「女性リーダー3割」を、何が阻んでいるのか?
皆さん、こんにちは。
今回のテーマは、私自身が今までの社会人人生の中でも幾度となく考える機会があったテーマです。
政府は「2020年までに指導的立場の女性を3割にする」という目標について、年末を待たずに達成時期の先送りを決めた。働く女性は増えたが、コロナ禍で大きな痛手を受けているのもまた女性だ。
安倍晋三内閣の約8年で新たに330万人超の女性が就業し、子育て期にいったん仕事を離れ就業率が下がるM字カーブの解消も進んだ。そもそも少ないとはいえ、上場企業の女性役員は3倍以上になった。ただ、諸外国が非常に進んでいるので、ジェンダー・ギャップ指数ランキングは121位と前年より下がっている。中でも低いのは政治分野だ。各政党にお願いしながら、自民党内でも理解を進めていく必要がある。女性は家庭、男性は仕事という固定的な考え方が、年代によってまだまだ多いのが問題だ。
30%の目標は一年でも早く達成したい。それには今まで以上のスピード感が必要だ。女性の声をしっかり聞き、やりたいことを形に変えていく。土台はしっかり構築されてきている。無理やり数を達成するのではなく、みんなで目標に向かって楽しく進みたい。
もともと政府が掲げている「女性活躍」の定義は幅広く、
1、 安全・安心な暮らしの実現
2、 あらゆる分野における女性の活躍
3、 女性活躍のための基盤整備
など多岐にわたります。
「2020年までに指導的地位における女性の割合を30%程度にする」という政府の目標は、結果的に17年たっても達成できず、しかも一割にも満たなかった、ということになります。
今日はこの中でも「民間企業の女性リーダー輩出を何が阻んでいるのか?」について考えてみました。
女性リーダー輩出の壁①:圧倒的な事例の少なさ。
なぜ女性リーダーが欧米のようにバンバン生まれないのかについて考えた時に、まず「事例が極端に少ない」点が挙げられます。
全く同じ能力、同じ環境、同じ価値観の人はいないことは分かっているのに、なぜか「同じような人」を探して共通点を見出し、自分のキャリアのお手本とすることで、あの人のようにやればいいんだという安心感を持つ人が多いのです。
逆に言うと、事例がないと不安になる人が多く、まだ創業間もない頃のサイバーエージェントでも、能力はあるのに管理職になりたがらない女性社員は多くいました。
(私自身は管理職になりたかったわけでは全くなく、しかも能力も全然なく、特に何も考えていなかったので昇格の打診を断る理由も思い浮かばず、気が付いたら管理職になっていました。)
もし、全く女性リーダーがいない状態からのスタートであれば、あえて乱暴な言い方をしますが、最初は無理矢理にでも事例を作っていくしかないと思います。まだ実力が足りない、管理職の器ではないと思っても、信じて任せていくことが重要です。
リーダータイプではないと本人も上司も決めつけてしまっているケースもありますが、いろいろなタイプのリーダーがいて良いはずです。まずは意思決定の機会を増やしてみたり、今よりもジョブサイズの大きなミッションを少しずつ任せてみることからスタートするのが良いのではないでしょうか。
女性リーダー輩出の壁②:ライフステージの壁。
この十数年で、社会的な意識も、女性自身の意識も大きく変わったとは思いますが、まだまだライフステージの変化によって、「子育てか仕事か」「介護か仕事か」を選ばなければいけない状況があります。
「女性は家庭で」が当たり前と思われていた時代ではもうなくなってきているのかもしれませんが、多くの女性に「家庭」での仕事が存在することもまた事実です。
いわゆる「イクメン」(この言葉自体既に使わなくなってきていますね。)が増え、男性の育児休暇取得率をKPIとして追う企業が出てきたなど、確実に各家庭の役割分担に変化が現れてきている状況はありますが、それでもなお、女性とはこうするべき、母親ならこうするべきという根強い役割意識が根本的に変わっていないことが、女性リーダーを目指す人、または既にリーダーになっている人にとっての、大きな壁となって立ちはだかっています。
