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CSの誤解を解き明かす:あらゆる事業進化に不可欠な価値の話

2021年12月にRightTouchを設立してから約2年が経過しようとしています。

主力のWebサポートを推進するプラットフォームであるRightSupportはローンチから9ヶ月でARRは1億円を突破し、さらなる勢いで事業も成長中。

会社のミッションも刷新を行い、先月にはRightSupport by KARTEの正式版やRightConnect by KARTEのβ版リリース、弊社ユーザーの企業事例発表など、組織としても勢いが出てきました。

ただ、知人やビジネスパートナーの皆さんにRightTouch事業の話をすると「カスタマーサポート(以下CS)って地味だし、事業として面白くなさそうですよね」といったネガティブな側面への意見をよくいただきます。

そのたびに、私は「CSほどポジティブで面白い領域はないのに」と、世の中の認識とのギャップに違和感を覚えていました。

そこでこのnoteでは、CSに魅了された私が考える「CSの価値や可能性」についてお話をします。

CSは企業と顧客をつなぐ、「情報の宝庫」です。この記事で、CSの面白さを少しでも知ってもらえたら嬉しく思います。

営業戦略や事業改善の参考にもなると思いますので、経営や営業の方にもご覧いただければ幸いです。


1. 過小評価されやすい「CS」の仕事

「カスタマーサポート(CS)」という言葉を聞いた時、皆さんはどのような仕事を思い浮かべますか?

コールセンターでの問い合わせ、ひっきりなしのクレーム対応、電話やメールで無機質に繰り返される単純業務…。

また、問い合わせを行うユーザーとして、長時間オペレーターに繋がらなくてイライラしたり、求めていた回答に出会えなくて問い合わせを諦めたりという経験もあるのではないでしょうか。

CS領域に対しては、上述したようなネガティブなイメージを持つ方がほとんどだと思います。

このようなネガティブなイメージは、企業内でも持たれており、CSが「コストセンター(=利益を生まない部門)」と認識され社内で劣位な立場にあったり、企業によっては唯一の顧客接点であるCSを外部ベンダーにアウトソースしたまま、顧客の声を放置したりするケースも散見されます。

たしかにCS業界を深く知らないまま傍目から見ていると、下記のとおり過小評価されやすい傾向にあります。

・長時間の電話や大量のメール、チャット対応が求められ、大きくリソースを取られる仕事
・かけた時間に対して得るものが少ない「非生産的なやりとり」が多い仕事
・利益や価値の創出ではなく、工数の削減に意識が集中する仕事

過小評価されやすいCS部門を取り巻く構造については、共同代表・長崎のnoteに「3つの壁」としてより細かく説明しているので、ぜひあわせてご覧ください。

しかし、私は、CSを過小評価するのはビジネスにとって「大きな機会損失」だと感じています。

どういうことか、詳しくお話していきます。

2. CSは企業と顧客をつなぐ、「情報の宝庫」

先に結論をお伝えしましょう。

CSは単なる「問い合わせの窓口」ではありません。あらゆる事業進化に必要不可欠となる重要な顧客接点です。

以下、3つの観点でそれぞれ説明します。

・事業成長のヒントが眠っている(事業者視点)
・サービスやプロダクト本来の価値を最大限享受できる鍵になる(顧客視点)
・インパクトが大きく、市場で変革の必要性が高まっている(両視点共通)

※なお、私がこう考えるに至った背景は、EVANGEのインタビューで詳しく話しているので、ぜひあわせてご覧ください。

3. CSには事業成長のヒントが眠っている

まず、CSが企業と顧客をつなぐ情報の宝庫である理由の1つ目は、「CSには事業を成長させるヒントがたくさん眠っているから」です。

先ほど書いたように、CSは「顧客の問い合わせ窓口」と思われがちです。しかし、裏を返すと「顧客との接点を深められる機会」だと捉え直すこともできます。

前提として、顧客から得られる問い合わせやフィードバックは、事業の改善点を検討する上で価値が高い情報です。

なかでも「プロダクトを実際に利用したユーザー」から得られる情報は非常に有益で、プロダクト開発やマーケティングを改善するヒントとして貴重な財産です。

実際、プロダクトを新たに開発・企画する段階では、「モニタリング」や「サンプリング」などを通じて、ユーザーの声や実態を手間とコストをかけてでも拾いにいくことが多いと思います。

