので、ムチャクチャ手強いのです。

それでも企業内起業の可能性は大きいと思っているので、その人やその企業に可能性を感じる限り、余計なお節介だったりするのかもですが、これからも「新規事業あるある」に立ち向かっていこうと思っています。

この投稿は、

日経新聞に連載されている「令和なコトバ」を読んで、「新規事業あるある」として書かせていただきました。

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