以前、別の企画で「ママ社員になると何が大変なのか?」という観点でお話をさせていただく機会がありました。
簡単にまとめると以下3点です。
1、「評価」のズレ
→ママになると、自己評価と他己評価が折り合わない瞬間が多々訪れます。
たとえば、ママ社員の自己評価が「自分は制約がある中でこんなに頑張っている」であった場合にも、会社側の評価は「家庭がある割にはよくやっている」という評価になることがあります。もちろんこういった問題に対して既に手を打っていて、目標や評価基準を明確にし、お互い納得のラインを設けるなど工夫して、評価のズレをなくしている企業もあると思いますが、「こんなに頑張っているのに評価されない、もしくはされなかった」という感情面が尾を引いて、いわゆる“マミートラック”から抜け出せない人を生み出してしまうことになるのです。
2、「理解」のズレ
→同僚や上司など、周囲からの理解を得ることに最も苦労する、という相談を何度も受けたことがあります。
自分がアクセルを踏んで仕事にまい進していきたい時ほど、「いろいろ大変でしょ、無理しないで」とジョブサイズの小さい仕事しか任せてもらえないことがあったり、逆に子どもの月齢によって育児が大変な時に手に負えない仕事が大量にきてしまったり。結局は、チームの中でしっかりコミュニケーションをとって、ある程度状況を理解してもらいながら、仕事量をコントロールしていくしかないのですが、その分誰かにしわ寄せが行ってしまってチーム関係がギスギスしてしまったりと、口で言うほど簡単に解決できることではありません。
3、「期待」のズレ
→『仕事と家庭は両立すべき』という風潮はママになったばかりの社員にとっては重いプレッシャーとなって肩にのしかかります。「結婚しないんですか?子供産まないんですか?」のような質問と同じように、「仕事と家庭の両立はどうやっていけばいいんですか?」という質問の裏側の意図としては「今の時代、女性は仕事も家庭も両立すべき」という“べき論”が背景にあるのではないかと思うのです。
ママ社員としては「両立」という完璧さを求められてしまうと、それに息苦しさを感じて逃げ出したくなってしまいますが、周囲からの期待を前向きに捉え、もっと気楽にマイペースに一つ一つ向き合っていくしかありません。
周囲が間違った方向に期待をかけすぎて、知らないうちに追い込んでしまう、という状況は避けなければいけないと思います。
少し話題が逸れてしまったので、話を戻します。
女性リーダー輩出の壁③:女性抜擢の数合わせ感。
女性リーダーは待っていても勝手には増えていきません。増やす仕組みが必要です。
ただ、「数合わせ感」は誰もが違和感を覚えますし、抜擢された女性自身が実は誰よりも感じていることもあります。ダイバーシティは大事ですが、誘導しすぎたり、恣意的な数合わせ対策はしない方が良いと思います。
ちょうど女性活躍推進の流れがあって、その後働き方改革の流れが出てきましたが、時間の制約の中で働いてきた女性リーダーにとっては、「生産性高く働く」という点においてプロフェッショナルな人が多いです。数の目標を置いて無理矢理帳尻を合わせにいくよりも、女性社員の得意な領域、女性社員にしかない視点やアイディアなどに着眼し、本質的な女性リーダーを生み出す環境を整えていくことの方が大事ではないかと思います。
最後に、女性リーダーを輩出していくためには、女性だけがもっと頑張れば良いわけでもなく、無理矢理管理職比率を増やすために役職を用意すればいいわけでもなく、女性支援などの制度や福利厚生を充実させればいいわけでもありません。
最終的には、社員が働く上で障害になっていることを取り除き、男女問わず誰もが能力を発揮しながら働きやすい環境を整えていくことこそが、女性リーダー輩出の大きな壁を取っ払う一つの有効な手段ではないでしょうか。