しかし、ひとたびサービスが軌道に乗ってくると、なぜかそれまではコストをかけてでも手に入れたかった「プロダクトを実際に利用したユーザー」の情報が軽視されるようになります。

モニタリングの手間をかける必要もなく、多くの情報が「顧客側から勝手に入ってくる」にもかかわらず、です。

これは企業にとって、事業成長のヒントを逃す、非常に大きな機会損失と言えるのではないでしょうか。

実際にCSへ問い合わせがあった顧客からの声をもとに、営業内容を見直し、成果を大きく伸ばした企業のエピソードを紹介します。

オンラインとあわせてFAXでの注文を受けている老舗BtoBメーカーの話です。

あるとき、複数の顧客から「FAXでの注文方法」について問い合わせが入りました。そのやりとりの中でわかったのが「省庁からペーパーレス化のためにFAXをやめるよう通達があった」ということ。

そこで「ほかの企業にも省庁から同様の案内があるのでは」と考え、ほかのFAX利用企業に「省庁のペーパーレス化の対応もこれでクリアできますよ」と一言そえてオンライン注文(EC)の案内をするようにオペレーターのトークスクリプトを変更しました。

結果、ECの売上率が大きく高まったことで効率的な運営ができ、かつECで顧客が買いやすくなったためECの売上自体も上昇しました。

このように、CSを単なる「顧客の問い合わせ窓口」ではなく、「顧客との接点を深める機会」として捉え直すと、上記の例のような改善につながります。

CSから得られる情報はビジネスを成長させるヒントになるのです。

4. 顧客にサービスやプロダクト本来の価値を伝える鍵になる

2つ目は「顧客にサービスやプロダクト本来の価値を最大限伝える鍵になる」という点です。

CSは「質問に答えて“顧客の問題”を解決する仕事」という印象があるかもしれません。しかし、これは同時に「プロダクト本来の価値が顧客に伝わっていないという“自社の問題”を解決する仕事」とも言えます。

※「96%のサイレントカスタマー」参照元: グッドマンの第一法則

たとえば、ある豊富な機能を持ったマーケティングツールで考えてみます。

備わっている機能を使いこなせば十分に元は取れるのに、全ての機能の価値がサポートなしで伝わっているわけではない。

結果、顧客は豊富な機能の一部しか使わないまま、割高感を感じて解約してしまう。よくあるパターンだと思います。

こうした「事業者と顧客が感じている価値のギャップ」に対して、CSは以下のような形で貢献ができます。

・顧客の問い合わせに的確に回答し、プロダクト本来の価値を最大限実感できる状態に導くことで解約を防ぐ
・顧客の問い合わせ内容をもとに、開発・営業サイドに「プロダクトの改善点」や「顧客に伝わっていないこと」をフィードバックし、売上アップなどの事業成果につなげる

つまり、CSはプロダクトやサービスの「本来価値」と、顧客に理解してもらえた「伝達価値」との差を埋め、顧客と中長期的な関係を築く橋渡し役にもなれるのです。

ただ、CSは基本的に顧客からの問い合わせを起点に始まる受動型の仕事です。顧客の96%は、不満や意見があっても問い合わせをしてこない「サイレントカスタマー」と言われ、「CSが能動的にできることはほとんどない」というのが従来の見解でした。

しかし、当社はRightSupport by KARTE(詳しくは後述します)を通じて、問い合わせ前から顧客の課題解決を支援する能動的なCSを実現しました。

具体的には、顧客の行動をもとに「こんなことで困っていませんか?それでしたらこちらのヘルプをご覧ください」といったプロアクティブな提案ができるようになっています。

この結果として、現在のCSは受動に徹することなく、サイレントカスタマーに対しても能動的に問い合わせを受けたのと同じような価値を提供できるようになりました。

CSが率先して顧客にサービスやプロダクト本来の価値を伝えることで「本来価値」と「伝達価値」のギャップを埋められるようになるはずです。

これらによって、顧客の満足度が高まり、LTVの向上や解約の減少を通じて、更なる事業成長につながると考えています。

5. インパクトが大きく、この先も必要性が高まっていく

3つ目が「ビジネス的なインパクトの大きさ」です。

CSは地味な領域と思われがちですが、実は市場規模も1.5兆円と大きく、かつ共同代表・長崎のnoteにもある通り、CS業界全体のデジタルシフトも後押しとなって、この先もさらに成長していくと見込まれています。

CSが提供する「問合せ・お客様サポート」は流通小売・金融・インフラ・ITなど業種を問わず必ず発生する、誰もが経験したことがある日常的なサービスで、接触頻度が高く社会生活と密接に結びつくもの、つまり世の中や生活者に対して大きなインパクトを持つ領域です。

また、すでに市場が大きいことに加え、インパクトが大きく、変革の必要性が急速に高まっている市場でもあるのも特筆すべきことです。

近年、サブスクに代表される中長期的な利用を前提としたサービスが日常生活・仕事それぞれで増えているほか、いわゆる買い切りのサービスや小売においても「リピート性」が重視されるようになってきました。

「雑な売り切り」では生き残れない時代において、顧客にサービスやプロダクトをリピートしてもらうためには、商品やブランドに対する持続的な「信頼」や「満足感」の醸成が不可欠です。

CSは顧客の疑問に答えることや、サービスやプロダクト本来の価値を伝えることを通じて、リピート率の向上に大きく貢献することができます。

競争激化や人口減少の背景から新規顧客の獲得が難しくなる中、ビジネスも売り手と買い手とが中長期的にフェアで良好な関係を築くのが重要になっています。

こうした局面においては、今後ますますCSの与える価値やその役割のインパクトは高まっていくと私は予想しています。

6. CS本来の価値を、テクノロジーで支えたい

ここまで「CSには事業成長を牽引する素晴らしい価値がある」という話をしてきました。

その一方で、CSには過小評価されるだけの理由があるのもまた事実です。たとえば、上述したような「リソースが取られる」「非生産的なやりとりがある」といった問題のほかに、以下のような懸念もあります。

・膨大な応対ログの山から、価値のある重要な意見を抽出するのが難しい
・重要な意見を見つけても、具体的にどう活用すればいいかがわからない
・これらを代行してくれる外部ベンダーに頼む予算の捻出は難しい

つまり、事業成長に役立つとわかったところで、それを実行に移す人的なリソースや技術が不足しているという問題があるのです。

こうした状況を脱し、CSという顧客接点・得られる顧客情報を活用して、エンドユーザーにプロダクトやサービス本来の価値を届けたい。プロダクト開発やマーケティングの構造を根底から変えたい。

そして、CSをコストセンターではなく、売上・利益を生み出すプロフィットセンターの位置付けに引き上げたい

そんなCSの秘めたる可能性の実現を、テクノロジーで支援するべく立ち上がったのが、私たちRightTouchであり、その一歩目が「RightSupport by KARTE」です。

RightSupportは、問い合わせをする前の顧客をオンライン上で解決に導く、Webサポートプラットフォームです。

顧客が「問い合わせする前の行動」を収集し、顧客のつまずく箇所を把握することで、リアルタイムに適切な情報とのマッチングを作り、導線改善を行います。これにより顧客のつまずきを早期に解決し、顧客満足度を高めることを可能にしています。

顧客の問題解決を手引きして満足度を高めるだけでなく、先述したように、CS担当者が事業成長のヒントを探ったり、顧客にプロダクト本来の価値を伝える仕事に専念したりする環境も実現しています。

LLMを用いた課題予測による回答最適化機能「ライブアシスト」やWebサポート施策の自動生成機能などのアップデートも進んでいます。

また、RightSupportという単一プロダクトを展開するだけでなく、Webサイトとコールセンターをシームレスに接続し問い合わせ体験をアップデートする新プロダクト「RightConnect by KARTE」 の提供を開始し、その他にも複数のプロダクト立ち上げを進めています。

私たちの戦略や取り組みについては、共同代表・長崎のnoteやRightTouchのnoteで、今後発信を重ねていこうと考えているので、興味がある方はぜひnoteもフォローいただければ嬉しいです。

一緒に働く仲間を募集します

今回は、CSは「電話や問い合わせの窓口」ではなく「事業成長のヒントを得られ、しかも顧客に本来価値を伝えられる本質的な仕事である」ということをご説明してきました。

CSがいかに魅力的な仕事か。そしてそれに向けてRightTouchがどんな取り組みをしているのか。少しでも感じてもらえたなら嬉しく思います。

私たちは現在、事業のさらなる拡大を見据えて新たなメンバーを募集しています。

私たちのミッションや価値観に共感し、ともに働くことでCSの可能性を広げ、そして伝えていきたいと思う方は、まずは一度お話を聞かせてくれませんか?

あなたと一緒に、CSの真価を世の中に伝えていけることを楽しみにしています。

以下のリンク先より詳細をご確認ください。


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野村修平
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